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第六章
魂?
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「いいでしょう。爆破の一時間前に警告を下します。それ以上時間を与えると、爆弾を処理される恐れがあるので」
「ありがとう。それと、君にいくつか聞きたい事があるのだが」
「何でしょう?」
「ミールに聞いたのだが、君は二百年前の地球人から、複製された人間だそうだね? そして、この惑星には、君より先に再生された君がいるとか……」
「カルルの話では、そのようです」
「つまり、この惑星にはカイトという人間が二人いる事になるわけだが、この二人は魂も共有しているのかね?」
魂!? 考えてもいなかった。どうなんだろ?
そもそも、一つの魂で複数の身体を操れるものだろうか?
正直、分からんというしかない。
「ううん……魂の事は、神様にしか分からないと思いますが……ただ、コピー人間は姿形が同じでも、それぞれは別人だと思っています」
「そうか。それで、もう一人の君に会った事があるのか?」
「ありません。本当にいるのかだって分からない」
「では、すでに死んでいる可能性もあるのだね?」
「ああ、それは考えてなかったけど……でも、そういう事もありえますね」
ダモンさんは、しばし考え込んでいた。
いったい、どうしたのだろう?
急に、ダモンさんは、何かを探すかのようにキョロキョロと周囲を見回した。
「ところで、ここに、キラ・ガルキナが来ていると聞いていたが……」
「え? キラなら……あれ?」
さっきまで、ここにいたのに……
「Pちゃん。キラは?」
「あそこにいます」
Pちゃんは、車の方を指差した。
助手席の扉が、半ドアになっている。
どうしたんだ?
ドアを開くと、キラはこっちに尻を向けて蹲り、ガタガタと震えていた。
「キラ!? 気分でも悪いのか?」
「ち……違うぞ……」
「何が?」
「私は、ただサボっていただけだ」
いや……サボっている事は、決してほめられたことではないのだが……
「違うぞ! ダモンが怖くて、隠れているのでは、ないのだからな……」
あ!
そういえば、以前キラはダモンさんに、こっぴどく怒られたとか……
しかし、この怯えようは、尋常じゃないな。
あの温厚なダモンさんを、ここまで恐れるなんて……
いや、普段は怒らない人を怒らせると怖いと聞いた事あるけど、ダモンさんもそういう人なのかな?
どっちにしても、誤解なんだから、もう怖がる必要ないのに……
「いいから、出てこい」
「嫌だあ! 怖……いや、働きたくない」
「ニートみたいな事言ってないで、出てこい」
「出たら、負けだと思っている」
「出てこないなら、引きずり出すぞ」
「嘘だあ! 女に甘いお前が、そんな事するはずがない」
いくら、僕が女に甘くても、そのぐらいはするぞ。
ただ、それをするとキラの身体に触れなきゃならないし、そうすると、後でPちゃんとミールにゴチャゴチャ言われそうなので、できればやりたくないが……あ! この手があった。
「キラ。確かに、僕は女の子に乱暴はしない主義だ。しかし、君が今蹲っている席は、どこだと思っている?」
「え? 助手席だろ。それが何か?」
「助手席は、ミールの専用席だ。ミールが戻ってくる前に、そこをどかないと……」
「うわ! 気が付かなかった」
キラは、転がるように車から出てきた。
転がった先に、ダモンさんが立っていた。
「キラ・ガルキナ。この前は……」
「ひいい!」
ダモンさんのセリフが終わらないうちに、キラは悲鳴を上げて僕の背後に隠れた。
ていうか、しがみ付くな!
「キラ・ガルキナ。そう怯えないでくれ。この前は、怒ったりして済まなかった。ちゃんと君の話を聞いていれば、良かったのだが、私も帝国語には不慣れなものでな」
キラは、恐る恐る僕の背後から顔を出した。
「あの……怒ってないの……ですか?」
「ああ。謝らなければならないのは私の方だ。ネクラーソフに騙されたとはいえ、君には済まない事をした。許してほしい」
「そんな……許すなんて……そもそも私が地図を盗られたりしなければ……」
「いやいや、上司にそんな事をされるとは、思いもしなかっただろう」
ようやく、安心したのか、キラは僕の後ろから出てきた。
「分かってもらえれば、私は構いません」
「そうか。ところで、キラ・ガルキナ。私は今からミールを連れて女房の救出に行くのだが、手が足りないので君も来てくれないか?」
え? 僕には来なくていいと言ったのに……ひょっとして女手が必要なことでもあるのかな?
