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第三章 妊娠
キスしているのは誰?
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彼は黙ったまま私の話を聞いていた。
「この間、具合悪くなった時、心配だから病院へ行きましょうって言ったけど、病院行きたがらなかったし、私、心配で麻生さんの寝顔見に行った事あるのです、その時、苦しそうにまるで魘されているみたいに「あゆみごめん」って、何がごめんなのですか、麻生さんどこかへ行くって事ですか、私は一人になっちゃうの」
もう涙が止まらなかった。
彼は私を抱きしめて落ち着かせようとしてくれた。
「あゆみ、落ち着いて、そんなに一遍に話したら分からないよ」
彼は暫く私を抱きしめたまま、大丈夫、大丈夫って繰り返してくれた。
「まず、沈黙した理由だな、え~っと、全然覚えてない、それから病院行かないのは大丈夫だから、それからあゆみごめんの寝言だよな、え~っと、これも全然覚えてない」
彼は私の不安を覚えてないと大丈夫で終わらせた。
「あゆみ、覚えてない事だから、たいした事ない事だと思うよ」
何も言えなかった、納得したわけじゃないけど、私の考え過ぎならいいと、自分に言い聞かせた。
彼は暫くの間私を抱きしめてくれた、すごく安心した、ずっと彼の傍に居たいって、この時私は強く願った。
つわりが始まり、初めての事ばかりで、毎日が不安だった。
でもいつも彼は私を抱きしめてくれた。
しかし最近気づいた事がある、それは彼が私にキスをしなくなった事である。
どうしてだろう?と気になっていた。
もしかして他に好きな人が出来て、私に対して好きって気持ち薄れてきたのだろうか。
そんな矢先、彼が女性とキスしているところを見てしまった。
やっぱり、私は嫌われてしまったと涙が溢れてきた。
それから何処をどうして歩いたか覚えていない、たどり着いたのは産婦人科だった。
「先生、出産止めたいのですが」
私は彼に迷惑掛けたくない一心で、他に何も考えられなかった。
「落ち着いてください、ご主人さまはご一緒ですか?」
取り乱している私の様子を不思議に思い、深呼吸するように促してくれた。
「ご主人さまの同意が無ければ、中絶手術は出来ませんよ」
「でも、彼は責任感が強いので、子供を望まなくても出産の道を選ぶと思います、彼女が可哀そうです」
「彼女?ご主人さまの彼女ですか?」
私は先生の言葉に大きく頷いた。
「私達、契約結婚なのです、彼は身の回りの世話をしてくれる女性を探していて、税金対策の為結婚したのです、彼女の存在は確認したのですが、彼女はいないと言っていましたでもやっぱりいたのです、当たり前ですよ、二十五歳の彼が私に本気になるなんてありえないですから」
先生にすべてを話した。
「分かりました、今日はここに泊まって明日ゆっくり考えましょうか?」
ゆっくりも何も、私は彼の人生に割り込んだ厄介者だと言う事実は消せない。
おとぎ話のような、白馬の王子様が現れて私がお姫様になるなんて、やっぱりありえない事なのだ、どうしよう、どうしよう、もし私が彼女の立場だったら居たたまれない気持ちになった。
税金対策とはいえ、結婚して、彼の優しさに甘えて、その気になっちゃって、出産しようとしているなんて。
「この間、具合悪くなった時、心配だから病院へ行きましょうって言ったけど、病院行きたがらなかったし、私、心配で麻生さんの寝顔見に行った事あるのです、その時、苦しそうにまるで魘されているみたいに「あゆみごめん」って、何がごめんなのですか、麻生さんどこかへ行くって事ですか、私は一人になっちゃうの」
もう涙が止まらなかった。
彼は私を抱きしめて落ち着かせようとしてくれた。
「あゆみ、落ち着いて、そんなに一遍に話したら分からないよ」
彼は暫く私を抱きしめたまま、大丈夫、大丈夫って繰り返してくれた。
「まず、沈黙した理由だな、え~っと、全然覚えてない、それから病院行かないのは大丈夫だから、それからあゆみごめんの寝言だよな、え~っと、これも全然覚えてない」
彼は私の不安を覚えてないと大丈夫で終わらせた。
「あゆみ、覚えてない事だから、たいした事ない事だと思うよ」
何も言えなかった、納得したわけじゃないけど、私の考え過ぎならいいと、自分に言い聞かせた。
彼は暫くの間私を抱きしめてくれた、すごく安心した、ずっと彼の傍に居たいって、この時私は強く願った。
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でもいつも彼は私を抱きしめてくれた。
しかし最近気づいた事がある、それは彼が私にキスをしなくなった事である。
どうしてだろう?と気になっていた。
もしかして他に好きな人が出来て、私に対して好きって気持ち薄れてきたのだろうか。
そんな矢先、彼が女性とキスしているところを見てしまった。
やっぱり、私は嫌われてしまったと涙が溢れてきた。
それから何処をどうして歩いたか覚えていない、たどり着いたのは産婦人科だった。
「先生、出産止めたいのですが」
私は彼に迷惑掛けたくない一心で、他に何も考えられなかった。
「落ち着いてください、ご主人さまはご一緒ですか?」
取り乱している私の様子を不思議に思い、深呼吸するように促してくれた。
「ご主人さまの同意が無ければ、中絶手術は出来ませんよ」
「でも、彼は責任感が強いので、子供を望まなくても出産の道を選ぶと思います、彼女が可哀そうです」
「彼女?ご主人さまの彼女ですか?」
私は先生の言葉に大きく頷いた。
「私達、契約結婚なのです、彼は身の回りの世話をしてくれる女性を探していて、税金対策の為結婚したのです、彼女の存在は確認したのですが、彼女はいないと言っていましたでもやっぱりいたのです、当たり前ですよ、二十五歳の彼が私に本気になるなんてありえないですから」
先生にすべてを話した。
「分かりました、今日はここに泊まって明日ゆっくり考えましょうか?」
ゆっくりも何も、私は彼の人生に割り込んだ厄介者だと言う事実は消せない。
おとぎ話のような、白馬の王子様が現れて私がお姫様になるなんて、やっぱりありえない事なのだ、どうしよう、どうしよう、もし私が彼女の立場だったら居たたまれない気持ちになった。
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