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第十六章
第七層へ
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「二人とも、放してくれ。もう落ち着いたから」
芽依ちゃんと橋本晶は僕の腕を放した。
時計を見ると、かなりの時間が経っている。
「時間がかかりすぎたな。芽依ちゃん、帝国軍の様子はどうだい? そろそろ地雷原を越えてくると思うのだが」
「それが、さっぱり動きがないのです」
「動きがない?」
「地雷原には、近づこうともしません」
どういうつもりだろう?
「まあいい。地雷原を越えて来ないのなら、予定通り第七層へ向かうまで。だが、その前に……」
僕は捕虜にした女性兵士たちの方を振り向いた。
一瞬、彼女たちの表情に怯えが浮かぶ。
「今から君たちを釈放する。猿ぐつわを外すから、くれぐれも舌を噛んだりはしないでくれ」
猿ぐつわを外された女性兵士たちは、一斉に質問を始めた。
「釈放って……?」「何を企んでいるのよ?」
「別に何も企んでなどいない。言葉通りの意味だ」
「嘘よ! 何か、ウラがあるのでしょ!」
「第一、尋問もしないで釈放なんてあり得ないわ」
彼女たちは、ミールの能力を知らないようだな。
「尋問ならもう済んでいる。必要な情報は、君たちが意識を失っている間に、君たちの脳から直接取り出した」
まあ、それは嘘だけど……ミールの能力をわざわざ教えてやる必要はないし……
「脳から直接?」「そんな事できるわけないわ」
「できないと思っているのか?」
二人は押し黙った。実際にブレインスキャナーという機器を使えば可能なのだが、ここにそんな装備はない。
しかし、彼女たちは地球の科学ならもしかして? と思う事だろう。
「とにかく、君たちは用済みだ。もう帰っていいよ」
「用済みって!」「その言い方ムカつく」
面倒くさい子たちだなあ。
「悪かった。とにかく尋問は済んだので、もうお引き取り下さい」
「尋問が終わったら、私たちを性奴隷にするのじゃなかったの?」
はあ? するわけないだろう。
「いったい、そっちでは僕の事をどのように聞いていたのだ?」
「どうって……カイト・キタムラは超絶倫のドスケベで、女性兵士を捕虜にしては性奴隷にしていると……」
「部下は巨乳美女ばかりで、毎晩交代で彼女たちに夜伽をさせていると……」
あのなあ……
「隊長。そうだったのですか? 私は、まだ夜伽に呼ばれていませんが」
「橋本君。話をややこしくしないでくれないかな」
「すみません。ところで彼女たちを釈放するのはいいのですが、帝国軍陣地の方へ続く通路は地雷原で塞がっていますよ」
「分かっている。彼女たちは第一層から出てもらう」
「第一層から? しかし、それではテントウムシを使う事に……」
「いや、作戦を急ぐのでテントウムシを捕虜輸送には使えない。彼女たちには、第一層まで徒歩で行ってもらう」
「徒歩で? 大丈夫でしょうか?」
「別に死の行軍みたいに、炎天下を百キロ以上も歩かせるわけじゃない」
「いえ、距離はともかく地下施設は迷路ですし、上層は明かりがありません。道に迷うのではないかと」
「大丈夫。テントウムシは使えないが、輸送ロボットを案内につける」
そんな事を話している間に、ドローンは傾斜路内に入っていった。
「芽依ちゃん。傾斜路内の様子はどうだい?」
「入り口付近に、動けなくなったミールさんの分身体がいた他は何もいません」
待ち伏せは無かったのか。
捕虜を上層へ送り出した後、僕たちは中央広場の陣地を引き払い傾斜路へと向う。
傾斜路に着いた時には、ドローンは傾斜路の最下部まで来ていた。
そこまで行ったのに、ドローンは敵の姿を確認していない。
僕は傾斜路に入る前に周囲を見回した。
やはり来ていたな。
とりあえず、今は気がつかないふりをして、みんなの方を向き直った。
「さて、いよいよこれが最後の傾斜路だ。僕はこれから芽依ちゃんとPちゃん、ミクと一緒に最下層に降りてエラを倒し、カートリッジを手に入れる。その前後で、レムは何らかの手段でミクを拉致しようとするはずだ」
言い終わってから、僕はミールに向かってウインクした。
「ミクちゃんを守る方法は、何か考えてありますか?」
ミールは、打ち合わせてあった通りの質問をしてくれた。
「敵の出方は分からないが、ミクはテントウムシの中にいるので通常の歩兵では手が出せない。考えられるのは、スパイダーのようなメカで、テントウムシごと拉致する可能性だ。だから、スパイダーが出てきたら、僕と芽依ちゃんでガードを固める」
「分かりました。では、あたしはキラとハシモトさんと一緒にここを死守します」
「ミール。死んではダメだよ」
「はーい」
ちらっと視線を変えると、さっき物影に隠れていたヤギが逃げていく後ろ姿が見えた。
もちろん、今行ったミールとの会話はヤギを通してレム神に聞かせるのが目的。
さて、これを聞いてレム神はどう動くか?
