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第2章 三人の婚約者
その27 魔物退治はトラちゃんから
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元世界のトラと違って、別に黄色くはない。けれども猫かを思わせるしなやかな動きと、猛獣だけが持つ太い四肢と牙、そして獰猛な光を宿した瞳を持っていた。
まあ、要するに、体長が三メートルほどもある豹をイメージすれば良いだろうか。巨体を見事に木の葉の向こうに隠して、こちらを伺っている。
夜行性だけに、闇夜でも見通す目も、嗅覚も優れている。犬と同等か、それ以上。脚力も、静止状態から10メートルほどは、簡単らしい。
『ここまで、ひとっ飛びして、捕らえるつもりか。ふふふ。さすがネコちゃん。お陰で楽ができそうだな』
《情報》スキルに浮かぶ、闇の中の相手は、まさに、獲物を狙う豹。
『キミ、毛皮のコートには向かないんだって?』
しなやかな外見からすると、想像できないほど体毛が硬いため、普通の人間が剣で切りつけても、刃が滑ってダメージをほとんど与えられない。人力で狙うなら、かろうじて喉元だろうと言われているらしい。
通常、トラ狩りには、十数名で、昼間のウチに追い立てて、ワナに追い込むか、固定式の弩と呼ばれる強力な矢を大量に打ち込んで足止めするしかないのだが、ものはやりようである。
強力な魔法を使えば、話は簡単だが、やむなく空中散歩なんて派手なことをしているため、今現在も、魔王に見られてない、と言う保証は無いのだ。
『ま、ネコちゃん相手だったら、この程度で良いよね』
手元に取り出したのは、レーザーポインター。レーザー光を使って、黒板なんかを刺すやつね。ま、半ば商売道具でさ。
スイッチオン。
超指向性の光が足下に小さく赤い○を作り出し、乱反射した光はホンワリと週を明るくさせる。
「ウインド」
同時に小さな風で、ふわりと手元の赤い粉を、お届け。
その小さな動きは、トラちゃんに、飛びかかる決意を呼び起こしたらしい。全身の筋肉がたわむ。
そこを狙った。
一息に吸った鼻へと、オレのウインドが届いたのだ。跳躍の呼吸だ。思いっきり吸い込んだ空気の中には、一味唐辛子の粉末。
「ぎゃぅうううう」
猛獣の悲鳴とはこういうものなのかと、感心している場合ではない。彼我の距離十メートルを、一気に詰める。その気配にこちらを向いた瞬間、レーザーポインターで直撃。指し示す角度は《情報》にお任せで、楽チン。
闇夜の画像を掴むため、開ききった瞳孔を、レーザーポインターの赤い光が貫いたのだ。
「ぷぎゅうううう」
「何だ、そんな風にも鳴けるのかよ」
本能で逃げようと身をひねる角度は計算済みだ。下からすくうようにして、公爵家の宝剣を突き出すべし!
「ぐひゅうううううう」
悲鳴を上げようとしたのだろう。空気が大量に喉から漏れ出して、声になってない。だが、そこで手を休めることなく、角度を変える。
『体毛は硬くても、食道は、守られてないよな?』
喉の奥をかき回すようにして、一気に、心の臓へ、剣を押し込む!
