闇の記憶

姫川 林檎

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記憶喪失の少年

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18時に店を閉め、素早く片付け。
17時から徐々に片付けていたので直ぐに終わった。

母屋に戻りの準備もする。
春陽に寒くない様に着替えさせ上着を用意する。皿や箸は各自持参なのでそれは容易済、予備もしっかりある。

「春陽、先ずはじぃさん達を先に送って来るから、愛にこれを着させておいてくれ。」

猫用の上着を渡す。

「愛ちゃんも行くのですか?服嫌がりませんか?」

「愛もジョンも行くぞ。2匹に会いたい人も多いしな、愛は服より寒いのが嫌いだから喜んで着るぞ。ジョンは北国の出身だから夏の方が苦手だな。」

春陽に愛を任せ、俺はじぃさん達を先ずは送る。

「準備終わったか?」

「はい。終わりました。」
「珈琲も準備OKです。」

「じゃあ、荷物を車に乗せてくれ。帰りは店には寄らないから自分の荷物も忘れない様に。」

「「「はい!」」」

車に荷物を載せ、先ずはじぃさんとバイト達を送る。
岩倉さんは少し緊張していたが、渡辺君達がどんな感じかを話している。主に何が美味しいとかだが、この2人は駿二や春陽と違って食欲旺盛だ。量は少ないがそれでも食べる事が大好きな2人である。うちの2人はあまり食べる事に執着がない、だから2人共痩せているもっと食べて欲しいものだが・・・。

近くなので車だと直ぐに着く。歩いてでも行ける距離だが人数と荷物が有るので車で申請してある、止められるスペースが決まっているから歩ける人は歩いて欲しいのが本音だろう。じぃさんに荷物とバイトを任せ急いで家に戻る。

家に戻ると2人が楽しそうに話していた。
俺が思っているより打ち解けているみたいだ、少し、イヤ!かなり寂しい。駿二を春陽に取られた様な春陽を駿二に取られた様な変な気持ちだ。なんか悲しい。

「お待たせ。じゃあ行こうか。」

「「はい。」」

2人を後ろに乗せて会場に向かう。
車に乗ってからも2人はどこか楽しそうだ。

車を駐車場に停め、降りて来た2人を後ろから抱き締める。

「ちょっ一寸兄さん!何!?」
「えっ?」

「ご免一寸寂しかったから・・・。さぁ、行こうか。」

「「・・・・?」」

会場に入ると春陽を見た連中が騒ぎだそうとしたので、会場全体に軽く威圧を掛けると大人しく座った。

「「??」」

「あそこだ、行こう。お待たせ、今年もいい場所取れたな。」

2番目に大きな桜の木の下に皆が座っていた。場所は18時以降じゃないとこの場所に入れない為前日からの場所取りが出来ない、だから店が終わり順次にイイ所から場所が埋まって行く。なのに毎年うちは遅くに来ても、ここの木の下を獲れるには訳がある。

「浜本さんが獲ってくれててね。」

浜本さんとは魚屋のご主人で、この浜本さんが毎年場所取りをしてくれている。
浜本さんが何故ここまでしてくれるかと言うと、大のΩ好きなのだ。浜本さんはβだが綺麗な子が好きで見て居たいらしい、それだけ聞くととても危険だが感覚的にはアイドルを見て居る感じらしい。奥さんや子供達にもあきられていたが、最近では家族でΩファンで勿論隣に陣取っている。

「浜本さん、毎年すいません。」
「毎年有難う御座います。良かったこれ僕が作ったんですけど、食べてください。」

今年も浜本さんが獲ってくれていると思って駿二はケーキを用意していた。俺が渡してもいいんだけど、駿二が渡した方が喜ぶだろうから駿二に渡させている。

「!!有難う!こちらこそ気を遣わせてしまったね。これは神棚に「直ぐに食べてください!お願いします。」分かりました、後で頂きます。」

駿二が止めなければ神棚に上げて食べるのが遅くなる所だった、浜本さんは駿二が作ったクッキーを真空パックにして保存するっという前科持ちだ。止めないといつ食べるか分かったもんじゃない。

「ところで、そちらの可愛らしい子はどなたかな?」

「この子は春陽と言って新しい家族です。詳しくは後で皆さんに紹介する時に。」

「そうですか、春陽くんかな?魚屋の浜本です。これから宜しくね。」

「・・・はい。宜しくお願いします。」

俺の服を掴みながら何とか挨拶をする春陽の頭を撫でる、するとこっちを見て一寸安心した顔をしたのを見ると少しは頼りにしてくれているのかな?

挨拶を終え春陽を座らせて隣に俺が座る、春陽の後ろにジョンが伏せて待機愛は未だ春陽が抱っこをしている。落ち着くまで愛には居て貰おう。

座っていると八百屋の奥さんが飲み物を持って来てくれた。

「今晩は。はい飲み物。駿ちゃんは日本酒で眞ちゃんは車だから林檎ジュース、そっちの可愛い子ちゃんも林檎ジュースでいいかな?」

多恵子たえこさんすいません、この子は新しい家族の春陽です。詳しくは後で。」

「春陽くんでいいのかな?おばちゃんは八百屋をやっていてね、眞ちゃん達が小さい時から知ってて眞ちゃんは昔猫を助け様として木から落ちたりしたのよ。」
「多恵子さん!そろそろ始まりますよ。」

「そうね、じゃあまたね。」

小さい時から自分を知っている人間が居ると言うは、安心出来るがこういう時に困る。


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