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第十四章

考えすぎではなかった

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 ミールが分身体とのコンタクトを再開できたのは、それから十分ほど後の事だった。

「あたしの分身体、ドローンに縛り付けられていました」

 誰がそんな事を? いや、そんな事できるのはPちゃんしかいないが、Pちゃんがなぜそんな事を?

 ミールとケンカになったのだろうか?

「Pちゃんに事情を聞いたのですが、地下施設に入ってから、あたしが何も喋らなくなったそうです。Pちゃんから話かけてきてもまったく返事がなく、そのうちあたしはドローンから落ちてしまったそうです」
「落ちたって? 怪我はなかったかい?」
「分身体だから、その心配はありませんよ」

 そうでした。

「ただ、あたしの分身体は落ちたまま、まったく動こうとしないので、Pちゃんはあたしをドローンに縛り付けて戻ってきたのです」

 だから、縛ったのか。向こうでケンカになったわけじゃないのだな。

 しかし、分身体が動かなくなったという事は……

「分身体のコントロールを遮る何かが、そこにあるという事かな?」
「あたしもそう思います」

 となると、ミクが《海龍》にいながら式神を地下施設に送り込む事は不可能という事か。

「カイトさん。困った事になりましたね」
「ああ。だけど、これが分かっただけでも収穫だよ。何も知らないまま突っ込んでいたら……」

 本当に、これは収穫なのだろうか?

 敵の目的がミクの拉致であるとしたら、ミクが《海龍》から出てこざるを得ない状況を作る必要がある。

 もし、地下施設の中にエラがいて、ミクしか対応できない事態になって、ミク本人が地下に入って式神をコントロールしなければならなくなったら、まさに敵の思うつぼ……

 まさか?

「ミール。Pちゃんに伝えてくれ。ドローンを草むらに隠すようにと」
「はーい」
「ドローンを隠したら、ミールの分身体だけ降りて、帝国兵の前を見えるように横切らせてくれ」
「そんな事をしたら……」
「帝国兵が捕まえにくるか、攻撃をしてくるだろうね。その際は分身体を消してくれ。Pちゃんには分身体の消滅を確認したら、こっちへ戻ってくるように伝えてほしい」
「分かりました。でも、カイトさん。なぜ、そんな事を」
「帝国兵の反応を見てみたいのだよ」
「反応?」
「普通なら、ミールの分身体を見つけたら捕まえるか、あるいは発砲してくるだろう。だが、もしそれをしないで見て見ぬふりをしていたら……」
「見て見ぬふり? なぜ、帝国兵がそんな事を?」
「僕の考えすぎかもしれないのだけどね……」

 考えすぎではなかった。
 
 僕の予想通り、帝国兵はミールの分身体を見ていながら何もしなかったのだ。
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