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第十六章

フーファイターを落とせ1

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 アーニャ、マー 美鈴メイリン、そしてPちゃんの三人が操縦する三機のジェットドローン菊花が、ベイス島へ突入していく映像が、発令所のメインモニターに映し出されていた。

 この映像は、ジェットドローンの後方に配置されている飛行船ドローンが撮影したもの。

 ほどなくして、フーファイターが迎撃に上がってくる。

 同時に、矢納さんから通信が入った。

『北村! 学習しない野郎だな。ジェットドローンなんて何機来ようが、フーファイターの敵じゃねえんだよ』

 アーニャが返信を返す。

『はたしてそうかしら』
『む? その声、北村じゃねえな。何者だ?』
『私は、アーニャ・マレンコフ。あなたごときの相手、私で十分よ』
『てめえか。三十年前に、レムから逃げ出したという女は』
『二十年前よ』

 こんなところでもサバ読むのね……

『なんでもいい! どこからでも、かかってきやがれ!』
『ではお言葉に甘えて』

 菊花から、次々とミサイルを放っていく。
 
 ただし、一斉射撃ではなく、一発ずつ間隔をおいて発射していた。

 兵法では、戦力の逐次投入は大いなる過失と言われるが、ミサイルを一斉に撃ってもフーファイターを落とせない事は前回の戦いで分かっている。

 ミサイルを小出しで撃っているのは、フーファイターを消耗させるのが目的。

 あらゆる方向から飛んでくるミサイルを、フーファイターは重力制御とレーザーで迎撃していた。

『ちまちま撃っていないで、まとめてかかって来い』
『これが私のやり方よ』
『クソったれ!』

 ミサイルを撃ち切った三機の菊花は、フーファイターとは一定の距離を保ったまま対峙していた。

『どうした? もう終わりか?』
『終わるのではないわ。始まるのよ』
『なに!?』

 その直後、後方で控えていた六機の飛行船ドローンがミサイルを放ってきたのだ。

 飛行船ドローンは、速度は遅いが積載量が大きい。

 ドローンから釣り下げられたミサイルポッドには、十六発のミサイルが収納されている。そのポッドから、次々とミサイルを発射していた。

『クソ! のろまの飛行船など、すぐに落としてやるぜ』

 フーファイターは加速して、飛行船ドローンの方へ向かう。ミサイルを撃破しながら……

 そのタイミングで、今まで待機していた三機の菊花が一斉に襲いかかってきた。

『なに!?』

 その時には撃破したミサイルが、大量の金属箔をまき散らしてフーファイターの後方にレーザー攪乱幕を形成していた。

 三機の菊花は、攪乱膜の中を進んでいく。

「クソ」

 フーファイターは、ミサイルの迎撃をレーザーに切り替え、重力制御を菊花攻撃に回した。

 Pちゃんの菊花が潮汐作用でバラバラになる。

 その間に馬美鈴の菊花が、バルカン砲の射程内に飛び込んだ。

 その菊花もすぐに重力制御でバラバラになるが、その前に放った砲弾の一発が、フーファイターの機体を近接VT信管の範囲内に捕らえる。

 フーファイターは爆炎に包まれた。
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