ぐぅうううう、くそっ、重いじゃん。
トラちゃんの全体重を剣で支えるようにしたときには、すでに、勝負は付いていた。すかさず、剣を引いて、バックステップ。
怒り狂った魔獣の最後の一撃。前足が、オレのいた場所を通過する。
しかし、心臓までもが切り裂かれてしまえば、もはやこれまで。いや、断末魔の道連れにオレを巻き込もうとしたのかも知れない。
しかし、目をやられ、鼻をやられてしまえば、もはやオレの場所を特定することも不可能だ。
形容しがたい咆哮を上げながら、一瞬遅れて、ドサッと崩れる巨体だった。
ふぅ~
ピコン! レベルが2に上がりました。
ピコン! レベルが3に上がりました。
ピコン! レベルが……
何度も何度も鳴り響くレベルアップの音声を耳にしながら、早くも、血の臭いを嗅ぎつけた魔物達を、三匹、意識していた。
まあ、要するに、体長が三メートルほどもある豹をイメージすれば良いだろうか。巨体を見事に木の葉の向こうに隠して、こちらを伺っている。
夜行性だけに、闇夜でも見通す目も、嗅覚も優れている。犬と同等か、それ以上。脚力も、静止状態から10メートルほどは、簡単らしい。
『ここまで、ひとっ飛びして、捕らえるつもりか。ふふふ。さすがネコちゃん。お陰で楽ができそうだな』
《情報》スキルに浮かぶ、闇の中の相手は、まさに、獲物を狙う豹。
『キミ、毛皮のコートには向かないんだって?』
しなやかな外見からすると、想像できないほど体毛が硬いため、普通の人間が剣で切りつけても、刃が滑ってダメージをほとんど与えられない。人力で狙うなら、かろうじて喉元だろうと言われているらしい。
通常、トラ狩りには、十数名で、昼間のウチに追い立てて、ワナに追い込むか、固定式の弩と呼ばれる強力な矢を大量に打ち込んで足止めするしかないのだが、ものはやりようである。
強力な魔法を使えば、話は簡単だが、やむなく空中散歩なんて派手なことをしているため、今現在も、魔王に見られてない、と言う保証は無いのだ。
『ま、ネコちゃん相手だったら、この程度で良いよね』
手元に取り出したのは、レーザーポインター。レーザー光を使って、黒板なんかを刺すやつね。ま、半ば商売道具でさ。
スイッチオン。
超指向性の光が足下に小さく赤い○を作り出し、乱反射した光はホンワリと週を明るくさせる。
「ウインド」
同時に小さな風で、ふわりと手元の赤い粉を、お届け。
その小さな動きは、トラちゃんに、飛びかかる決意を呼び起こしたらしい。全身の筋肉がたわむ。
そこを狙った。
一息に吸った鼻へと、オレのウインドが届いたのだ。跳躍の呼吸だ。思いっきり吸い込んだ空気の中には、一味唐辛子の粉末。
「ぎゃぅうううう」
猛獣の悲鳴とはこういうものなのかと、感心している場合ではない。彼我の距離十メートルを、一気に詰める。その気配にこちらを向いた瞬間、レーザーポインターで直撃。指し示す角度は《情報》にお任せで、楽チン。
闇夜の画像を掴むため、開ききった瞳孔を、レーザーポインターの赤い光が貫いたのだ。
「ぷぎゅうううう」
「何だ、そんな風にも鳴けるのかよ」
本能で逃げようと身をひねる角度は計算済みだ。下からすくうようにして、公爵家の宝剣を突き出すべし!
「ぐひゅうううううう」
悲鳴を上げようとしたのだろう。空気が大量に喉から漏れ出して、声になってない。だが、そこで手を休めることなく、角度を変える。
『体毛は硬くても、食道は、守られてないよな?』
喉の奥をかき回すようにして、一気に、心の臓へ、剣を押し込む!
ぐぅうううう、くそっ、重いじゃん。
トラちゃんの全体重を剣で支えるようにしたときには、すでに、勝負は付いていた。すかさず、剣を引いて、バックステップ。
怒り狂った魔獣の最後の一撃。前足が、オレのいた場所を通過する。
しかし、心臓までもが切り裂かれてしまえば、もはやこれまで。いや、断末魔の道連れにオレを巻き込もうとしたのかも知れない。
しかし、目をやられ、鼻をやられてしまえば、もはやオレの場所を特定することも不可能だ。
形容しがたい咆哮を上げながら、一瞬遅れて、ドサッと崩れる巨体だった。
ふぅ~
ピコン! レベルが2に上がりました。
ピコン! レベルが3に上がりました。
ピコン! レベルが……
何度も何度も鳴り響くレベルアップの音声を耳にしながら、早くも、血の臭いを嗅ぎつけた魔物達を、三匹、意識していた。
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