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しおりを挟む「……マチルダ様。マチルダ様はエスフォード王子殿下のことをどうお思いなのでしょうか?あまりにもエスフォード王子殿下は……その……。」
エスフォード王子殿下の態度が気になってしまい思わずマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢に問いかけてしまった。まさか、あそこまで酷い王子殿下だったとは思わなかったのだ。
乙女ゲームの世界ではとても優しい人に思えたから。
それもこれも、ヒロインが光魔法の使い手だからかもしれないけれど。
「……そうね。あの人を見下す態度はいただけないわ。次第に民衆の心が離れていってしまう。とても危険だわ。下手をすると恨みを買って暗殺されかねないわね。」
マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢は大きなため息をついた。
「マチルダ様が、エスフォード王子殿下のことでお心を痛める必要はないのではないでしょうか。」
「……あんなのでもこの国の王子であり、次期国王なのよ。矯正しなければこの国はダメになってしまうわ。」
「ですがっ!あまりにもマチルダ様の負担が大きすぎますっ!」
「そうね。私が光魔法を使えれば多少は違ったのかもしれないわね。そうすれば少なくとも私の言うことは聞きいれてくださったでしょう。私が光魔法を使えれば、エスフォード王子殿下をまっとうな国王に導くことができたかもしれないわね。」
「……今からでも光魔法の使い手を探してその人をエスフォート王子殿下の婚約者とすれば……マチルダ様の心労は減るかと……。」
「そうね。それも考えたわ。でもね、エスフォート王子殿下は始終あのような感じなのよ。まっとうな女性は近寄らないわ。光魔法の使い手なんてエスフォート王子殿下に目をつけられたくなくて隠れて過ごしているって噂よ。」
「……それは、確かに。」
私は孤児院で育ったからエスフォート王子殿下の人となりを知らなかったけれど、始終あのような態度を取っているのだとしたら貴族たちにはエスフォート王子殿下の性格が知れ渡っているだろう。
エスフォート王子殿下の婚約者となることに二の足を踏むものも多いはずだ。いくら王子殿下だとしてあの性格ならば先行きは怪しい。
「貴族は自分の娘が光魔法の使い手だったらと思っている者は何人かいそうだけれどもね。平民の間ではエスフォート王子殿下の性格が話題になってエスフォート王子殿下に目をつけられないようにって隠れていると聞いているわ。気の強い子がいればいいのだけれどもね。」
「ですが、このままだとマチルダ様が一番の被害者に……。」
「でも私が王太子妃となることで民が救われる可能性はあるわ。私がエスフォート王子殿下から民を救ってみせるわ。」
「マチルダ様……。私も、私もマチルダ様を支えますっ!誰になんと言われようともっ!!」
「ありがとう。リリーナ嬢はとても良い子ね。」
マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はそう言って微笑んだ。
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