黄昏のザンカフェル

新川 さとし

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第3章 タカアマノハラ学院

その11 セリカ・ガーネット

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 入学式を終える前に、王都は騒然となっていた。それは当たり前である。

 現代日本で言えば「東海地震予知情報」が出されたようなものである。もうすぐ、破滅的な事態が起きると「予測」されて、誰が落ち着いていられようか。パニックにならなかったのは、大変なことが起きるとは言われても、それが天変地異なのか、戦争なのか、それとも他の何かなのか、何もわからなくて、人びとも動きようがなかっただけなのだ。

 こういう時、人びとはとにかく手に入れようとするのは食料で、資産のある者は「金」を蓄えようとする。

 王都での買い占め騒動が起きた。目端の利く商人は、早くも全土に使いを出しているはずだ。

 だが、学園内は、かなり事情が違う。大部分の生徒は貴族の子弟だけに、そんな市井のことに関心が向かなかった。けれども、ノーブレス・オブリージュ貴族の義務は、どれほど下位の貴族といえども教育されてきただけに、王国の危機ということに対して無関心であるはずがないのだ。

 いやむしろ、純粋な正義感と明日への熱意は「自分たちがなんとかしたい」という動きへと繋がっていったわけだ。

 なにしろ「今年、学園にいる者達から、希望が生まれる」と明言されている。自分たちこそが、王国を危機から救えるのだという「予定された未来」は、若者達のプライドを心地よく満たしてくれたのだ。

 そして、学園長の予言は「二つの星を中心にして」と明言されてもいた。

 結果的に、入学式の翌日には「伝説の学園長の予言」によって示された二つ星君達を中心に、早くも派閥ができていたのだ。

「サトシ様、よろしいのですか?」
 
 ティアラが、おどおどと聞いてくる。その視線が、ガイウスでも、マリウスでもなく、二人を侍らすように立つ少女に向けられていることに気付いていた。

『あれがセリカか』

 青みを帯びたストレートヘアが、肩に掛かるまでに伸びている。光沢の美しさは、ここから見ても見事だ。おまけに、化粧をしているにしてもパッチリした目の中にある瞳は、神と同系統の深いブルー。
 
 全体的に、設定をカチッと当てはめたような美形キャラになっている。

 しかし、オレが驚いているのはスキル《情報》が、答えてくれないことだ。いや、正確に言えばこんな形しか返してこないことなのだ。


………………………………


  レベル  5
【名前】 :セリカ・ガーネット(アマノ)
【魔力】 :※※/※※
【体力】 :※※/※※
【筋力】 :58
【耐久】 :90
【敏捷】 :50
【知力】 :45
【器用】 :78
【称号】 :伯爵家養女 ※※※※ ※※※※※※  
【スキル】 :※※※※※※※※※※

 ♪参考♪
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………………………………

 やっぱりポンコツ女神は使えない、というべきなのか「文字化け」現象が起きている。

『これは、何者かが、オレに、この情報を与えたくないってコトだよな?』

 頭の中でポンコツ女神に呼びかけてみるが、何も返ってこない。やっぱり使えん。

「あの?」

「あ、ごめんなさい。ちょっと、考え事をしていました」
「やはり、サトシ様もご心配なさっていらっしゃるのですよね」
「いいえ。あの二人に関しては、心配していません。それと、ティアラがご覧になっていたのは、あの二人ではなくて、あの二人の間にいる方でしょう?」
「はい…… あの方が、多分、セリカ様かと」
「綺麗な方ですね」
「サトシ様!」
「大丈夫ですよ。どうやら彼女には魅了スキルがあるのでしょうけど、私は、そういうモノへの抵抗力がありますので」

 まさか「魅了」に抵抗するのが初仕事になるとは想ってなかったが「状態異常無効」のスキルを付けておいて良かったわけだ。

「え? それなら、サトシ様は」
「ハハハ。大丈夫。それに、ガイウスのも、一度解いたんですけどね。どうやら、ムダだったようだ」
 
 一瞬嬉しそうだったティアラの顔は、またしても暗くなる。

「安心して下さい。私は、ティアラだけですから」
「そ、それは、あの、その」

 この程度で真っ赤になってくれるのだから、ティアラの中の人、というのは、かなり純粋な人だったのだろう。

「さて、ティアラ、私たちは、行くとしましょうか」
「どちらへ?」
「どうやら、私たちを待って下さっているようですよ」
「え? あの、どなたが?」

 セリカを中心にした輪は、中庭にさらに広がっている。それを横目に、オレは校舎へと向かったのだ。ティアラは、頭上にクエッションマークをいくつも浮かべながら、慌てて付いてきたのだ。


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