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第十五章

三年前に帝国軍が敗北した原因は僕だった

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「待って……」

 ダニの案内で、他の客を始末しに出かけようとした矢先、背後から少女の声に呼び止められた。

 振り向くと、さっき部屋の中で泣いていたナーモ族の少女が、部屋の入り口からこっちをのぞいている。

 いけない、この子を放置していくわけには行かなかった。

 しかし、下手にロボットスーツ姿で近づくと怖がらないかな?

 とりあえず、女の子を驚かせないようにと、ゆっくりと歩み寄った。

 女の子は不思議そうな目で僕を見ているが、怖がっている様子はないな。

「金の鎧……」

 ん? ロボットスーツの事を言っているのか?

「あなた……勇者カイトなの?」

 そうだった! 僕は、ここでは有名人だった。今回はそれが幸いしたな。

 正直、『勇者』なんて言われるのは、小恥こっぱずかしいのでイヤだったのだが、今回はそれが幸いした。

「そうだよ。お嬢ちゃん」

 その途端、少女はボロボロと涙を流し始めた。

「信じていた。きっとまた、勇者カイトが助けに来てくれるって……」

 少女は、ヨロヨロと僕の方へ歩み寄ってきて、僕の足にしがみついてきた。

 とりあえず、味方だという事は理解してくれたようだ……ん? 今、この子『また』って言わなかったか?

 僕がアーテミスに来るのは、初めてのはずだが……

 まさか!? 

 ダニの方を振り向く。

「おい。おまえらは三年前に、ここへ攻め込んだ帝国軍の残党だと聞いているが、そうなのか?」
「ああそうだ。悪いか?」
「三年前。帝国軍はアーテミス軍に破れたと聞いているが、敗北の原因はなんだ?」
「はあ? 何言ってやがる! おまえが原因だろうが」
「僕が?」
「ああ! 殺した奴の事など、イチイチ覚えてられるかとでも言うのか?」

 そんなつもりはないが……どうやら、この事は先代の僕が関わっていたらしいな。

「三年前のあの日、もう少しでアーテミスを落とせるという矢先、リトル東京から飛んできた飛行機械からおまえらが降りて来て、俺たちを殲滅したんだろうが!」

 やっぱり、そうだったのか。

 ずいぶんとこの町で僕の事が知れ渡っていると思ったら、そういう事だったのだな。

「帝国へ逃げようにも、乗ってきた船は全部おまえらに沈められ、仕方なく荒野に逃げ出したが、食う物も水もなく仲間は次々と餓死していった。仕方なく、生き残りを引き連れてアーテミス近辺まで戻ってきて、盗賊をやりながら細々と生きながらえ、ようやくこれからだというのに、またおまえが来やがって……」

 そいつは残念だったな。

 まあ、文句はレムに言え。

 あいつがおまえにミクを拉致させなければ、僕はおまえらに気がつく事もなく通り過ぎていったかもしれないのに……

 それにしても、芽依ちゃんなら、その時の事を知っているはずだよな? なんで何も言わなかったのだろう?

 あるいは、上陸するまでは、三年前に来た町だと気がつかなかったのかもしれないな。

 とりあえず、少女には適当な服を着せてから、芽依ちゃんに連絡を取ってみた。

『すみません。私もさっき気がついたのです。アーテミスが、三年前に私たちが帝国軍と戦った町だって。船から見たときは、別の町かと思っていました』

 やっぱり。

「ところで芽依ちゃん。ミールたちとは合流したかい?」
『はい。ここにいますけど』
「そうか。実は廃工場の中に誘拐された子供たちがいたが、衛生状態が非道ひどいんだ。レイプされた女の子もいる。アーテミスの自警団には、急いで救援にきてほしいと連絡してくれないか」
『分かりました』

 通信を切ってから、僕は女の子の方を振り向く。

「もうすぐ、アーテミスの人たちが助けに来るから、それまでこの部屋に隠れていてくれないかな」
「連れて行ってくれないの?」
「ここには、まだ悪い人たちがいるんだ。僕はそいつらを退治に行かなきゃならないので、付いてきたら怖い目にうよ」
「邪魔しないから、連れて行って。一人でいるのはイヤ」

 困ったな。いや、待てよ。

 この先も、この子のようにレイプされている子がいるはずだ。

 そんな子たちに、僕が味方だと分かってもらうにはこの子がいてくれた方が助かるな。

「いいだろう。ただし、僕の言いつけはちゃんと聞くんだよ」

 頷いた少女を肩に乗せ、僕はダニの方を振り向く。

「待たせたな。次の客のところへ、案内してもらおうか」
「とほほ」

 ダニは渋々と歩き出した。 
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