バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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25 奇怪な儀式①

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「な・・・」

 僕は目を見開いた。

 会った早々、何を言い出すのだ、この男は。

 仮に、この男が僕の本当の父親だとしても、いきなり「裸になれ」とは、どういうことだ?

 正直、僕の気持ちはかなり傾いていた。

 異母兄弟だというヨミの誘いに乗って、この屋敷に移り住むことに。

 バスの中で、あるいはさっきの車の中での彼の痴態を目の当たりにするにつけ、尚更ー。

 何やら、抑えようのない衝動が僕の中心で生まれ、その熾火のような熱がいっこうに鎮まらないのだ。

 が、それも、この蟇蛙みたいな男に出くわすまでのことだった。

 虫唾が走る、とはこのことだろうか。

 ひと目見た時から、僕はヨミから実父と紹介されたこの男、比良坂希京に嫌悪感を抱かざるをえなかった。

 はっきり言って、希京はひどく不潔な外観をしている。

 イボだらけなのは顔だけではなく、身体中そうらしいことが、はだけた和服の胸元から覗く肌で分かる。

 肥満気味の中年女性のようにたるんだ胸は、どれが乳首かわからないほど、茶色いイボで覆われている。

 しかもその藤壺みたいなイボの一つひとつから、二、三本の剛毛が生えているのがなんともいやらしい。

 蟇蛙と豚のキメラのようなこの中年男が、僕の父親?

 そう考えると、背筋を悪寒が走った。

「うは、いきなりそれ言っちゃう?」

 希京の隣でヨミが手を打って喜んだ。

 あろうことか、蟇蛙の肩に、馴れ馴れしく頭を持たせかけている。

 蟇蛙はいつのまにかヨミの太腿にイボだらけの手を置き、つけ根の部分まで往復を繰り返していた。

「確認のためだ」

 怒ったような口調で、男が続けた。

「この少年をここに住まわせるなら、その前に、彼が私の息子だという確証が要る」

「そ、それと、裸になることと、いったい、どういう関係が?」

 ようやくのことで、僕は口を開いた。

 男に対するヨミの態度に、無意識のうちに嫉妬のようなものを覚えたのかもしれない。

 あんな気色の悪い男に、なぜヨミはあそこまでベタベタするのだろう?

 見ているうちに、胸の奥底に、そんな疑問が湧いてきたのである。

 
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