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第2章 三人の婚約者
その31 言いがかりって言うか、オレが何をした?
しおりを挟むまあ、貴族にとっては、奴隷堕ちした元女勇者を手に入れる、というのは、あまり品の良いことではないので、イヤミの一つくらいなら仕方がない。
冠とは、オレの婚約者ティアラのことだろう。
つまり、婚約者がいるのに、奴隷堕ちした女に手を出すつもりかということだ。まあ、ここはあれこれ言い訳をしても仕方ないと腹を決める。それにしても、オレをすっかり「家臣」扱いしてみせることと言い、このセリフと言い、何かサトシに対して思うところがあるのだろうか?
オレはこっそりとスキル《情報》を使う。
………………………………
レベル 12
【名前】 :ミレーヌ・アマーリア・クリスティーナ・フォン・エスターライヒ
【魔力】 :60/60
【体力】 :72/72
【筋力】 :52
【耐久】 :60
【敏捷】 :50
【知力】 :90
【器用】 :75
【称号】 :ウイリアムズ三世(太平王)の妃
【スキル】 :火魔法(中級者)
♪参考♪
双子の息子ちゃんラブの母親です。少女の頃から頭脳明晰で、本人が名乗る「慈愛の母」というよりも計略大好きな参謀タイプです。竹を割ったような性格の長男が王を継いで、陰謀・策謀大好きな弟が宰相になることを望んでいます。息子達が思うように助け合ってくれないせいか、こじらせにこじらせて、ウップンをサトシさんに向けてしまい、なぜか「息子から幸せを奪う者」として警戒しているっていうか、ぶっちゃけ憎んでます。
目下のお気に入りは、プレゼントされた真珠のネックレスですが、サトシさんが望んだ見返りが小さすぎるために、後で陥れられるかもしれないと警戒しています。息子のこともあって、あのネックレスを受け取ることもためらいましたが、王国一の真珠を自分以外の誰かが身に着けているところを見たくないと思って、受け取りました。今は、あのネックレスをいつ、どこでお披露目するかが、一番の関心事です。
………………………………
なんだ、それ? 憎んでる?
ソ・ン・ナ・バ・カ・ナ……
オレは、王位など欲しくもないし、もちろん、王子達がこっちに手を出してこない限り、できる限り関わりたくもない。
なんとも釈然としない。
身に覚えのないことで「憎んでる」と言われているのだから。しかし、オレのコトを憎んでいるのだとしたら、この扱いもなんとなく、わかるというもの。
『ともかく、ここでヘソを曲げられても、面倒が増えるだけだ。今は無難にやり過ごすことを第一としよう』
うん。大人はね、下げたくない頭だって、簡単に下げられるんだよ?
そして、何食わぬ顔で深々と頭を下げてみせるわけだ。
「恐れ入りましてございます」
「ふむ」
その時、王妃様の後ろ側から、聞こえよがしな声が「太后殿下、お時間でございます」と聞こえてきた。
「それにしても見事であったのぉ。長く、あのようなものは見たことがない。そうであろ?」
その声は、オレに向けたものではない。侍女に向けた独り言だ。
「太后様のおっしゃる通りにございます」
侍女と王妃のやりとりは、真珠のネックレスのこと。けれども、あくまでも、オレに話しかけてないということが、重要なのだ。「礼は言ってないが受け取った。喜んでいるぞ」という意思表明。
ここには返事をしてはいけないのがマナーというもの。ただ、頭をさらに深く下げるだけだ。
ここで、執事が声高に宣言する。
「サトシ・ファーニチャー卿。バラ、拝見の儀、大儀至極であった」
あくまでも、バラを「拝見させていただいた」という形が「これにて終了!」と宣言されたわけだ。
「ははっ」
と頭を下げたときには、もう王妃様は歩き出していた。
ここで頭を上げてはいけないのだ。今度はオレが独り言を言う番である。
「麗しき王国と偉大なる大王様、慈愛深き太后様に、神々の御加護が続きますように」
そこに、言葉を返してくるのは執事の声だ。
「ご忠勤に励まれますよう」
「お言葉に感謝いたします」
一分にも満たない会見。
考えようによってはケンカを売る儀式そのものであるが、それぞれの目的を持った会談は無事終了したということ。
帰りの馬車に「手土産」が置かれることを、オレは信じて疑わなかった。
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