愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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覚悟

選択肢

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「……っ……あ」

何か答えなくてはと、ロメリアは思った。

本音を言えば、愛おしさで可笑しくなりそうだった。すぐにでも「私も会いたかった」と答えたい。

だが自分の望みとは裏腹に、顎はガクガクと震えて、言葉を発しようにも喉の奥が詰まっているようで、深く深呼吸しても、どうにもならなかった。

「……っ」

ロメリアはぐっと唇を噛みしめる。

このまま、彼に何も言えないで終わるのは嫌だった。

だがもし、ここで自分の本音を言ったとして……その後はどうなる?

この世界は果たして、自分とガブリエルに幸せな結末を与えてくれるのだろうか。

それが、分からない。

己の不幸な運命に……ガブリエルを巻き込んでしまうかもしれない。それがなにより恐ろしい。

彼は何も知らないのだ。
マリエンヌと結ばれる運命があることも。様々な試練があるけれども、それを乗り越えることが出来れば至上の幸福が手に入ることも。何も知らない。

何も知らない彼に……これから起こりえることを言わないで、本心だけを告げて良い訳がない。

(……言わないと、いけない)

例え、変な妄想癖を持っていると思われようとも。
それで、ガブリエルの心が離れても。

言わなければならない。

ここで、ガブリエルが本来選ぶべき道を教えなかったら……きっと後悔する。

「……1つ、話をさせて頂戴」
「分かった……少し、待ってくれ」

ガブリエルはそう言って、芝生の上に座り込んだ。
そして安定した膝の上にロメリアを乗せて、落ちかけている毛布をかける。

「……話して欲しい」

穏やかな声で即されて、ロメリアは固唾をのみ込んでから、口を開いた。

「……今から話すことは……あなたにとっては意味が分からないことかもしれない。だけど、本当のことだと思って頂戴。少なくとも私自身はそれが真実だと思って話すわ」
「……君の望むままにしよう」

ロメリアはガブリエルの瞳を覗き込む。そこには一切の動揺も、疑念も浮かんでいない。

「あなたとマリエンヌ様は、幼い頃に出会ったことがあるわね。王宮の庭園で」

その一言に、ガブリエルの凪ぐばかりだった湖面の瞳が揺らいだ。
動揺している。
だが、彼は「なぜ」とは聞いてこなかった。マリエンヌが話したと思っているのかもしれない。その認識だけは訂正して置かなければならなかった。

「……言っておくけれど、マリエンヌ様から聞いたのは幼い頃に王宮の庭園で、素敵な男の子と出会ったということだけよ。その相手があなただとは聞いていない。だけど私は、マリエンヌ様と出会った男の子があなただと知っている」

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