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第十六章

フーファイターを落とせ2

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 やったか?

 いや、無理だった。

 爆炎の中からフーファイターが飛び出してくる。

 機体に無数の破片が刺さっているから、まったく無傷という訳ではないが、飛行には支障ないようだ。

 だが、アーニャの操縦する菊花が、まだ攪乱膜の中を飛んでいる。

『クソ! 先に飛行船を片付けてやる』

 飛行船ドローンの一機が、レーザーを受けて爆発。

 その直後、フーファイターの機体の一部が吹っ飛んだ。

 そのまま黒煙を吐きながら、墜落していく。

 海面付近で、フーファイターは大爆発した。

 その様子を、発令所のモニターで見ていたミーチャが振り向く。

「すごい! フーファイターをやっつけちゃった。でも、どうやって?」

 ふ! こんなこともあろうかと、密かに開発していた……と言いたいところだが、実際にこれを用意したのはアーニャで、僕は仕組みも分かっていない。

「飛行船ドローンに、位相共役鏡フェーズ・コンジュゲーション・ミラーという装置を取り付けてあったんだ」
「なんですか? それ」
「仕組みは僕もよく分からんが、アーニャが言うにはレーザーを元来た方向へ正確に跳ね返す装置だそうだ」
「つまり、レーザーを鏡で跳ね返したと?」
「まあ、簡単に言うならそんな事だな」

 アーニャから最初にその話を聞いた時は、コーナーキューブ(アポロ宇宙船が月面に設置した、レーザーを使って月と地球の距離を測る装置)のような装置かと思っていたが、調べるとまるっ切り違うものだった。
 
 一応、位相共役鏡の原理は僕の生まれる前からあったらしいが、兵器として実用化されたのはアーニャの時代。
 
 僕の時代ではまだ研究段階だったようだ。

「すべての飛行船ドローンには、この装置が装備してあったんだ。だから、フーファイターが飛行船ドローンにレーザーを撃った時点で勝負はついたんだよ。もっとも、レーザーを受けた飛行船ドローンは破壊されてしまうけどね。破壊される前の僅かの時間に跳ね返したレーザーで、フーファイターと刺し違えたのだよ」

 これがアーニャの用意したフーファイター対策だったわけだ。
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