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第十五章

ギルティ

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 全員ぶっ殺すとは言ったものの、それは無理だったようだ。

 ダニに案内された部屋は、どれも客の姿はすでに無い。

 ただ、客の相手をさせられていた女の子たちが残されているだけ。

 男の子も若干いた。

 まあ、客がいないのも当然だな。

 これだけ騒ぎになっているのに、気が付かないで残っていた奴の方がバカというもの。

 普通なら危険に気が付いて、さっさと逃げるだろう。

 とりあえず、残されていた子供たちに服を着せながら僕は先に進んだ。

 子供たちの何人かは、僕の後ろから付いてくる。

 だから、ますます遅くなる。

 とりあえず、廃工場内には敵はいないみたいだし、無線でミールたちに応援を頼んでおいた。

 まあ、敵も多少は残っているかもしれないが、こっちにはエラもキラもいるから大して問題にならないだろう。

「この部屋で最後だ」

 ダニに案内された最後の部屋の戸に手をかけた。

 ここもどうせ空振りだろう。とりあえず、残された子供だけでも助けて、ミールたちと合流しよう。

 と、思ったらここだけ客が一人残っていた。

 でっぷりと太った帝国人の中年男だ。

 僕は早速部屋へ入り、男の胸ぐらを掴んだ。
 
「まて! 俺が何をしたと言うのだ?」

 男は、自分がなぜこんな目にっているのか理解していないようだ。

 せめて、自分の罪だけは分からせてやろう。

 僕は部屋の中の、ある場所を指さした。

 そこでは、全裸にされた幼い帝国人の少女が泣いている。

「一応聞くが、この女の子を泣かせたのはおまえだな?」
「そうだが……泣かせてはいけなかったのか? 分かった。次からは、優しくするから……」

 次から? 何を言っている。おまえに次などない。

 だが、これだけは聞いておこう。

「あの女の子が町から拉致され、無理矢理男の相手をさせられていることは知っているな?」
「知っているが、それがどうした?」

 有罪ギルティ

「ブースト」

 ブーストパンチを食らった男は、そのまま壁まで吹っ飛んでいく。

「グハ!」

 男は血反吐を吐いて床に倒れ、そのまま動かなくなった。

 泣いている女の子に服を着せてから、僕は倒れている男を指さしてダニに質問した。

「一応聞くが、こいつの父は何者だ?」
「アーテミスの防衛大臣」

 なるほど。
 
 アーテミスの町には、自警団とは別に正規軍もあるはず。

 それにも関わらず、なぜこの盗賊団が放置されていたのか、疑問に思っていたが……

「こいつに女の子を抱かせていたのは、金のためだけじゃないな。こいつの親の力を使って、アーテミス軍が討伐に来るのを、止めさせていたのだろう?」

 ダニは無言で頷く。

 やはりそうか。

 おそらくこいつだけじゃあるまい。他にも有力者の子弟に女の子を抱かせて、アーテミスの軍隊を骨抜きにしていたのだろう。

「今日来ていた客は、こいつで最後と言ったな?」
「そうだ。他は逃げたのだろう」
「顧客名簿はあるか?」
「そんな物はない」
「それは残念だな。顧客名簿があれば、おまえを生かしておいてやるつもりだったのだが……」
「ああ! 待て! そう言えば、作ってあったな」

 最初から、素直に出せばいいものを……

 顧客名簿を手に入れた僕は、そのデータを《海龍》へ送った。

「そんな事をして、どうする?」
「知れたこと。大量コピーしてアーテミスの町にばらまく」

 その結果、政治的混乱が起きるかもしれない。

 しかし、うみは早めに出した方がいい。

 Pちゃんから連絡があったのは、廃工場から出てミールたちと合流した時の事。

『ご主人様。廃工場から逃げ出した盗賊たちが、一ヶ所に集結しつつあります』
「どの辺りに?」
『アーテミス川の対岸にある丘です。今、画像データを送ります』

 なるほど、対岸にもう一つ拠点があったわけか。

 画像を拡大してみると、丘全体がとりでのようになっていた。

 そこに盗賊たちが入っていくのが見える。

 どうやら、あっちが本丸のようだな。

「Pちゃん。あの丘に蛇型ドローンを送り込んでくれ」
『了解しました』 

 通信を切って、ダニの方に顔を向けた。
 
「対岸の丘にも、拠点があったようだな」
「な……なんの事かな?」

 あくまでもとぼけるのか。

 アーテミスの自警団が到着したのはその時だった。
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