美形×平凡の子供の話

めちゅう

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 この国の四大公爵家の一つであるシーヴォルト公爵家の当主であり先代の王弟を祖父に持ち容姿端麗、冠前絶後と褒め言葉を並べればきりがない程完璧な男アーノルド・シーヴォルトが平民出の母をもつ平凡な見た目の子爵令息エーリン・ソイルを娶ったのはもう20年程前の事になる。

 当時はひどい騒ぎになったそうだ。それもそうだろう、道を歩けば誰もが振り向き夜会に出たら最後年頃の令嬢令息に囲まれ身動きが取れなくなる事もしばしば。そんな選り取り見取りの公爵が平凡な子爵令息を娶ったのだから周囲が反発しないわけがない。

 当の公爵はそんな周囲をお構いなしに子爵令息を溺愛した。

 そうして数年後、男の子の双子が産まれた。一般的に男女での妊娠が普通であるが、魔法で母体となる方の胎に子宮を造り魔力を数ヶ月送った後、行為をすると同性での妊娠も可能となる。男同士での妊娠のメリットは丈夫な子が産まれやすい傾向があり特に貴族の間では同性婚が多い。

 

 産まれた双子はエリックとエラと名付けられた。双子は二卵性で、片方は公爵にもう片方は子爵令息に似た。

 公爵に似た顔立ちに子爵令息の淡いオレンジ色の髪色、聡明さを持ち合わせたエリック。

 反対に公爵の綺麗な銀髪を少しくすませたような髪に、子爵令息の平凡な顔を貼り付けたような見た目の出来の悪そうなエラ。

 両親はどちらにも変わらない愛を持って双子に接していたが当然の如く周囲からは比べられ公爵に似たエリックは持ち上げられ、子爵令息に似たエラは陰で見下されていた。一部ではエラがくすんだ銀髪を持つ為童話を持ち出し灰かぶりと呼ぶものまでいた。エラの心に深い傷を残すのに時間は掛からなかった。


 そのまた数年後双子に弟が出来た。クロイスと名付けられ公爵家総出で溺愛する程可愛らしい見た目をしていた。公爵より透き通るようなほぼ白に近い銀髪に子爵令息に似た顔つきながら公爵にも似ている様な程よい顔立ちであっという間に周りを虜にした。

 完全にエラの上位互換である。

 そんな事も思いつつもエラは産まれたばかりの幼い弟を両親と同じように愛を持って接した。


 16になる年エラに婚約者が出来た。お相手は四大公爵の中でも最も王家に近い力を持つノヴァス公爵家嫡男ハワード・ノヴァスであった。歳は2つ離れてエラの方が上である。エラは両親に断りを入れようとしたがこればかりは聞き入れられないと言われてしまった。

 家同士の繋がりが貴族にとって大切な事は分かっていた。だか、せめてエラではなくクロイスをと願い出たがそれも聞き入れられる事はなかった。

 ハワード・ノヴァスはエラの父に似て見目の良い青年であった。その為またもやエラは中傷の的になった。更に追い打ちをかけるようにエラの心を知ってか知らずか弟のクロイスがハワードにやたらと懐いた。

 エラを良く思わない周囲の人間がこれ幸いとクロイスとハワードを近付けようと必死になっていた。エラも勿論知っていたが他人事の様に傍観していただけだった。


 そうして18の歳になると博愛の心は持てど、何事にも自身の事ですら関心の無い公爵令息エラ・シーヴォルトが出来上がっていた。




「エラ、来年にはハワードと結婚するんだ。もう少し距離を縮めてみたらどうかな?」

「…お母様、ハワード様はそれを望んでおりません。でしたら、私はハワード様に合わせるまでです。」

 優しく提案をしてみるがニコッと微笑みながら感情を一切入れず言葉を発するエラにエーリンは心配な気持ちを隠せなかった。このまま大事な息子を嫁がせて大丈夫なのだろうか、最近はその事を考えることしか出来なくなっていた。

「……ハワードは嫌?ハワードと結婚はしたくない?」

 今更どうしようもない事だとは思いつつもこの子の本心を聞きたいと思いエーリンはこの質問を口にした。

「いいえ?嫌ではありません、むしろこれから家族になるのですから好きですよハワード様の事。結婚をしたくないわけでもありません、家同士の繋がりの為ですし。」

 表情を一切変えずに話す息子に少しビビりながらももう少し話してみる。

「ただ、やはり周囲の方々も仰っている様に私ではなくクロイスの方があっているかと思います。クロイスもハワード様に懐いていますし、ハワード様に会ったらすぐに駆け寄ってクロイスったら愛らしいですよねお母様?」

「……うん、そうだね。エラはほんとにクロイスが好きだね?」

「ええ、自慢の可愛い弟です!あ、勿論お父様もお母様もエリックも大好きです!」

「私もエラの事愛してるよ、本当に何よりも……」


 ありがとうございますっなんて満面の笑みで言われてもエーリンの心が苦しくなるだけだった。私は、私達は何処で間違えたんだろうか。守れた気になって何も守れていなかった、大事なこの子の心を。

 周囲の人間がエラに心無い事を言っている事は昔から知っていた。その都度罰を与え、酷い時には使用人の総入れ替えもした。それでも公爵家の力を持ってしても無くなることはなかった。

 エーリンは自身の容姿を受け継いだエラに少し罪悪感を持っていた。そのせいかエラを人一倍可愛がっていたが、それだけでは足りなかった。何が足りなかったのか考える事で夜も眠れない。


 そんなある日、ついに事件が起きた。


 エラが消えた。



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