僕たちは、第七層へ続く傾斜路への扉を開いた。
芽依ちゃんと橋本晶は僕の腕を放した。
時計を見ると、かなりの時間が経っている。
「時間がかかりすぎたな。芽依ちゃん、帝国軍の様子はどうだい? そろそろ地雷原を越えてくると思うのだが」
「それが、さっぱり動きがないのです」
「動きがない?」
「地雷原には、近づこうともしません」
どういうつもりだろう?
「まあいい。地雷原を越えて来ないのなら、予定通り第七層へ向かうまで。だが、その前に……」
僕は捕虜にした女性兵士たちの方を振り向いた。
一瞬、彼女たちの表情に怯えが浮かぶ。
「今から君たちを釈放する。猿ぐつわを外すから、くれぐれも舌を噛んだりはしないでくれ」
猿ぐつわを外された女性兵士たちは、一斉に質問を始めた。
「釈放って……?」「何を企んでいるのよ?」
「別に何も企んでなどいない。言葉通りの意味だ」
「嘘よ! 何か、ウラがあるのでしょ!」
「第一、尋問もしないで釈放なんてあり得ないわ」
彼女たちは、ミールの能力を知らないようだな。
「尋問ならもう済んでいる。必要な情報は、君たちが意識を失っている間に、君たちの脳から直接取り出した」
まあ、それは嘘だけど……ミールの能力をわざわざ教えてやる必要はないし……
「脳から直接?」「そんな事できるわけないわ」
「できないと思っているのか?」
二人は押し黙った。実際にブレインスキャナーという機器を使えば可能なのだが、ここにそんな装備はない。
しかし、彼女たちは地球の科学ならもしかして? と思う事だろう。
「とにかく、君たちは用済みだ。もう帰っていいよ」
「用済みって!」「その言い方ムカつく」
面倒くさい子たちだなあ。
「悪かった。とにかく尋問は済んだので、もうお引き取り下さい」
「尋問が終わったら、私たちを性奴隷にするのじゃなかったの?」
はあ? するわけないだろう。
「いったい、そっちでは僕の事をどのように聞いていたのだ?」
「どうって……カイト・キタムラは超絶倫のドスケベで、女性兵士を捕虜にしては性奴隷にしていると……」
「部下は巨乳美女ばかりで、毎晩交代で彼女たちに夜伽をさせていると……」
あのなあ……
「隊長。そうだったのですか? 私は、まだ夜伽に呼ばれていませんが」
「橋本君。話をややこしくしないでくれないかな」
「すみません。ところで彼女たちを釈放するのはいいのですが、帝国軍陣地の方へ続く通路は地雷原で塞がっていますよ」
「分かっている。彼女たちは第一層から出てもらう」
「第一層から? しかし、それではテントウムシを使う事に……」
「いや、作戦を急ぐのでテントウムシを捕虜輸送には使えない。彼女たちには、第一層まで徒歩で行ってもらう」
「徒歩で? 大丈夫でしょうか?」
「別に死の行軍みたいに、炎天下を百キロ以上も歩かせるわけじゃない」
「いえ、距離はともかく地下施設は迷路ですし、上層は明かりがありません。道に迷うのではないかと」
「大丈夫。テントウムシは使えないが、輸送ロボットを案内につける」
そんな事を話している間に、ドローンは傾斜路内に入っていった。
「芽依ちゃん。傾斜路内の様子はどうだい?」
「入り口付近に、動けなくなったミールさんの分身体がいた他は何もいません」
待ち伏せは無かったのか。
捕虜を上層へ送り出した後、僕たちは中央広場の陣地を引き払い傾斜路へと向う。
傾斜路に着いた時には、ドローンは傾斜路の最下部まで来ていた。
そこまで行ったのに、ドローンは敵の姿を確認していない。
僕は傾斜路に入る前に周囲を見回した。
やはり来ていたな。
とりあえず、今は気がつかないふりをして、みんなの方を向き直った。
「さて、いよいよこれが最後の傾斜路だ。僕はこれから芽依ちゃんとPちゃん、ミクと一緒に最下層に降りてエラを倒し、カートリッジを手に入れる。その前後で、レムは何らかの手段でミクを拉致しようとするはずだ」
言い終わってから、僕はミールに向かってウインクした。
「ミクちゃんを守る方法は、何か考えてありますか?」
ミールは、打ち合わせてあった通りの質問をしてくれた。
「敵の出方は分からないが、ミクはテントウムシの中にいるので通常の歩兵では手が出せない。考えられるのは、スパイダーのようなメカで、テントウムシごと拉致する可能性だ。だから、スパイダーが出てきたら、僕と芽依ちゃんでガードを固める」
「分かりました。では、あたしはキラとハシモトさんと一緒にここを死守します」
「ミール。死んではダメだよ」
「はーい」
ちらっと視線を変えると、さっき物影に隠れていたヤギが逃げていく後ろ姿が見えた。
もちろん、今行ったミールとの会話はヤギを通してレム神に聞かせるのが目的。
さて、これを聞いてレム神はどう動くか?
僕たちは、第七層へ続く傾斜路への扉を開いた。
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