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第十三章
かつての仲間3
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ちら見している間に隙を突かれないかと心配したが、実は僕がちら見している間、古淵の方も芽衣ちゃんと矢部の戦いをちら見していたのだ。
『うりゃあ! ブースト!』
何発目かのブーストパンチの衝撃で、矢部機に刺さっていたワイヤーが外れた。
反動で二つの機体が離れていく。
その様子を見てから視線を古淵に戻すと、ちょうど古淵も視線をこっちに戻したところだった。
視線を戻すと同時に、互いに銃を構える。
トリガーを引くのもほぼ同時。
まあ、弾が当たっても九十九式の装甲は貫けないけどね。
それでも、弱い部分に当たれば多少はダメージがある。
やはり、ブーストパンチで殴り合う以外に決着は付けられそうにないな。
左腕のワイヤーガンを古淵に向けた。
「ワイヤーガン セット」
そこまでコマンドを言った途端に、古淵機はフル加速で急上昇して行く。
ダメだ。今、撃っても当たらない。
僕も古淵を追って急上昇していく。
今度は古淵の方から、ワイヤーガンを撃ってきた。
それに対して、僕は左腕の装甲に斜めに当ててワイヤーガンの弾丸を弾き飛ばす。
弾き飛ばしたワイヤーを掴み取った。
しかし、古淵は掴み取られたワイヤーを切り離してしまい、僕から遠ざかっていく。
慎重な男だな。煽ってみようか?
通信機のスイッチを入れた。
「この腰抜け! 逃げてばかりいないで戦え!」
さて、挑発に乗るかな?
通信が返ってきた。
『なるほど。納得しました。やはりあなたは隊長ではない』
何を言ってるんだ? 勝手に僕を『隊長』と呼んでいたのはそっちだろう。
『我々の隊長なら、僕がそんな挑発に乗らない事は知っています』
なるほど……
「当然だ。性格は一人目の僕から引き継いだけど、僕は君たちの事を何も知らない」
『そうでしょうね。でも、これで戦いやすくなった』
「どういう事だ?」
『この戦い。勝てても負けても、僕にとっては不幸な結果にしかならない。自分が死ぬは当然イヤだが、あなたを殺したくない。一人目の北村さんは僕を重宝してくれたし、僕も北村さんを尊敬していた』
そうだったのか?
『そして中の人も、今回は『逃げて良い』と言っている。だけど、北村さん。あなたは僕らを逃がす気はないようですね』
中の人……レムの事か。
『あなたが僕の尊敬していた北村さんでないことを納得したので、少しは戦いやすくなりました。だけど、僕はあなたに勝てる自信はない。だから、戦う前に僕の話を聞いてもらえませんか?』
遺言? いや、罠じゃないのか? だけど……
「いいだろう。話があるなら聞いておこう」
『やはり、あなたは隊長の性格を引き継いでいる。ダメですよ。こんな話にうっかり乗っては……隊長は僕が止めたにも関わらず、敵の話に乗って罠に掛かって負傷したのだから……でも、そんな優しいあなただから、僕は尊敬していたのです』
「分かった。今度から気をつけるよ」
『本当に気をつけて下さいね。もちろん、今回はあなたを罠にかけるつもりはありません。リトル東京にいる橋本 晶という女性に伝えて欲しい事があるのです』
愛の告白か?
