愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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覚悟

失われた言葉

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はっきりと言い切ったロメリアは、ガブリエルの未だ動揺に揺れる瞳をしっかりと見据える。

「あなたとマリエンヌ様は、幼い頃に王宮庭園で出会った。マリエンヌ様が立ち上がろうとした時、髪に薔薇の蔓が絡んで、あなたがそれを解いて差し上げた……そうでしょう?」

ガブリエルは、信じがたいことを聞いたと言わんばかりに目を見開く。そんな細かいことまでどうして知っているのかと、如実に問いかけてくる瞳に対して、ロメリアは深く息を吸って、極めて真面目に答えた。

「私は、あなたとマリエンヌ様の周辺で起こることを知っている。これから起こることも……全部とまではいかないまでも、断片的になら分かるわ」
「それは……なぜ」

投げかけられて然るべき問いかけに、ロメリアは俯いて、唸る。

「私は前世で、この世界で繰り広げられる物語を読んだことがあるから」などと説明したとして、それは意味があることだろうか。

今、大切なのは……ガブリエルにはマリエンヌと幸せになれる未来がある、と教えることだ。

そして自分は多少なりともこの世界で起こることを把握しているから、彼らが幸せになれる最短の道を指し示す事だって出来る。

そのことをまずは、信じてもらえるように伝えなければいけない。

ただでさえ自分は可笑しなことを言っているというのに、これ以上可笑しなことを言えば、信じてもらえることも信じてもらえなくなる。

(仕方ない……)

ひとまず、前世云々は置いておいて、ロメリアは真剣にガブリエルと向き合い、思うままのことを告げる。

「例え……私が、未来を知る理由を言ったとしても……あなたは信じられないと思う。あなただけじゃない。きっとお父様もお母様も信じてはくれない」
「……」
「断定するような言い方をして、あなたはさぞ不快な思いをしていることだろうけど……私が未来を知っているのは、それほどまでに突拍子もない理由なのだと、理解して頂戴」

ガブリエルの表情からはすでに動揺の色は消えていた。だが、その心中にはまだ疑念が残っていることだろう。

「それをね、まずは信じてくれないと。……これ以上、あなたと交わす言葉を私は見つけられないわ」

その言葉を聞いて、ガブリエルの表情に感情めいたものが浮かんだ。

それは悲しみか、それとも驚愕か、あるいは困惑か、焦燥か。

よく分からなかったが、どんな感情を抱いているにしても、まずは一番大切なことを聞いてもらわなければ……感情の乱れは収まらないだろう。

「……あなたが昔『君より可愛い子を知っている』と言ったことがあったわね。それはマリエンヌ様でしょう?」

ロメリアの問いかけに、ガブリエルはそっと睫毛を伏せた。

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