闇の記憶

姫川 林檎

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記憶喪失の少年

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「眞一さん!触ってみてください!スベスベです!」

「本当だね。」

イルカ達も慣れた物で子供やお年寄り体の弱い者にはそっと寄り添う様に居るが、俺には何故かさっきから頭突きをされている。何とか踏ん張っているが頭突きをして話し掛けているのかただ単に笑っているのか判断に悩む声で鳴く。

「眞一さん大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫は大丈夫だけど・・・。」

「お兄さん何者ですか?イルカ達が次から次へと挨拶に来ている。」

「「挨拶?」」

「初めて見る行動なのではっきりとした理由は判りませんが、頭突きをしているのは皆違う仔ですよ同じ仔は来てないです。見てる限りでは・・・。」

1人1回頭突きをしている?
他の元気な人にもしていないみたいだけど何故?

「何者と言われましても・・・。ただ、昔から動物には好かれますね。犬や猫だけでないく動物園でも柵越しに集まって来たりとかは、特に群れで暮らす動物は特に来ますね。」

「動物園でも・・・。一度観てみたいですね。言う事は聞いてくれるんですか?」

「・・・割と。」

春陽の側に居たイルカに話し掛ける。

「今日は。君のジャンプが観たいけどみせてくれる?」

キュー

一鳴きすると沖の方に泳いで行ってしまった。

「あっ、行っちゃった。本当にするんですか?」

「さぁ?」

イルカが行った方を見ているイルカが大きくジャンプして直ぐに戻って来た。お礼をして撫でてやると嬉しそうに鳴いてる。

「羨ましい・・・。俺にもその能力ほしい。」

「あははは・・・。」

確かに調教師には欲しい能力かもしれないけど、俺には無用な能力だな。
俺がイルカにお願いするのを他のイルカが羨ましく思ったのか集まって来てしまった。するとイルカに押されて春陽が倒れてしまう、間にイルカがいて反応できなかった。

ここは浅瀬だが尻もちついた春陽はギリギリの深さだ、慌てて近づこうと思ったっが俺より先にイルカが動いた。2匹のイルカが春陽の後ろから両脇に顔を突っ込み体を起こそうとする。

「えっ!?」

「春陽大丈夫?」

「えっ?あっ!はい。大丈夫です。」

春陽の前に行き手を引いて起こす。
近くに居たイルカ達は申し訳なさそうに鳴いている。その光景に春陽はビックリしているが驚いているのは飼育員さんや他のお客さんも同じだ。

「春陽、イルカ達がごめんねって。」

「あっ。大丈夫だよ。」

そう言いながら1匹1匹撫でて行く。すると撫でられた仔は順番に沖に行ってしまうとお客さん達は残念そうに見つめていた。

全員が沖に行ってしまうと沖ではイルカ達による大ジャンプが開催されていた。
お詫びのつもりだろうか?色々なジャンプしている。ショーでは見られない様な物まで行われていた。

突然のショーにお客さんだけでなく飼育員さんも楽しそうに拍手を送りながら見ていた。
ショーが終わると1匹のイルカがこの辺では見ない巻貝を春陽に渡していた、春陽は驚きながらもお礼を言い撫でると嬉しそうに一鳴いて沖に帰って行った。

初夏とはいえ未だ未だ涼しい風邪をひたら大変なので春陽を抱えて着替えに戻る間謎の拍手で見送られた。

シャワーを借りて着替える。
今日は寒くないし早めに着替えたので風邪を引く心配はないだろうけど今日は早めに寝かせよう。うん。

「・・・大きな荷物は着替えが入っていたんですね。」

「あぁ、海に入るから万が一にも濡れたら大変だから、何もなければ1番良かったんだが持って来て正解だったな。」

「すいません。」

「別に春陽が謝る事ではないよ。今日は使わなかったが俺の着替えも入っていたしな。保険だよ、保険、‟備えあれば患いなし”ってね。それより、お土産を買いに行こう!今日の記念と皆の分とね。」

「おみやげ・・・。」

春陽と手を繋いでお土産コーナーに向かう。


お土産コーナーに着くと春陽は驚いている。
ここのお土産コーナーは一般的な水族館より広く作られている。勿論一般的なお土産だけでないく、近くの海で採れた貝や漂流物や砂それに水族館で飼育されている鮫達の抜けた歯を使って手作りのお土産も作れるコーナーや、近くでの海で水揚げされた魚を使った料理体験などの食育も行われている。

今日は海に入ったりしたし初めての体験で精神的にも疲れているだろうからなし。次回の楽しみにとって置く。

先ずは皆へのお土産を選ぶ。
勿論選ぶのは春陽だ。Ωは選択権が無い事が多い勘違いをしているαやβなどが雑に扱うからだ、Ω達も歯向かうだけ無駄と考えてしまう為自分で選ぶ事を諦めてしまう。

春陽の行動からして以前はそれに近い状況だったと考えられる。
だから出来るだけ春陽に色んな物を選ばせる、食事のメニュー・行きたい場所・したい事、日々の些細な事から出来るだけ選ばせる、その上で出来る事と出来ない事、何故出来ないかをしっかり教える。一方的出来ないと伝えるだけでなくしっかりとした理由を教えて理解させる。‟Ωだから駄目”ではなく確かな理由を。

今春陽は一生懸命にじぃさん達のお土産を選んでいる。真面目な春陽は一人一人に買う気らしい、どうやらまとめてっという考えはないみたいだ。俺は趣味という趣味がないからあまりお金を使う機会がないのでたまには良いかも知れない、思う存分選びたまえ!

「・・・これにします。・・・あと・・・廣瀬君達にも買いたい・・・です。」

「いいよ。どれにする?」

「有難う御座います!!」

じぃさんには鯨の絵が絵かれた手拭いで駿二がペンギンが描かれたマグカップ。バイト君達にはお菓子を買うらしいくお菓子コーナーに向かう。

無事にバイト君達へのお土産も決まり次は今日の記念の自分達用のお土産を選ぶ。
ここ来て少しは選ぶ事にも抵抗はなくなってきたみたいだけど、選ぶのに悩むのは誰もが共通な事だから仕方ない。

「自分が欲しい物は決まった?」

「・・・いえ。・・・色々あって・・・。」

「そうだよな。確かにこれだけあると悩むよな・・・。」

品数が多いのはいいが選択肢が増えるとその分悩みが増える・・・。有難迷惑だなこれも。

「眞一さんも悩むんですか!?」

「えっ?普通に悩むでしょこれだけあったら。何で?」

「・・・眞一さんは悩んだりしないと思ってました。」

「いやいや!普通に悩むから!春陽にどう見えているか分らないけど、俺は普通の人間だから色々な事で悩むよ。例えば、春陽はこの料理好きかな?とか春陽はこの服好きかなとか?春陽は「もう!いいです!」」

顔を真っ赤にして服を掴んで止める。‟服を掴んで”って所が春陽らしいがこれが駿二だったら脇腹に一撃食らっていたな・・・。

「だから、時間が許す限りいっぱい悩んで良いから。」

「・・・はい。有難う御座います。」

春陽は時間が許す限り悩みお土産を買って俺達は帰路に着く。


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