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第十七章
小さな密航者
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鞄の中に、二体の人形がいた。
しかし、その人形は動いている。
「ご主人様。やっと私達に気が付きましたか」
「カイトさーん! ヤッホー!」
呪いの人形……などではなくて、ミニPちゃんと小さくなったミールの分身体という事を認識するのに二十秒ほどかかった。
バタン!
認識すると同時に、僕は鞄を閉じる。
そうだ! 見なかった事にしよう。
と思ったのだが……
「北村さん。どうしました? 薬がなかったのですか?」
「いや……その……」
怪訝な表情で問いかける芽依ちゃんに、僕はしどろもどろになるが……
「ご主人様! なんで蓋を閉めるのですか?」
「カイトさん! 開けて下さい! 勝手に着いてきた事なら謝りますから」
鞄の中から二人の声が響きわたる。
「北村さん。この声って? ミールさんとP0378が、勝手に鞄に入って……」
問いかける芽依ちゃんに、僕は無言で頷く。
「まあ! しょうがない人達ですね」
まあ、着いてきてしまったものはしょうがないのだが……
「芽依ちゃん。僕らはこれから公務に出かけるわけだが、二人を連れていったら問題になるのかい?」
芽依ちゃんは首を横にふる。
「ミールさん本人が着いてきたのなら、公務に婚約者を同行させたと問題になりかねないですが、鞄の中にいるという事は分身体ですよね。それなら問題はないかと」
「Pちゃんは?」
「P0378は、人でなく北村さんの私物扱いになりますので問題にはなりません」
それを聞いて僕は鞄の蓋を開けた。
とりあえず法的問題はないが、もう一つの問題は……
僕は鞄の中にいる二人に問いかけた。
「二人とも、どこまで聞いていた?」
ミールとPちゃんは、一瞬互いの顔を見合わせてから答える。
鞄の中にいたという事は、リムジン内での僕と芽依ちゃんの会話も、作戦会議室での話もすべて聞かれていたのだろうな。
「ご主人様。カルル・エステス氏が敵に捕まった事と、それを今から救出にいくことなら聞きましたが、ご安心下さい。私はロボットです。守秘義務は守ります」
「カイトさん。あたしはこう見えても口は固いのです。人に話して良いことと、悪いことの区別は付きますよ」
「そ……そうか……」
「それとですね」
ミールの笑顔が少しひきつった。
「コピー人間とオリジナルは別人だという事は、もちろんあたしは理解しています」
ん? 今さら、なんでそんな事?
「だからあ、カイトさんとメイさんのオリジナルが地球で夫婦だったなんて、あたしは全然気にしていませんからね」
うわわわ! やっぱり、聞かれていた!
気にしていないなんて嘘だろ。その顔は絶対気にしている。
「でも、あたしには話して欲しかったですね」
う……
「すまない。ミール……その……」
「いいですよ。カイトさんは別に浮気をしたわけではないですから……でも、あたしをもう少し信用して欲しかったですね」
そのままミールは、鞄から飛び出すと本来の大きさになった。
「でも、あたしに大切な事を黙っていた事に対する罰は受けてもらいますよ」
え? 罰?
しかし、その人形は動いている。
「ご主人様。やっと私達に気が付きましたか」
「カイトさーん! ヤッホー!」
呪いの人形……などではなくて、ミニPちゃんと小さくなったミールの分身体という事を認識するのに二十秒ほどかかった。
バタン!
認識すると同時に、僕は鞄を閉じる。
そうだ! 見なかった事にしよう。
と思ったのだが……
「北村さん。どうしました? 薬がなかったのですか?」
「いや……その……」
怪訝な表情で問いかける芽依ちゃんに、僕はしどろもどろになるが……
「ご主人様! なんで蓋を閉めるのですか?」
「カイトさん! 開けて下さい! 勝手に着いてきた事なら謝りますから」
鞄の中から二人の声が響きわたる。
「北村さん。この声って? ミールさんとP0378が、勝手に鞄に入って……」
問いかける芽依ちゃんに、僕は無言で頷く。
「まあ! しょうがない人達ですね」
まあ、着いてきてしまったものはしょうがないのだが……
「芽依ちゃん。僕らはこれから公務に出かけるわけだが、二人を連れていったら問題になるのかい?」
芽依ちゃんは首を横にふる。
「ミールさん本人が着いてきたのなら、公務に婚約者を同行させたと問題になりかねないですが、鞄の中にいるという事は分身体ですよね。それなら問題はないかと」
「Pちゃんは?」
「P0378は、人でなく北村さんの私物扱いになりますので問題にはなりません」
それを聞いて僕は鞄の蓋を開けた。
とりあえず法的問題はないが、もう一つの問題は……
僕は鞄の中にいる二人に問いかけた。
「二人とも、どこまで聞いていた?」
ミールとPちゃんは、一瞬互いの顔を見合わせてから答える。
鞄の中にいたという事は、リムジン内での僕と芽依ちゃんの会話も、作戦会議室での話もすべて聞かれていたのだろうな。
「ご主人様。カルル・エステス氏が敵に捕まった事と、それを今から救出にいくことなら聞きましたが、ご安心下さい。私はロボットです。守秘義務は守ります」
「カイトさん。あたしはこう見えても口は固いのです。人に話して良いことと、悪いことの区別は付きますよ」
「そ……そうか……」
「それとですね」
ミールの笑顔が少しひきつった。
「コピー人間とオリジナルは別人だという事は、もちろんあたしは理解しています」
ん? 今さら、なんでそんな事?
「だからあ、カイトさんとメイさんのオリジナルが地球で夫婦だったなんて、あたしは全然気にしていませんからね」
うわわわ! やっぱり、聞かれていた!
気にしていないなんて嘘だろ。その顔は絶対気にしている。
「でも、あたしには話して欲しかったですね」
う……
「すまない。ミール……その……」
「いいですよ。カイトさんは別に浮気をしたわけではないですから……でも、あたしをもう少し信用して欲しかったですね」
そのままミールは、鞄から飛び出すと本来の大きさになった。
「でも、あたしに大切な事を黙っていた事に対する罰は受けてもらいますよ」
え? 罰?
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