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第十六章

カートリッジは何処に?

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 第七層の広さは、第三層と同じくらい。

 その構造は第六層のような同心円状通路が二つと、その同心円の中央にある円形広場から、八方向へ広がる放射状通路からなる。

 第七層に送り込んだドローンは、最初に中央広場に向かわせた。

 レアメタル・カートリッジは地下七階にあるとレム神は言っていたが、この階層だけでも結構広い。

 いったいどこにあるのだ?

 ここはジジイに聞くのが手っ取り早いか。

「わしらがここを使っていた頃、マテリアルカートリッジの倉庫は傾斜路の出口から中央広場を挟んで反対側の部屋にあったぞ」
「なんだってそんな奥まった場所を?」
「知らん。わしがマトリョーシカ号からこの惑星に降りた時点で、カートリッジはそこに運び込まれておった」

 そこって、地下施設の一番奥だよな。

 まあ、大切な物をしまっておくにはいいところかもしれないが、荷物を運び込むのが大変だろうに……

「ただし、今でもそこを使っているのかは分からぬがのう」

 まあ、確かにそうだな。とにかく、最初にその場所を探して、違ったら別の場所を……ん?

「芽依ちゃん。ドローンを止めて」
「はい。どうしたのですか?」
「今、映像に何かがチラっと映ったんだ。僕の見間違いでなければ、あれは……」

 人間だった。

 みずから流したと思われる赤い血溜まりの中に、二十歳ほどの若い男性兵士が仰向けに倒れていたのだ。

 胸と腹に銃撃を受けた痕がある。

 ドローンを近づけてみると、まだ生きてはいたが虫の息。

 それにしてもこの顔は!

「レムのクローン人間?」

 そう言ってからジジイに視線を向けると、ジジイは頷いてから答えた。

「うむ。レム君のクローン人間じゃな。という事は、接続されていると考えた方がよいじゃろう」

 兵士は端正な顔立ちに苦悶の表情を浮かべ、何かを呟いていた。

「芽依ちゃん。ドローンを口元に近づけて音声を拾って」
「はい」

 ドローンが拾った帝国語の呟きが、日本語に翻訳されてスピーカーから流れる。

『違う……俺は……操られてなんか……いない』

 操られて?

 この兵士を操っている疑似人格も、自分が疑似人格だという自覚がないようだ。

 いや待てよ。ここはプシトロンパルスが届かないはず。

 接続は切れているのでは?

『俺は……俺は……』

 そこで兵士は事切れた。

 遠くから、銃声が聞こえてきたのはその時。

「芽依ちゃん。ドローンを銃声の方へ」
「はい」

 ドローンは内側の環状通路に入って行く。

 程なくして銃撃戦の現場に遭遇した。

 帝国軍同士の仲間割れか?

 十代前半くらいの少年兵三名が、積み上げた土嚢に隠れて銃撃を防いでいた。

 時折、少年兵たちは土嚢から身を乗り出して撃ち返している。

 後ろの方では、一人の少年兵の遺体が転がっていた。

 いったいこれは、どういう状況だ?
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