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しおりを挟む「こちらに近寄るでない。そなたは闇魔法使いなのであろう?いくら父上が学園に通うことを許したとしても私は許さないからな。闇魔法の使い手は一掃すべきだと思っている。そなたも、マチルダもな。私が王になったあかつきには、闇魔法使いは全員処刑してやる。光魔法こそが全てなのだから相対する闇魔法は悪でしかない。」
初めてお会いした王子殿下は私の顔を見るなり苦虫を噛みしめたような表情になり、つっかかってきた。
酷い差別だ。
闇魔法がいったい何をしたというのだろうか。
何もしていないはずだ。
確かに、光魔法と同じくらい強力ではある。使い方を間違えれば人を殺めることもできる。でも、それは他の属性魔法も同じだ。どの属性魔法も使い方次第で人を殺める可能性を秘めている。闇魔法だけが特別なわけではない。
「……王子殿下はマチルダ様と婚約されているとうかがっておりますが。」
「そなたに発言権はないっ!」
王子殿下はキャンキャンと吠えた。
金色に輝く髪と瞳はとても目を惹く。一目で王子様だとわかる容姿をしているが、性格はまったく王子様らしくなかった。
乙女ゲームでの王子殿下は甘い言葉を囁く女の子にとっての王子様を体現したような存在だったのに。容姿は同じなのにこの言動は正直いただけない。それもこれも私が闇魔法の使い手だからなのだろうけれども。
「エスフォード殿下。このような闇魔法の使い手などと話しておられますと我々も毒されてしまいます。お相手はなさらぬ方がよろしいかと。」
宰相の息子である攻略対象の一人が横から口をだしました。乙女ゲームの攻略対象とあって、こちらも容姿がとても良いです。でも、不思議と名前は思い出せません。
「そうです。エスフォード殿下。このような者と話すなど間違っておられます。それどころか闇魔法の使い手などと一緒に学園に通うなどということは不名誉であります。マチルダ侯爵令嬢の件といい。今回の件といい。エスフォード殿下を悩ませるものが多く困っております。」
魔道士長の息子である攻略対象の一人も口を挟んできました。こちらも乙女ゲームの攻略対象とあって、容姿がとても良いです。でも、やっぱり不思議と名前は思い出せません。
「闇魔法のなにが悪いかわからないけど、エスフォード殿下が嫌ってるんだからそれが正しいことなんだよな。だからあんたには悪いけど、金輪際エスフォード殿下には近寄らないでくれるか?」
騎士団長の息子である脳筋の攻略対象の一人も口を出してきました。こちらはあまり闇魔法に苦手意識を持っていないようです。ただ、王子殿下が言うことは絶対だと思っているようです。そしてやっぱり名前を思い出すことはできません。
王子殿下の取り巻きの言葉からやっと王子殿下の名前がエスフォードだということがわかりました。今日一番の収穫かもしれません。
ただ、この国では差別を無くそうと現国王陛下が努力をなされているのに、その息子であるエスフォード王子殿下が差別を主導しているようなのはとてもいただけないような気がするのですが……。
「エスフォード王子殿下。学園にいらしていたのですね。このようなところで平民につっかかっておらずに学園長の元に早く行ったらいかがでしょうか?学園長がエスフォード王子殿下が来るのを首を長くしてお待ちですわ。」
エスフォード王子殿下に睨まれていると、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢がやってきて、エスフォード王子殿下に早く学園長室に行くようにと助け船を出してくれました。
「ふんっ。たかが、約束の時間に一時間遅れたくらいだろう。そのくらい待たせておいてもよい。私は王太子なのだからね。」
「……あまり相手のことを下に見るのは良くないことかと存じますが?」
「はっ!下卑な闇魔法使いであるそなたに言われたくはないな。闇魔法使いは人間ではないのだからな。」
「魔法の属性で優劣をつけてはなりません。まあ、私が言ったところでエスフォード王子殿下のお心には届かないとは思いますが。」
いつものやりとりなのか、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢は大きなため息を吐いた。
「はっ!そのとおりだ。私は王族だからね。王族に従わない者はいらないのだよ。」
「……そうですか。国王陛下もそのようにお考えで?」
エスフォード王子殿下のあまりの言いように私はついつい口を挟んでしまった。
とたんにエスフォード王子殿下とその取り巻き3人に思いっきり睨みつけられる。
……わたし、ほんとうはヒロインなんだけどな。光魔法使えないけど。
「父上は甘いのだっ!だから他の貴族どもがつけあがるっ!ふんっ!闇魔法使いどもと話しているのは時間の無駄だったな。いいか、私が王になったあかつきにはまず、そなたたちから処刑してみせるからなっ!私に楯突く愚かな闇魔法使いどもめっ!」
エスフォード王子殿下は去り際に毒を吐いてから去って行った。
なんだか、エスフォード王子殿下が一番の悪役に思えて来たんだけど。
これは、エスフォード王子殿下の婚約者であるマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢が可哀想だ。
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