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しおりを挟む後一歩でも遅ければ僕の愛する彼がこの世から消えていた。魔力を辿り森の中を探すと血だらけの彼が木にもたれ、微笑みながら眠っていた。…一瞬呼吸が止まった。
「エラ!!」
エリックの声にハッとした、何をしているんだ僕は。ここで止まっていては駄目だろう。
「エリック!エラは??」
「呼吸が浅い、早く戻らないと!ハワードお前治癒魔法は!?」
「少しなら使える!…はぁあ!」
本当は使った事なんてない、でもエラの為に覚えた事を今やらは無いでどうする!エラ、エラっ!お願いだ、また僕に笑って欲しい!
「っ!…呼吸が少し落ち着いたっ!」
「はぁ、はぁ、っよかった、早く、戻ろうっ!」
エラの隣に倒れていた侍女は両手に短刀を持ち失神していた。……連れて行かなければエラが悲しむだろう。
急ぎシーヴォルト公爵邸へ戻り自室へ運び寝かせるとエーリン様が目を真っ赤にさせて扉を蹴破る勢いで入って来た。
「エラは!!?あぁ!エラ!今助けてあげるからね?!」
そうだ、この方は治癒に関して右に出る者がいない。その事に関して周りにひけらかしたり、力を出し惜しみせず誰にでも使ってみせるだからこそ僕は尊敬している。
「……っ腹回りの傷が酷い、、あぁ、一度子宮が造られた跡がある……………。」
「エ、エラが?何故……?」
「……子宮が造られると完全に母体になり、その子宮を使い子を孕む事ができる。逆に子を孕ませる機能を失う。」
それは、貴族なら誰でも知っている事だけれどどうしてエーリン様はその事を?
「子宮は一度使えなくなると二度と魔法で作り直したところで使えない。…エラの子宮が壊されている。っエラはもう子を産めない……。」
「は……。」
情けない声しか出てこない自分が腹立たしい。どんなに痛かっただろう、床に膝をつきエラの手を握る、
「エラ、ごめん、僕が、僕がっ」
「違うよ、ハワードだけのせいじゃ無い。どうか自分だけを責めないで、」
責めないでなんて優しい言葉僕には勿体無い。ずっとエラだけを想ってきたのにっ!…ただでは終わらせない。エラが受けた苦しみを必ず返してやる。
「エリック、犯人に心当たりがある。」
「ああ、俺もだ。」
顔から表情を消しエリックに向き直る。エリックもいつにも増して眼光が鋭い、それもそうだ大事な半身が傷つけられて黙っていられるわけがない。
二人で公爵邸を出ようとするとアーノルド様が馬車の前に立っていた。アーノルド様と向かい合う様にエリックが前へ出た。
「父上、止めても無駄です。俺たちは行かなければいけない、エラの為に。」
「止めるわけが無い、私の大事な子供を傷つけられて黙っていられるわけがっ!私の蒔いた種でもある、私が終わらせる。……二人とも乗りなさい。」
目的地はもちろん僕の実家であるノヴァス公爵家。同じ屋根の下にエラを消そうとする悪魔が住んでいたとは考えたくも無かった。
「アーノルド!!エラは?見つかったのかい?」
父が屋敷から飛び出てきた、おそらく今回の事に父は関わってはいないだろう。
「ああ、ユリシズ見つかったよ。エリックとハワードのお陰でね?それよりミレーユとハンナは何処に?」
「ああ、手紙の通りに捕らえて牢に。アーノルド、すまないこの様な事になってしまってどんなに謝っても許されない事は分かっているでもすまなかった!」
シーヴォルト公爵からの返事は無かった。それよりも今は奴らに一刻も早く地獄を見せる事が先だ。
「ユリシズ、牢は何処だ。」
「あ、ああ、こっちだ!」
牢に入ると手錠をつけられ錯乱状態の姉と母がいた。魔力封じの首枷も付けられた姿は見るに耐えない。
「貴方!!どういうつもりです!?私をここの閉じ込めるだなんて!!ハワードも!早くお母様を出しなさい!」
「ハワード!!よかった早くお父様を正気に戻して!お姉様を出して?早く!早く!」
正気じゃ無いのはどちらだ。僕は再三エラへの態度を改めろと言ってきたのに全く聞く耳を持たず嫌がらせを続けていたのを僕は知っている。……知っていて家族だからと強く出れなかったのは僕の弱さだ。そのせいでエラに辛い思いをさせていたんだ、けれどもう弱気な僕はいない。
「黙れ!!お前達がっ!エラをっ、お前達の下衆な行いのせいでエラを失うかもしれなかった!!死んで詫びろ!!!」
「ハワード!!お母様達になんて事を言うの!!それにエラの失踪が何故私たちのせいになるのかしら全く知らないわ!」
この状況でまだ言い逃れする気でいるのかこの外道、最早血が繋がっているとは思えない程醜い。だが、…追い詰めるには証拠が足りなかったか、、
「ミレーユ、これを覚えているか?」
「何です?アーノルド様、ただの短刀では?私には見覚えがありませんわ?」
短刀?あれはエラの側にいた侍女が持っていた短刀だ、あれが何に関係があるんだ?
