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第十三章
隊員宿舎2(回想)
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「すみませんね。急に呼び出したりして。実は隊長から緊急に頼まれた事がありましてね」
何があったのか? と二人が尋ねると、小淵はタブレットを差し出した。
タブレットの画面には一人の中年男性の顔が映っている。
「小淵君。この人はカルル・エステスの家を訪問した人物の一人だったね」
「そうです、矢部さん。名前が分からなかったので、リストには名称不明と記しておいたのですが……」
リトル東京の人口はかなり増えてきたが、そのほとんどがナーモ族や亡命帝国人などの現地人。
母船から降りてきたコピー人間はそれほど多くない。
しかし、全員の顔と名前を覚えられるほど少なくはなかった。
なので、このように顔を見ただけでは名前の分からない人物がいてもおかしくはないのだが……
「隊長がこの男の顔を見たとたんに、ひどく狼狽しまして……」
「狼狽? あの隊長が……」
「この人物が何者か、調べてほしいと言ってきたのです。なんでも隊長の古い知り合いに顔がよく似ているというのだけど……」
「隊長も人使い荒いな。俺達は探偵じゃないのだよ。ねえ、晶ちゃん」
「私、隊長のためなら、探偵でも隠密でもやります」
「おいおい……晶ちゃん」
「矢部さんが協力したくないのなら、協力しなくて結構です。私と小淵さんだけでやりますから」
「いや、別に協力しないとは言っていないけどさ……なんで君はそんなやる気満々なのかな? ひょっとして、隊長に惚れたの? ダメだよ。隊長は婚約しているのだから」
「別に恋愛感情があるわけじゃありません。私、隊長の役に立ちたいのです」
「はい、そうですか。なんで、隊長ばかりモテるんだろうね。ずるいよ。そのくせ、俺がちょっと女の子にちょっかいかけると、すぐに怒るんだから……」
それを聞いて小淵はあきれ顔に……
「矢部さん。あなたのやる事はちょっとどころの騒ぎじゃないでしょ。この前だって『マッサージして上げる』とか言って森田さんの背後から胸を揉んだりして、隊長に射殺されそうになったのを忘れたのですか?」
「胸を揉んだぐらいでそんな怒らなくても……ねえ、晶ちゃん……ひい!」
一瞬の早業で橋本晶の抜いた日本刀が、矢部の首筋にピタっと張り付いていた。
「私に同じ事をしたら、隊長の手を煩わせるまでもなく、私の手で矢部さんを三途の川の向こうに送って差し上げますのでお気をつけ下さい」
「気……気をつけます」
刀を鞘に納めた橋本晶に、小淵は困惑気味に言う。
「橋本さん。お気持ちは分かりますが、できれば護身用具はテザー銃か何かにしてもらえませんか。日本刀を使われては、後で掃除が大変なので……」
「ああ! 申し訳ありません。小淵さんのお部屋を血で汚してはいけませんね。次からは気をつけます」
「俺の命より、掃除の方が大事なのか!?」
「はい」「そうですけど、何か問題でも?」
二人にあっさりと頷かれて、矢部のリアクションは硬直してしまった。
「さて。どうでもいい話は、このくらいにして本題に入りましょう」
「どうでもいいのかよ」
矢部のどうでもいい呟きを無視して、小淵は話を続けた。
「隊長からやっとの事で聞き出したのですが、この人物と似ているという隊長の古い知り合いの名前は矢納というそうです。それ以外の情報はもらえませんでした。今は話したくないと言って……」
「それっぽっちの情報でどうやって探せと……小淵君。隊長には無理だと伝え……」
矢部のセリフを遮って橋本晶が意外な事を言う。
「私、この人知っています」
何があったのか? と二人が尋ねると、小淵はタブレットを差し出した。
タブレットの画面には一人の中年男性の顔が映っている。
「小淵君。この人はカルル・エステスの家を訪問した人物の一人だったね」
「そうです、矢部さん。名前が分からなかったので、リストには名称不明と記しておいたのですが……」
リトル東京の人口はかなり増えてきたが、そのほとんどがナーモ族や亡命帝国人などの現地人。
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しかし、全員の顔と名前を覚えられるほど少なくはなかった。
なので、このように顔を見ただけでは名前の分からない人物がいてもおかしくはないのだが……
「隊長がこの男の顔を見たとたんに、ひどく狼狽しまして……」
「狼狽? あの隊長が……」
「この人物が何者か、調べてほしいと言ってきたのです。なんでも隊長の古い知り合いに顔がよく似ているというのだけど……」
「隊長も人使い荒いな。俺達は探偵じゃないのだよ。ねえ、晶ちゃん」
「私、隊長のためなら、探偵でも隠密でもやります」
「おいおい……晶ちゃん」
「矢部さんが協力したくないのなら、協力しなくて結構です。私と小淵さんだけでやりますから」
「いや、別に協力しないとは言っていないけどさ……なんで君はそんなやる気満々なのかな? ひょっとして、隊長に惚れたの? ダメだよ。隊長は婚約しているのだから」
「別に恋愛感情があるわけじゃありません。私、隊長の役に立ちたいのです」
「はい、そうですか。なんで、隊長ばかりモテるんだろうね。ずるいよ。そのくせ、俺がちょっと女の子にちょっかいかけると、すぐに怒るんだから……」
それを聞いて小淵はあきれ顔に……
「矢部さん。あなたのやる事はちょっとどころの騒ぎじゃないでしょ。この前だって『マッサージして上げる』とか言って森田さんの背後から胸を揉んだりして、隊長に射殺されそうになったのを忘れたのですか?」
「胸を揉んだぐらいでそんな怒らなくても……ねえ、晶ちゃん……ひい!」
一瞬の早業で橋本晶の抜いた日本刀が、矢部の首筋にピタっと張り付いていた。
「私に同じ事をしたら、隊長の手を煩わせるまでもなく、私の手で矢部さんを三途の川の向こうに送って差し上げますのでお気をつけ下さい」
「気……気をつけます」
刀を鞘に納めた橋本晶に、小淵は困惑気味に言う。
「橋本さん。お気持ちは分かりますが、できれば護身用具はテザー銃か何かにしてもらえませんか。日本刀を使われては、後で掃除が大変なので……」
「ああ! 申し訳ありません。小淵さんのお部屋を血で汚してはいけませんね。次からは気をつけます」
「俺の命より、掃除の方が大事なのか!?」
「はい」「そうですけど、何か問題でも?」
二人にあっさりと頷かれて、矢部のリアクションは硬直してしまった。
「さて。どうでもいい話は、このくらいにして本題に入りましょう」
「どうでもいいのかよ」
矢部のどうでもいい呟きを無視して、小淵は話を続けた。
「隊長からやっとの事で聞き出したのですが、この人物と似ているという隊長の古い知り合いの名前は矢納というそうです。それ以外の情報はもらえませんでした。今は話したくないと言って……」
「それっぽっちの情報でどうやって探せと……小淵君。隊長には無理だと伝え……」
矢部のセリフを遮って橋本晶が意外な事を言う。
「私、この人知っています」
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