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第十三章
隊員宿舎1(回想)
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リトル東京の一角に防衛隊隊員宿舎がある。
小淵の部屋はその中にあった。
橋本晶がそこを訪れたのは、その日の夕方頃。
すでに防衛隊の勤務時間は終わって私服に着替えているのだが、彼女の私服は少々変わっていた。
桜色の着物を纏い緋色の袴を履いている和装なのだが、履物は草履ではなく革靴。ようするに大正時代の女学生姿。海斗の時代では、女子大生が卒業式で着る服装。
ただ、女学生と違うのはその腰に日本刀を帯刀している事……
彼女のオリジナル体は令和時代の高校生で剣道部員だったが、真剣を握った事はなかった。だが、この惑星上で再生されてからは、護身用に真剣を使うようになったのだ。
ロボットスーツで戦うときも、彼女だけは他の隊員と違い銃ではなく日本刀で戦っていた。
「失礼します」
古淵の部屋のドアを開くと、先に来ていた矢部が、リビングのソファから彼女を手招きしている。
「さあ、さあ。晶ちゃん。俺の隣に……なんなら膝の上でも……」
そんな戯けた事を言っている矢部に対して、橋本晶は無言のまま日本刀を抜いて、矢部の鼻先に突きつけた。
「ちょ! 晶ちゃん! そんな物騒なもの」
「矢部さん。ソファの左端に寄って下さい。私は右端に座ります」
「そんな……ソーシャル・ディスタンスなんて、パンデミックが起きているわけじゃなし……」
「パンデミックより、矢部さんのスケベエ病の方が問題です」
矢部はすごすごと左端に移動すると、橋本晶は右端に座り、矢部と自分の間にクッションを積み上げてアンチ・セクハラ防壁を築き上げた。
「そんなに警戒しなくても……」
そんな矢部を無言で睨みつける。その目は『これでも足りないぐらいだ』と語っていた。
言い合っている二人の前のテーブルに、小淵がホコホコと湯気を立てるコーヒーカップを二つ置く。
「まあ、コーヒーでも飲んで落ち着いて下さい」
二人が落ち着くのを待ってから、小淵は話し始めた。
小淵の部屋はその中にあった。
橋本晶がそこを訪れたのは、その日の夕方頃。
すでに防衛隊の勤務時間は終わって私服に着替えているのだが、彼女の私服は少々変わっていた。
桜色の着物を纏い緋色の袴を履いている和装なのだが、履物は草履ではなく革靴。ようするに大正時代の女学生姿。海斗の時代では、女子大生が卒業式で着る服装。
ただ、女学生と違うのはその腰に日本刀を帯刀している事……
彼女のオリジナル体は令和時代の高校生で剣道部員だったが、真剣を握った事はなかった。だが、この惑星上で再生されてからは、護身用に真剣を使うようになったのだ。
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「失礼します」
古淵の部屋のドアを開くと、先に来ていた矢部が、リビングのソファから彼女を手招きしている。
「さあ、さあ。晶ちゃん。俺の隣に……なんなら膝の上でも……」
そんな戯けた事を言っている矢部に対して、橋本晶は無言のまま日本刀を抜いて、矢部の鼻先に突きつけた。
「ちょ! 晶ちゃん! そんな物騒なもの」
「矢部さん。ソファの左端に寄って下さい。私は右端に座ります」
「そんな……ソーシャル・ディスタンスなんて、パンデミックが起きているわけじゃなし……」
「パンデミックより、矢部さんのスケベエ病の方が問題です」
矢部はすごすごと左端に移動すると、橋本晶は右端に座り、矢部と自分の間にクッションを積み上げてアンチ・セクハラ防壁を築き上げた。
「そんなに警戒しなくても……」
そんな矢部を無言で睨みつける。その目は『これでも足りないぐらいだ』と語っていた。
言い合っている二人の前のテーブルに、小淵がホコホコと湯気を立てるコーヒーカップを二つ置く。
「まあ、コーヒーでも飲んで落ち着いて下さい」
二人が落ち着くのを待ってから、小淵は話し始めた。
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