乙女ゲームのヒロインに転生したはずなのに闇魔法しかつかえません

葉柚

文字の大きさ
7 / 17

しおりを挟む

「……マチルダ様。マチルダ様はエスフォード王子殿下のことをどうお思いなのでしょうか?あまりにもエスフォード王子殿下は……その……。」

 エスフォード王子殿下の態度が気になってしまい思わずマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢に問いかけてしまった。まさか、あそこまで酷い王子殿下だったとは思わなかったのだ。
 乙女ゲームの世界ではとても優しい人に思えたから。
 それもこれも、ヒロインが光魔法の使い手だからかもしれないけれど。

「……そうね。あの人を見下す態度はいただけないわ。次第に民衆の心が離れていってしまう。とても危険だわ。下手をすると恨みを買って暗殺されかねないわね。」

 マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢は大きなため息をついた。

「マチルダ様が、エスフォード王子殿下のことでお心を痛める必要はないのではないでしょうか。」

「……あんなのでもこの国の王子であり、次期国王なのよ。矯正しなければこの国はダメになってしまうわ。」

「ですがっ!あまりにもマチルダ様の負担が大きすぎますっ!」

「そうね。私が光魔法を使えれば多少は違ったのかもしれないわね。そうすれば少なくとも私の言うことは聞きいれてくださったでしょう。私が光魔法を使えれば、エスフォード王子殿下をまっとうな国王に導くことができたかもしれないわね。」

「……今からでも光魔法の使い手を探してその人をエスフォート王子殿下の婚約者とすれば……マチルダ様の心労は減るかと……。」

「そうね。それも考えたわ。でもね、エスフォート王子殿下は始終あのような感じなのよ。まっとうな女性は近寄らないわ。光魔法の使い手なんてエスフォート王子殿下に目をつけられたくなくて隠れて過ごしているって噂よ。」

「……それは、確かに。」

 私は孤児院で育ったからエスフォート王子殿下の人となりを知らなかったけれど、始終あのような態度を取っているのだとしたら貴族たちにはエスフォート王子殿下の性格が知れ渡っているだろう。
 エスフォート王子殿下の婚約者となることに二の足を踏むものも多いはずだ。いくら王子殿下だとしてあの性格ならば先行きは怪しい。

「貴族は自分の娘が光魔法の使い手だったらと思っている者は何人かいそうだけれどもね。平民の間ではエスフォート王子殿下の性格が話題になってエスフォート王子殿下に目をつけられないようにって隠れていると聞いているわ。気の強い子がいればいいのだけれどもね。」

「ですが、このままだとマチルダ様が一番の被害者に……。」

「でも私が王太子妃となることで民が救われる可能性はあるわ。私がエスフォート王子殿下から民を救ってみせるわ。」

「マチルダ様……。私も、私もマチルダ様を支えますっ!誰になんと言われようともっ!!」

「ありがとう。リリーナ嬢はとても良い子ね。」

 マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はそう言って微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします

卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。 ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。 泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。 「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」 グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。 敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。 二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。 これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。 (ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中) もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...