「そうか、私はこの短刀に憎らしいほど見覚えがある。これはお前が魔法学校時代にエーリンを刺し殺そうとした時に使ったものだな?」
エーリン様を刺し殺す………?母が、か?
「……っ!結局犯人が見つからなくて諦めたと。そんな20年も前の話、あまり覚えがありませんの。それにあの時とは持ち手の装飾が大分違いますが?」
「随分と喋るじゃないか、相変わらずでとても不快だよ。私はずっとお前を怪しんでいたよ。あの日犯行現場に落ちていた唯一の証拠の短刀が人知れず消えて、事件が有耶無耶にされ間違いなく私よりも強い権力に揉み消されたんだと分かった。」
確かに母は現王の妹に当たる為、我が公爵家が最も王家に近いと言われている。魔法学校時代といえば母はまだ王族に名を連ねていたはず、揉み消すのは簡単と言うことか。
「あの時私は一度短刀に触れている、誰の魔力が濃く短刀についていたか。忘れたくても忘れられない、間違いなくお前の魔力だった。」
「だからそれがどうしたんです?誰もそんな事信じないわよ!」
「短刀に見覚えがないと言ったな?私は短刀の装飾については何も話してはいない。あの時短刀を見ているのは私とエーリンだけの筈だが、では何故お前が変わった事を知っているんだ?」
「っ!!そ、それはっ、」
「お前がこの短刀の持ち主だからだろう?因みに、この事については王に報告済みだ。もう泣き寝入りなど二度としてたまるものか、その為に私も力をつけた。お前如きで揉み消せると思うなよ?同じ短刀を使うなんてお前らしいやり方だ。」
母上が静かになった。恐らく、過去の事件も母上が起こした事件なのだろう。エーリン様を殺そうとしただけでなく、その子供であるエラをも害そうとした。何故母上はそこまでしてあの親子を……?
「そうよ、何が悪いの?こんなにも美しい私が何故エーリンなんかに負けるのよっ!ずっとそう、成績も人望も慕っていた人だって!皆あの平凡顔のどこが良いわけ?許せないのよ!!エラが産まれた時はざまぁと思ったわ!やっぱり平凡顔のからは平凡顔が産まれるってね!親子揃って同じナイフで切られるなんて最高じゃない!ふふふふふふふ」
目の前の女がエラの悪口を言ってヘラヘラと笑っている…
「エラは綺麗だ。お前達なんかには一生掛かっても分からない、見た目だけ派手で中身が薄汚れた人間にエラの中身の清らかさは。シーヴォルト公爵、もう行きましょうこの人達と話していても時間の無駄です。」
「ああ、これからが楽しみだなミレーユ。お前達にもエラと同じ苦しみを与えてあげよう。」
父上は、どう思っていたのだろう。両親は仲がいい夫婦だったと思う。それに姉上も可愛がっていたと思う、父上が心配だ。
その後母と姉はエラと同じように子が出来ない体にされ、親子揃って辺境の修道院へ送られた。
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