美形×平凡の子供の話

めちゅう

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 エラが消えた。


 このたった6文字の知らせだけで俺の心を混乱させるのには十分だった。今すぐ騎士学校から飛び出てエラに会いたい、その一心で校門へと走り出した。

 途中、エラの婚約者であるハワードに出会ったが彼奴には教えてやらない。エラを大切に出来ない奴になんて。キッと睨み付け奴を尻目に走るスピードを上げる。すると、

「エラに何かあったのか!!?」

 と、横について来られた。こんな奴に構っている暇はない、元々無口な事も利用して無視して離れようとしたがそうはいかなかった。

「頼むエリック!教えてくれて、エラに何かあったんじゃないのか?」

「どうしてそう思う?」

「お前がそんな切羽詰まった顔して走るだなんてエラの事しか考えられない。」

 ……そんな表情をしていたとは。何故それを此奴が俺の表情だけで分かる。エラに関する事に興味を示した事など無かったくせに。

「お前には教えない。」

 そう言い残し、既に到着していた馬車に乗り込み一旦両親のもとに向かう。急いでくれ、頼む間に合ってエラ。


 家に着くと急いで父の書斎へ向かう。扉を開けると泣き崩れる母に寄り添う様に父がいた。部屋の中は賊でも入ったかというくらい荒れていた。

「父上、母上ただいま戻りました。……エラは?」

「ああ、エリックおかえり……すまないこの様な有り様で。…まだエラは見つからない、一緒にエラ付きの侍女も消えている。今魔力を辿って」

「エリック?ごめんなさい、私が悪いんだ。ちゃんとあの子の事を考えてあげられなかった。私が悪いんだ、ごめんなさい。」

 母は壊れた人形の様にただ、エラに謝るだけだった。それを父が必死になって慰めている。母のこの様な姿を初めて見た、俺がエラを見つけなければ。

「父上、大体の位置は分かりますか?」

「あ、ああここから南西の、イコリ樹林の辺りだ。」

 まずい、あの樹林の草花にはエラがアレルギー反応を出すものが多い。早く向かわなければ!

「父上、私が向かいます。」

「駄目だエリック、私が行く。お前はここでエーリンと待ちなさい。」

「……それでは何故私は騎士学校へ通っているんです?大事な家族を守る為ではないのですか?」

 だが、と続ける父を無視して出口へ向かうとここにいるはずのない彼奴が息を切らして俺の前を塞いでいた。

「っは、間に合った、エリック、っ僕も一緒に行かせてくれっ!イコリ樹林の方角には心当たりがあるんだっ」

「……勝手にしろ。」

 ……ハワード。いつもであれば無視か、拒否のどちらかであっただろう。これ程までに必死な顔をした人間を無視出来るほど心はまだ冷え切っていないみたいだ。



 馬に乗り急ぎイコリ樹林まで向かう、多少だがエラの魔力が感じられるやはりこの方向で間違いない。

「エリック、エラの魔力ともう一つ感じた事のある魔力がある。…これはまずいかもしれない急ごう!」

 そんな事は分かってる!エラ、俺の半身。今行く。








 目が覚めたら知らない森の中にいた。さっきまで侍女と家の庭に出ていたのに。なんだか少し息がしづらい気がする。……それに身体が痛い、ああ、これは私の血だろうか?お腹から流れる赤いドロッとした液体は。それよりヒリナは無事だろうか、私についていたばかりに巻き込まれてしまったんだろう。

 私は死ぬのだろうか?特に何も無い人生だった、私が誕生した意味はあったのだろうか?少なからずエリックから奪ってしまったものがあったのではと、私の半身に思いを馳せる。

「エラ様っ!しっかりしてくださいませ!エラ様!今手当致します!」

 ああ、ヒリナ君は無事だったんだね。良かった。……どうして戻ってきたのだろう。それでは君が危ないのに、

「ヒリナ、ここから離れなさい。」

「っ!なりません!ヒリナはエラ様と共におります!」

「お願いだから聞いてくれ、っかは」

 私はもうどうせ持たないと思う、ならば傷一つない君は逃げて自由になるべきだ。私なんかの為に、

「エラ様っ!」

「あら~?誰かと思ったらヒリナじゃない、どうしてここにいるのかしら?貴方とは先程の村で別れたはずよね?」

「……ハンナ様。」

 ハンナ様か、それは納得だ。ハワード様の10も歳の離れた姉君で私達の婚約に反対していたし婚約が成立してからもあまり良い対応をされた事は無かった。

「どうしてこんなのの味方なんてするの?ハワードもエリック様もアーノルド様も!…あの穢らわしい血のせいね。あの男のせいで………!」

 この方とはまともな話し合いにならないのであまり言葉を交わさない事が最善だと数年の付き合いで学んだ。ハワード様の家族だから仲良くなろうと最初の頃は思った事もあった様な無かった様な…。

 こんな無駄な事でも考えていないと意識が何処かへ行きそうだ。どうしてただ生きる事さえ許されないのだろう、どうして私の望む様に進めないのだろう、どうして皆私を憎むのだろう。私は皆を愛したいのに……。

「はぁ~あ、さっさとコイツをどうにかしないとバレたらめんどくさい事になるものね。後始末は任せたわよ、ヒリナ。…御家族がどうなるかちゃんと考えて行動なさい?」

「っ!!!」

 そう言い残しハンナは移動魔法を使い去っていった。やはり、人質がいたか。酷い事をする人だ。可哀想に、涙で顔がぐちゃぐちゃになって私なんかの事で悩む事などないのに。短刀を震える両手で握り泣き叫ぶ彼女に声を掛けてあげたいがもう声を出す力も出ない。……大丈夫だ。君の為に生きて。

「うわぁああああああ!!!!」





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