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第十四章

見て見ぬふりをされていた

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 その事が分かったのは、蛇型ドローンが砂州まで戻って来て、ケーブルに再接続してからの事。

 出発してから三時間後だ。

 再接続したドローンから、吸い上げたデータの中から、真っ先に問題の映像を確認した。

 ミールの分身体が帝国兵の前を横切る様子を……

 その映像はドローンのカメラが捉えたもの。

 二人一組で巡回中の帝国兵の三メートル手前を、身長三十センチほどのミールの分身体が駆け抜けたのだ。

 もちろん、帝国兵の持っていたカンテラの明かりが照らしている範囲内を横切ったのだから、暗くて見えなかったと言うことはない。

 実際に見えていたようだ。

 二人の帝国兵のうち一人が、横切ったミールを指さして帝国語で何かを叫んでいた。

 だが、もう一人の兵士が慌てて相棒の口を手で塞ぐ。

 その兵士は、相棒の顔に自分の顔を近づけて首を横にふり、帝国語で何かを言った。

 翻訳ディバイスを通してみる。

『いいか、俺たちは何も見なかった。ただ、このことは後でエステス殿に報告するのだ』

 なるほど……

「どういう事でしょう? カイトさん」
「どうやら、帝国軍は僕たちが偵察に来ていた事に、気がついていたようだ」
「「「ええ!?」」」

 これには、ここにいる全員が驚いた。
 
「と言っても、この前線基地が見つかったわけじゃない。気がついていたというより、予想していたというべきだろう」

 レーダーやソナー、ドローンで監視している中、北島へ人間が渡るのは不可能。電波管制をしているので、遠隔操作ドローンも使えない。

 そうなると、偵察に使えるのは自立ドローンかミールの分身体だ。

 そして僕たちは実際にそうした。

 その結果、地下では分身体のコントロールができない事が分かった。

「では、敵はその事をあたしたちに分からせるために……」
「ああ。地下施設で式神を使うには、ミク本人が地下へ行く必要がある。それを僕たちに分からせるために偵察を黙認していたという事だ」

 しかし、それが分かったとして僕たちはどうするかだな?

 地下への侵攻は、式神や分身体を使わないで済ますべきか?

 そもそも、なぜ地下では分身体がコントロールできないのだろう?

 そう言えば、ミクが《イサナ》の科学者に問い合わせると言っていたな。

「Pちゃん。ここで衛星通信は使えるかい?」

 Pちゃんは首を横に降った。

「残念ですが、村に置いてきた衛星通信用のアンテナを使わないと連絡は取れません」
「そうか。では夜が明けたら、すぐに村へ引き返そう」

 だが、夜が明けて川へ行ってみると、舟の上にフーファイターが居座っていた。
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