「え? いや、私は帝国を裏切るようなことは、してはならないと……」
「ミールには、私から話しておく。だから、先にミールのところに行っていてくれないか」
「はあ、分かりました」
キラは、森の中へ入って行った。
「ありがとう。それと、君にいくつか聞きたい事があるのだが」
「何でしょう?」
「ミールに聞いたのだが、君は二百年前の地球人から、複製された人間だそうだね? そして、この惑星には、君より先に再生された君がいるとか……」
「カルルの話では、そのようです」
「つまり、この惑星にはカイトという人間が二人いる事になるわけだが、この二人は魂も共有しているのかね?」
魂!? 考えてもいなかった。どうなんだろ?
そもそも、一つの魂で複数の身体を操れるものだろうか?
正直、分からんというしかない。
「ううん……魂の事は、神様にしか分からないと思いますが……ただ、コピー人間は姿形が同じでも、それぞれは別人だと思っています」
「そうか。それで、もう一人の君に会った事があるのか?」
「ありません。本当にいるのかだって分からない」
「では、すでに死んでいる可能性もあるのだね?」
「ああ、それは考えてなかったけど……でも、そういう事もありえますね」
ダモンさんは、しばし考え込んでいた。
いったい、どうしたのだろう?
急に、ダモンさんは、何かを探すかのようにキョロキョロと周囲を見回した。
「ところで、ここに、キラ・ガルキナが来ていると聞いていたが……」
「え? キラなら……あれ?」
さっきまで、ここにいたのに……
「Pちゃん。キラは?」
「あそこにいます」
Pちゃんは、車の方を指差した。
助手席の扉が、半ドアになっている。
どうしたんだ?
ドアを開くと、キラはこっちに尻を向けて蹲り、ガタガタと震えていた。
「キラ!? 気分でも悪いのか?」
「ち……違うぞ……」
「何が?」
「私は、ただサボっていただけだ」
いや……サボっている事は、決してほめられたことではないのだが……
「違うぞ! ダモンが怖くて、隠れているのでは、ないのだからな……」
あ!
そういえば、以前キラはダモンさんに、こっぴどく怒られたとか……
しかし、この怯えようは、尋常じゃないな。
あの温厚なダモンさんを、ここまで恐れるなんて……
いや、普段は怒らない人を怒らせると怖いと聞いた事あるけど、ダモンさんもそういう人なのかな?
どっちにしても、誤解なんだから、もう怖がる必要ないのに……
「いいから、出てこい」
「嫌だあ! 怖……いや、働きたくない」
「ニートみたいな事言ってないで、出てこい」
「出たら、負けだと思っている」
「出てこないなら、引きずり出すぞ」
「嘘だあ! 女に甘いお前が、そんな事するはずがない」
いくら、僕が女に甘くても、そのぐらいはするぞ。
ただ、それをするとキラの身体に触れなきゃならないし、そうすると、後でPちゃんとミールにゴチャゴチャ言われそうなので、できればやりたくないが……あ! この手があった。
「キラ。確かに、僕は女の子に乱暴はしない主義だ。しかし、君が今蹲っている席は、どこだと思っている?」
「え? 助手席だろ。それが何か?」
「助手席は、ミールの専用席だ。ミールが戻ってくる前に、そこをどかないと……」
「うわ! 気が付かなかった」
キラは、転がるように車から出てきた。
転がった先に、ダモンさんが立っていた。
「キラ・ガルキナ。この前は……」
「ひいい!」
ダモンさんのセリフが終わらないうちに、キラは悲鳴を上げて僕の背後に隠れた。
ていうか、しがみ付くな!
「キラ・ガルキナ。そう怯えないでくれ。この前は、怒ったりして済まなかった。ちゃんと君の話を聞いていれば、良かったのだが、私も帝国語には不慣れなものでな」
キラは、恐る恐る僕の背後から顔を出した。
「あの……怒ってないの……ですか?」
「ああ。謝らなければならないのは私の方だ。ネクラーソフに騙されたとはいえ、君には済まない事をした。許してほしい」
「そんな……許すなんて……そもそも私が地図を盗られたりしなければ……」
「いやいや、上司にそんな事をされるとは、思いもしなかっただろう」
ようやく、安心したのか、キラは僕の後ろから出てきた。
「分かってもらえれば、私は構いません」
「そうか。ところで、キラ・ガルキナ。私は今からミールを連れて女房の救出に行くのだが、手が足りないので君も来てくれないか?」
え? 僕には来なくていいと言ったのに……ひょっとして女手が必要なことでもあるのかな?
「え? いや、私は帝国を裏切るようなことは、してはならないと……」
「ミールには、私から話しておく。だから、先にミールのところに行っていてくれないか」
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キラは、森の中へ入って行った。
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