『君を助けた事を、僕は後悔していない。むしろ誇りにさえ思っている。だから、僕の事を気に病むなんて事はしないでほしい』
「それを、橋本さんという女性に伝えればいいのか?」
『そうです。彼女は、機動服中隊最後の一人です。隊長と芽衣ちゃんが補給基地へ行き、僕と矢部さんはレムと接続されてしまい、他の二人はエラ・アレンスキーとの戦いで犠牲になった。今は、彼女が一人でリトル東京を守っているはずです』
「あんたが助けたって……どういうことなんだ?」
『それは聞かない方がいい。聞けばあなたは戦いにくくなる』
「そうか。もう一つ聞くけど、君はその女性が好きだったのか?」
『隊長。ずるいですよ。あなたは自分がそんな質問されたら素直に答えますか?』
答えないな。僕ならなんとかはぐらかそうとするだろう。
『僕もその質問には答えたくありません。さあ、決着を付けましょう』
古淵は僕に向かって突進して来た。
『うりゃあ! ブースト!』
何発目かのブーストパンチの衝撃で、矢部機に刺さっていたワイヤーが外れた。
反動で二つの機体が離れていく。
その様子を見てから視線を古淵に戻すと、ちょうど古淵も視線をこっちに戻したところだった。
視線を戻すと同時に、互いに銃を構える。
トリガーを引くのもほぼ同時。
まあ、弾が当たっても九十九式の装甲は貫けないけどね。
それでも、弱い部分に当たれば多少はダメージがある。
やはり、ブーストパンチで殴り合う以外に決着は付けられそうにないな。
左腕のワイヤーガンを古淵に向けた。
「ワイヤーガン セット」
そこまでコマンドを言った途端に、古淵機はフル加速で急上昇して行く。
ダメだ。今、撃っても当たらない。
僕も古淵を追って急上昇していく。
今度は古淵の方から、ワイヤーガンを撃ってきた。
それに対して、僕は左腕の装甲に斜めに当ててワイヤーガンの弾丸を弾き飛ばす。
弾き飛ばしたワイヤーを掴み取った。
しかし、古淵は掴み取られたワイヤーを切り離してしまい、僕から遠ざかっていく。
慎重な男だな。煽ってみようか?
通信機のスイッチを入れた。
「この腰抜け! 逃げてばかりいないで戦え!」
さて、挑発に乗るかな?
通信が返ってきた。
『なるほど。納得しました。やはりあなたは隊長ではない』
何を言ってるんだ? 勝手に僕を『隊長』と呼んでいたのはそっちだろう。
『我々の隊長なら、僕がそんな挑発に乗らない事は知っています』
なるほど……
「当然だ。性格は一人目の僕から引き継いだけど、僕は君たちの事を何も知らない」
『そうでしょうね。でも、これで戦いやすくなった』
「どういう事だ?」
『この戦い。勝てても負けても、僕にとっては不幸な結果にしかならない。自分が死ぬは当然イヤだが、あなたを殺したくない。一人目の北村さんは僕を重宝してくれたし、僕も北村さんを尊敬していた』
そうだったのか?
『そして中の人も、今回は『逃げて良い』と言っている。だけど、北村さん。あなたは僕らを逃がす気はないようですね』
中の人……レムの事か。
『あなたが僕の尊敬していた北村さんでないことを納得したので、少しは戦いやすくなりました。だけど、僕はあなたに勝てる自信はない。だから、戦う前に僕の話を聞いてもらえませんか?』
遺言? いや、罠じゃないのか? だけど……
「いいだろう。話があるなら聞いておこう」
『やはり、あなたは隊長の性格を引き継いでいる。ダメですよ。こんな話にうっかり乗っては……隊長は僕が止めたにも関わらず、敵の話に乗って罠に掛かって負傷したのだから……でも、そんな優しいあなただから、僕は尊敬していたのです』
「分かった。今度から気をつけるよ」
『本当に気をつけて下さいね。もちろん、今回はあなたを罠にかけるつもりはありません。リトル東京にいる橋本 晶という女性に伝えて欲しい事があるのです』
愛の告白か?
『君を助けた事を、僕は後悔していない。むしろ誇りにさえ思っている。だから、僕の事を気に病むなんて事はしないでほしい』
「それを、橋本さんという女性に伝えればいいのか?」
『そうです。彼女は、機動服中隊最後の一人です。隊長と芽衣ちゃんが補給基地へ行き、僕と矢部さんはレムと接続されてしまい、他の二人はエラ・アレンスキーとの戦いで犠牲になった。今は、彼女が一人でリトル東京を守っているはずです』
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『隊長。ずるいですよ。あなたは自分がそんな質問されたら素直に答えますか?』
答えないな。僕ならなんとかはぐらかそうとするだろう。
『僕もその質問には答えたくありません。さあ、決着を付けましょう』
古淵は僕に向かって突進して来た。
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