闇の記憶

姫川 林檎

文字の大きさ
19 / 35
記憶喪失の少年

19

しおりを挟む
春陽の写真を撮っていると、撮られていた事に気付いて慌て出す。
思い出にと言って一緒に自撮りしたり通りすがりの人に撮ってもらったりして沢山撮った、試しに春陽にカメラを渡して撮り方を教え好きに撮らせてみる。

初めは桜の花を撮っていたが次第に色々と撮り始めた、俺を撮ったりジョンの鼻に乗った花びらを撮ったり初めは緊張していたが慣れて来たのか今では楽しそうに色々撮っている。

橋を渡り反対岸に行くとそちら側には平日でも幾つもの屋台が並んで居る、春陽は屋台で買った事がないと言うので色々買って行く。丁度おやつの時間なのでりんご飴・綿あめ・チョコバナナ等の甘味系に、多分食べた事がないだろうガッツリ系も夕食用に買って行く。

孫に玩具を買い与える祖父母の如く、春陽に色々買ってしまい手を繋いで帰れなくなってしまった。春陽は困りながらもどこか楽しそうにしていたので良しとする。駿二には怒られるだろうけど・・・。

案の定駿二には買い過ぎと怒られたがじぃさんは久し振りの屋台食に楽しそうだった、駿二の機嫌を取る為に綿あめを渡すと文句を言いながら一寸嬉しそうに受け取りソファで春陽と一緒に食べていた、2人並んで食べてる姿が可愛い駿二も春陽につられて少し幼く見える。春陽は初めての触感に驚きながら楽しそうに食べている、そんな2人をじぃさんと2人で満足気に見つめていた。

夕飯までの時間、リビングのTVに今日撮って来た写真を映して春陽に桜並木の感想を聞いたりしながら皆で過ごす。春陽は未だ未だそんなに話すのが得意ではないが、余程楽しかったのかいつもよりは話してくれていた。

夕飯時にも初めて食べる焼きそば・たこ焼き・お好み焼きや串焼き等の感想を聞いたり、じぃさんの若い頃の話を聞いたりしながらゆったりと過ごした。

今日は掃除に花見それにいっぱい話して疲れたんだろう、風呂から上がるとソファで船を漕ぎ始めた。春陽を連れて部屋に戻り先にベットに入れると挨拶もそそろに眠りに着く、ジョンと愛も指定席で眠り始めたので俺はお休みにキスを春陽にして下に戻った。

通常なら開店中に翌日の準備を済ますが今日は定休日なので、これから簡単に準備をする為に店に行き済ませる。料理関係は俺の管轄なので下処理を済ませる、駿二はケーキの下準備を終わらせているみたいだ。

準備を終え風呂に入り部屋に戻ると春陽は健やかに眠っていた。春陽がうちに来てうなされたのはお花見会に参加した夜だけで昨日も良く眠っていた、春陽にとってうちが休める場所になりつつある事に嬉しく思いながら俺も眠りに着いた。


今日はフリスビーではなく鬼ごっこの様だ。
体力が初めより付いたとは言え未だ無い春陽に対してジョンは加減して追い掛けて行く、途中楽しくなって加減を忘れてしまう場面をもあったが俺がフォローしているので怪我はない。

疲れた春陽を岩の上に座らせて俺はフリスビーの遠投をしてジョンの運動不足解消する。
満足気な顔をして戻って来たのでこれで今日は終わりにする。春陽の方も落ち着いたみたいなので片付けをして帰る。

「春陽、昨日は楽しかった?」

「はい。凄く桜が綺麗で思い出すだけで嬉しくなります。」

昨日の事を思い出しているのだろう目を細め頬が少し色付いている。春陽に楽しい思い出を作ってやれて良かった。

「来年も又一緒に行こうな。」

「らいねん・・・。」

「ん?そう来年。来年だけじゃなくこれからずっと毎年来ようね。桜だけじゃなくて、ここから見えるあの山は紅葉もみじがとても綺麗なんだ。だから秋になったら紅葉狩りにも行こう、夏には海に行って冬にはスキーをしに行こう。スキーは俺が教えてあげるから安心して。」

「でも、僕の記憶はいつ戻るか判らないし・・・。」

「記憶が戻っても行こう。記憶が戻って春陽がどうしても俺とは一緒に居たくはないって言うなら話は別だけど、春陽が一緒に居てもいいって言ってくれるなら俺はこれからも一緒にいたな。」

「僕が一緒に居てもいいんですか?」

「俺は居たい。逆に春陽はどう?他に行く所がないから仕方なく?」

少し意地悪な聞き方をしている認識はあるが今の春陽の気持ちを聞きたい、俺には言いたい事は言って欲しいとお願いしてあるが春陽はどこまで打ち明けてくれるだろうか。

「違う!・・・確かに記憶がない僕は他に行く所がないですが・・・皆さんと一緒に居るのは楽しいです。・・・出来ればこのままここに・・・居たい・・です。」

うつむきながら少しづつ自分の気持ちを打ち明けてくれた、自分がどうしたいのかを教えてくれたのが嬉しくて思わず抱き締めて頭にキスをしてしまう。

「有難う春陽。春陽が居たいと思ってくれて嬉しい、これからもずっと一緒に居ようね。」

一寸意味あり気になってしまったが気にすまい。
俺はいつでも意味を持たせても構わないのだから。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

『悪役令息』セシル・アクロイドは幼馴染と恋がしたい

佐倉海斗
BL
侯爵家の三男、セシル・アクロイドは『悪役令息』らしい。それを知ったのはセシルが10歳の時だった。父親同士の約束により婚約をすることになった友人、ルシアン・ハヴィランドの秘密と共に知ってしまったことだった。しかし、セシルは気にしなかった。『悪役令息』という存在がよくわからなかったからである。 セシルは、幼馴染で友人のルシアンがお気に入りだった。 だからこそ、ルシアンの語る秘密のことはあまり興味がなかった。 恋に恋をするようなお年頃のセシルは、ルシアンと恋がしたい。 「執着系幼馴染になった転生者の元脇役(ルシアン)」×「考えるのが苦手な悪役令息(セシル)」による健全な恋はBLゲームの世界を覆す。(……かもしれない)

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する

とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。 「隣国以外でお願いします!」 死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。 彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。 いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。 転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。 小説家になろう様にも掲載しております。  ※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。

処理中です...