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第四章

悪夢

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(海斗視点)
 鬱蒼とした森の中に、その集落はあった。

 やっとたどり着いた!

 リトル東京。
 エシャーの言うとおり、小さな集落だ。
 建物は、被災地でよく使われている仮設住宅みたいなのが三十棟ほど……
 建物の一つから、人が一人出てくる。

 あれは?

 白衣の女?

 東京で、僕をスキャナーにかけた女!?
「北村海斗さん。おひさしぶりです。もっとも、どちらもコピー人間ですけど……」
「あんた。自分のデータまで、とったのか?」
「ええ。そんな事より、あなたをお待ちしていた方がいます。こちらへ」
 彼女に促されるまま、僕は仮設住宅の中に入った。
 暗い部屋だ。
 奥にベッドが二つあり、その一つに誰かが寝ている。
「僕を呼んだのは、あんたか?」
 返事はない。
 不意に両腕を捕まれた。
 え? Pちゃん?
 二人のメイドさんが、両脇から僕の腕を掴んでいる。
 三人目のメイドさんが出てきて、両足を捕まれ持ち上げられた。
「何をする!? やめてくれ!」
 やめてくれそうにない。
 僕は強制的にベッドに寝かされ、拘束具で手足を固定された。
「よく来てくれたね。僕のスペアパーツ」
 その声は、隣のベッドからだった。
 隣に目を向ける。
「やあ」
 隣のベッドに横たわっていた男の顔は、紛れもなく僕だった。

「うわわわわ!!」

 眩しい明かりが、僕の目を襲う。
 手術灯か?
 いや……違う……太陽?
 あれ? 拘束されていたはずの手足が動く?
 ここは……?
 木と木の間に吊るしたハンモックの上で僕は寝ていた。
 そうだった。
 昨日たどり着いた川辺で、水素補給のために泊まり込んでいたんだった。
 それにしても、こんな夢見るのも、カルルの言っていた事がどうしても頭から離れないからだな。
 あの後、Pちゃんに聞いたが、ふつう臓器移植をやる時は、必要な臓器だけをプリントするから、人間一人丸ごとプリントするなどあり得ないそうだ。
 それで、納得したつもりだったのだが、どうしても心に引っかかってしまう。
「カイト」
 エシャーが、ハンモックの横に降りてきた。
「大キナ声、ドウシタノ?」
「エシャー。驚かしてごめん。怖い夢を見たんだ」
「怖イ、夢? 可哀ソウ、慰メテ上ゲル」
 え?
 エシャーは、僕の額に自分の額を擦り付けてきた。
 どうやらベジドラゴンは、こうやって仲間とスキンシップを取っているようだ。
「ご主人様! 今の悲鳴は、何事ですか?」
 Pちゃんが駆け寄ってきた。
「エシャーさん! ご主人様に、何をしているのです!」
 え? なんか誤解されたような……
 エシャーは僕から離れてPちゃんの方を向く。
「悪夢バライ、ノ、オマジナイ。イケナカッタ?」
「いけないも何も、ご主人様が悲鳴を上げているじゃないですか!?」
 えらい誤解だ!!
 僕はハンモッグから飛び降りて、Pちゃんの前に出た。
「さっきの悲鳴は、悪夢のせいだよ。エシャーはそれを聞いて……」
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