闇の記憶

姫川 林檎

文字の大きさ
32 / 35
記憶喪失の少年

32 

しおりを挟む
「ぅわぁ・・・。」
「おぉ!凄いな。上から見ると又違った迫力があるな。」

「下から見るのと上から見るのでは大分雰囲気が違うでしょ?多くの魚は空から鳥に見付からない様に上からだと水面と同じ様な濃い色をしているのが多いの、それと同じ理由で下からは大型の魚にも見付からない様に水の中から見た空に似た白いのが多いのよ。そうかと思えばド派手な色をした物もいるのよそう言うのは「私は毒が有りますよ」って意味なんだけど、色々な色や形が有って本当に面白いよね。」

「はい。」

魚も昆虫も動物も生き抜く為に姿形を色々ある。人間も国や地域で大分違う、歩んできた歴史も違うから理解し合うのが難しいのは分るが、それでも思いを伝える沢山の言葉があるのだから互いを理解しあえたらどんなに素敵な事だろうか・・・。業の深い俺達人間が解り合えるのは未だ未だ先の事かも知れない。

「眞一さん?」

「ん?あぁ凄い光景だな。」

「はい。楽しいです。」

嬉しそうに微笑む春陽の頭を撫でていると、陽気なお姉さんが話しかけて来た。

「じゃあ!もっと楽しい事しようか♪」

「えっ?」

お姉さんは手に餌の入ったバケツを春陽に押し付けて素敵な笑顔で春陽を見ていた。(笑顔が一寸怖いと感じる何故?)
バケツを抱えてた春陽に説明をしていく。

「あの・・・これは?」

「私が合図をしたらこの柄杓で1杯ここから入れてね♪」

「えっ!?僕が入れるんですか!!」

「そうよ。どぼっと入れないで水撒きみたいに撒いてね♪さぁ!そろそろ時間だから頑張ろう!」

お姉さんは言うだけ言って持ち場に行ってしまって春陽は動揺を隠せないでいる。

「眞一さん・・・。」

春陽が不安そうに俺を見上げている姿が可愛い。
安心させる様にゆっくり頭を撫でながら

「大丈夫だよ。俺が側に居てフォローしるから何の心配はない、春陽は庭の花に水をあげる様に餌を撒けばいいだけだよ。それとも俺がやろうか?」

「・・・やります。眞一さんが側に居てくれるなら大丈夫です。」

可愛い!!
なにそのセリフ!「俺が側に居てくれるなら」って俺をキュン死させる気か!!
ハグしたいけど、今は春陽はバケツを抱えているからおでこにキスだけで我慢だ!後でいっぱいハグしよう!(確定)

「さぁ、始まるよ楽しんで。」

「・・・はい。」

気合の入った返事をしたものの少し手が震えている。
俺は邪魔にならない様に後ろから抱き締める、すると春陽が少し不安そうに振り返る笑顔を返すと安心したのか笑顔を返してくれた。柄杓を握る手に力が入っているがお姉さんの合図に合せて上手く餌を撒けている、回数を重ねると気持ちいに余裕が生まれたのか最後の方は綺麗に撒けていた。

「お疲れ様でした。初めてにしては最後の方は綺麗に撒けていたね♪やってみてどうだった?」

「緊張したけど、楽しかったです。有難う御座いました。」

「楽しんでもらえたなら良かった。では!以上をもちましてバックヤード探検は終了です!時間迄色々見て行ってね。」

「はい。有難う御座いました。」
「有難う御座いました。」

お姉さんに手を振って表に出て次の目的地へ。
色々見ながら進む。春陽がうちに来て約3ヶ月始めは殆んど表情がなかったが最近では色々な顔を見せてくれる、今だって楽しそうに俺に魚の説明をしてくれる。今日来るに当たってしっかり予習していた、元々本を読むのが好きな春陽だが勉強自体がきっと好きなんだろう。出来れば学校に行かせてあげたいけど、年齢が判らないと学年が決まらいつまり行かせる学校が決まらないという事だ。

いや待て、俺の母校なら幼稚園から大学迄一貫校だから学校側に調べてもらうのも一つの手か。春陽の気持ちに余裕が出来たら考えよう。

色々見ながら進むと海出る。

「あっ海。」

「あっちを見てごらん。」

俺が指差した方向では子供から大人まで海に入りイルカと戯れていた。

「あっ!イルカ!眞一さんイルカです!!」

「うん。俺達もイルカと遊ぼうか。」

「えっ!?」

「さぁ!行こう!」

春陽の手を引いてふれあい広場に向かう。
建物の中では浅い水槽にヒトデやカニやエビといった小さな生き物(猫鮫も居た。鮫の中でも大人しいから。サメ肌を触れる)海ではイルカ達が泳いでいた。ここは海と繋がっていて魚は自由に行き来出来る、つまりここのイルカ達は野生のイルカだ。と言ってもこの水族館で生まれた仔も居るし餌を貰えるので居着いた仔もいるから完全な野生とは言えないだろうけど。

つなぎを借りて海に入る。
水の抵抗があるから歩き難く未だ未だ体力の少ない春陽は大変なので沖までお姫様抱っこで運ぶ、思いっ切り抵抗されたが大した事はないのでスルー。

怒っていた春陽もイルカが来ると直ぐに機嫌を直す。
嬉しそうにおっかなびっくりに触っている。

はぁ、
こいつマジ可愛い!!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する

とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。 「隣国以外でお願いします!」 死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。 彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。 いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。 転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。 小説家になろう様にも掲載しております。  ※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。

『悪役令息』セシル・アクロイドは幼馴染と恋がしたい

佐倉海斗
BL
侯爵家の三男、セシル・アクロイドは『悪役令息』らしい。それを知ったのはセシルが10歳の時だった。父親同士の約束により婚約をすることになった友人、ルシアン・ハヴィランドの秘密と共に知ってしまったことだった。しかし、セシルは気にしなかった。『悪役令息』という存在がよくわからなかったからである。 セシルは、幼馴染で友人のルシアンがお気に入りだった。 だからこそ、ルシアンの語る秘密のことはあまり興味がなかった。 恋に恋をするようなお年頃のセシルは、ルシアンと恋がしたい。 「執着系幼馴染になった転生者の元脇役(ルシアン)」×「考えるのが苦手な悪役令息(セシル)」による健全な恋はBLゲームの世界を覆す。(……かもしれない)

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...