小悪魔令息は、色気だだ漏れ将軍閣下と仲良くなりたい。

古堂すいう

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番外編①

シモンの回想……海辺に佇む花

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出会った当初のエリスは、まだ素直な子供だった。会うと、近しい大人に対する憧れを隠そうとする様子もなく、彼は無邪気に駆け寄ってきたものだった。

「シモン!」
「おお、エリス。また背が伸びたな……元気そうでなによりなにより」
「よく分かったね。ほんの少ししか伸びてないのに」
「見下ろした時の視線の高さが違うんだ」
「へえ……この調子で伸びていったら、いつかお前の背を追い越す日が来るかもしれないね」

茶目っ気たっぷりに笑うエリスは、まだまだ子供のように見えた。

そう子供だった。子供だったはずだ。

だが、その子供の成長は早い。そんな言葉を痛感する日が来ようとは夢にも思わなかった。

それは避暑地でのこと。よく覚えている。エリスが15歳の時だった。

避暑地の警邏と、軍の拠点の視察も兼ねてきていた俺は偶然、砂浜を物思いに耽った様子で歩くエリスを見かけた。避暑地特有の官能的な花と海の潮の香りに包まれて、茜色の光の中佇むエリスを見た時「ああ、本当に綺麗になったものだ」と感慨に耽った。内面的な美しさが出るのはもう少し先のはずだが、彼の美しさは出会った時からずっと外面的なものだけではないような気がした。

彼はここのところ「長めの反抗期」に入ったが、話しかけるとちゃんと答えてくれるので、今回も軽い調子で話しかけようかと思ったが、エリスの憂い帯びた危うげな様子に足が止まり、開きかけた口も自然と閉じた。

暮れの空と黄金の海を背に佇むエリスからは、幼さの欠片が微塵も見えない。むしろ儚げな印象が際立って、浮世離れした容姿が霞むような危うさを醸し出す。

声を掛けるためにあげた手は虚しく降ろされた。

しばらく目を離せないでいると、エリスが何かに手を伸ばした。その指先。光るそれは、玻璃の破片のようだった。海の彼方から流れてきたのか。

「やめなさい、エリス。怪我をするぞ」
「……っ」

エリスが振り返る。青い瞳が夕暮れに眩しく輝いた。エリスが手を伸ばした光るそれは、逃げるように波に攫われて海の中へ消えてゆく。

「久しぶりだなあ。ここへは海を見に?」
「違う」

端的な答え。思わず苦笑する。

「じゃあ、どうしたんだ。迷ったのなら案内しようか?俺はここに詳しいよ」

普段は緑に囲まれ、静かなこの土地も、避暑の季節になれば人が集まる。人が集まると問題は当然起きる。盗み、貴族子女の誘拐、と挙げたらきりがない。毎年のように避暑の季節にはここで警邏の仕事をしているからこそ、この土地には詳しい。

なにより心配だった。

華開いたばかりのみずみずしい美しさを称えたこの子が、1人こんなところで佇んでいることが。
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