夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU

文字の大きさ
19 / 100
第三章 妊娠

指輪、外しちゃ駄目だよ

しおりを挟む
彼の私を好きって気持ちは嘘じゃないかもしれない、でも彼女も好きなのだ、きっと彼女の方が大好きって気づいたに違いない、きっと。
私は指輪を外した、この指輪をするのは私じゃない。
 次の日彼が迎えにきてくれた。
「あゆみ、大丈夫?帰ろうか」
「すみません、ご迷惑かけてしまって」
私は彼を真っすぐ見られなかった。
彼を大好きな気持ちと、彼女に申し訳ない気持ちが入り混じって動揺していた。
「お二人でよく話し合ってください」
「お世話になりました」
彼は先生にお礼を言って、マンションへ向かった。
部屋に入ると彼は、優しく私を抱きしめてくれた。
その時指輪をしていない私に気づいた。
「あゆみ、指輪どうしたの?無くした?」
「あっ、あります」
そしてバッグから指輪を出して彼に渡し。
「この指輪をするのは、私じゃなかったみたいです」
「えっ、どういう事?」
彼は全く分からない様子で私を見つめた。
「あのう、麻生さんとの結婚指輪は彼女がするべきと思います」
「彼女?」
「麻生さんが大好きな女性です」
「俺が大好きな女性はあゆみだけど・・」
「最近もっと大好きって気づいた人です」

彼は不思議そうに私を見つめた。
「あゆみが言っている事分からないよ、あゆみより大好きな女性は居ないよ」
「彼女ですよ、キスしていた」
「最近キスした女性はいないけど」
私はマンションの前で見た事を話した。
彼は心当たりがあったように私に説明を始めた。
「まず、彼女じゃないし、キスはしていないよ」
「うそ、キスしていました」
「嘘じゃない、そう見えたなら謝る、彼女じゃなくて特別なお客さんだよ」
彼は必死に説明していた。
「私の事嫌いになったのですよね」
「嫌いになってないよ、一番大好きだよ」
「だってキスしてくれなくなったから」
私はもう泣きながら彼を責めた。
彼は何だと言う安心した表情で私を抱き寄せた。
そしてキスをしてくれた。
涙が溢れて久しぶりのキスは涙の味がした
「先生に注意された、夫婦の営みはほどほどにしてくださいって、あゆみとキスしたらしたくなっちゃうだろう」
なんか訳が分からず、何がどうなっているのか考えられなかった。
「あゆみ、勘違いしているよ、あゆみの事嫌いになる訳ないし、ずっと大好きだよ」
私は暫く涙が止まらなかった。
「左手出して」
彼は指輪を私の左手の薬指にしてくれた。


「もう、外しちゃ駄目だよ」
彼はそう言って、私を優しく抱きしめてくれた。
彼の唇と私の唇が重なり、永く熱いキスをした。
もう、彼無しの人生は考えられなかった。
「麻生さんが行くとき、必ず私を一緒に連れて行ってください」
私は彼にお願いした。
「行くって何処へ?」
彼は私の言っている事が理解出来ない様子であった。
「黄泉の国」
彼はビックリした表情で私を見つめた。
「私、一人じゃ生きていけないから」
納得していなかった彼の言葉に、急に不安になり、気持ちを打ち明けた。
彼の人生に限りがある事を、この時感じたのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

友達の肩書き

菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。 私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。 どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。 「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」 近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

処理中です...