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第十六章

自分の罠は『巧妙』で、僕の罠は『卑劣』かい!

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「姫の事情はだいたい分かりました。それで、先ほど僕らが罠にハマったと言っていましたが、僕らはどんな罠にハマったというのですか? 今一つ、罠にハマったという実感がないのですが……」

  ミールとキラの分身体が消えただけで、姫とその部下四人が縛られたままの状況は全然変わらないのだが……

「ふふふ。よいじゃろう。教えてやるからありがたく思え。ここで妾の率いていた部下は四人だけ。少なすぎるとは思わなかったか?」
「思いましたが」
「帝国軍のほとんどはおまえの卑劣な罠にかかって、海岸線で足止めを食らっているが……」

 自分の罠は『巧妙』で、僕の罠は『卑劣』かい!

「ここに残した戦力はこれだけではない。他はどこへ行ったと思う? 知りたいか? 知りたいであろう。もっとも、今更知ったところで手遅れだがな。他の兵士達は今頃……」
「山頂の基地を、攻撃に行ったのでしょ?」

 いきなり正解を言われて、姫の顔は硬直する。

「違いましたか?」
「い……いや、違わないが……なぜ分かったのじゃ?」
「ここには、二個小隊が残っているという情報はすでに掴んでいます。それなのに、五人しかいなかった。残りの戦力は山頂へ向かったという事は、容易に想像できましたから……」

 つーか、なぜ分からないと思った?

 エリートと言っても所詮は偏差値秀才か。

「想像できただと? だ……だったら、なぜここにとどまっている? なぜ基地へ救援に向かわない?」
「必要ありませんので。基地では、別働隊を迎え撃つ準備を済ませてからここへ来ましたから」
「バカな! さっきキラ・ガルキナとカ・モ・ミールの分身体が一斉に消えたではないか!」
「消えましたが、なにか?」
「何かって? あれは、我々の別働隊が山頂基地に攻撃をかけたからだろ? その攻撃で分身体を操っている術者本人が死んだから分身体が消えた。そうなのだろう?」

 やっぱり、そう思っていたのか。

 だけど、残念。

 ミールとキラは、山頂基地が攻撃を受けたら、ただちにこっちの分身体を消して、向こうで新たな分身体を出して防衛に回す手はずになっていたのだ。

「そんなバカな。別働隊は残りのロケット砲をすべて持って行ったし、コブチのロボットスーツもある。負けるはずがない」
「どうやら、姫様はレム神の目的を知らないようですね」
「どういう事じゃ? レム様の目的は、おまえ達の殲滅……」
「いいえ。レム神の目的は、我々の仲間の一人を拉致する事だったのですよ」
「なに!?」
「したがって、別働隊は、これから拉致する者を殺す可能性のある強力な武器は使えない。ロケット砲は持って行くだけ無駄だったという事です」

 もちろん、レム神の本当の目的を知らないマルガリータ姫が別働隊の指揮を取っていたら、ロケット砲を撃ちまくっていただろうけど、実際に指揮をしていたのは小淵。

 ミクを殺しかねない攻撃をするはずがない。

「し……しかし、ロケット砲がダメでも、こっちにはコブチのロボットスーツが……」

 芽依ちゃんが声をかけてきたのはその時……

「北村さん。アーニャさんから連絡です。山頂基地を攻撃にきた帝国軍は、ほぼ殲滅しました」
「味方に怪我人は?」
「全員無事です。それともう一つ朗報が。小淵さんの生け捕りに成功しました」
「そうか。お疲れさまでしたと伝えておいて」

 姫の方を振り向くと、不思議そうな顔をしていた。

「なあ、カイト・キタムラ。おまえの部下は、今なんと言っていた?」

 芽依ちゃんとの会話は日本語だから、姫には分からないのだが、教えるべきかどうか?

「姫。知らない方が幸せですが、聞きたいですか?」
「そんな思わせぶりな言い方されたら、余計に気になるじゃろう!」
 
 そうだろうな。

 今、芽依ちゃんから聞いた事を翻訳して聞かせてみた。

「あは……あは……ははは……妾は、なんのために……」

 ああ……壊れちゃった。だから、聞かない方が幸せだと言ったのに……

 そのまま姫は、パタッと地面に倒れる。

 息はあるので、死んではいないようだ。

 緊張の糸が切れて、気を失ったのだろう。
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