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第十三章

かつての仲間2

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 芽衣ちゃんの機体が、矢部の機体に猛然と向かっていく。

 その様子を見て慌てたのか、矢部が再び通信を送って来た。

『ちょ! なんで芽衣ちゃんが俺の方に来るんですか!? 俺の相手は、隊長がして下さいよ』
「すまんが、これは芽衣ちゃんの希望なのだ」
『そんな! 俺は女を殴れないのですよ』
「奇遇だな。僕も女は殴れないんだ。しかし、あんた、セクハラはするのだろ?」
『女の子にエロい事はやっても、暴力はふるわない。それが俺の信念です』

 しょうもない信念を語っている間に、桜色の機体はクリームイエローの機体と接触。

『うりゃあ! ブースト!』

 芽衣ちゃんのブーストパンチが、矢部の機体を直撃した。

 ガイン!

 金属同士がぶつかる耳障りな音を残して、二つの機体は反動で離れていく。

『ちょっと待って! 芽衣ちゃん。落ち着いて話し合おう。女の子が暴力なんて良くない』

 矢部の戯言ざれごとなど無視して、芽衣ちゃんは左腕を矢部の機体に真っ直ぐ向けた。

『ワイヤーガン セット ファイヤー!』

 ワイヤー付きの弾丸が矢部機の肩に突き刺さる。

『芽衣ちゃん。よそう。ロボットスーツ同士で戦っても無益だ。俺がほしかったのは君の心だ』

 おまえはメ○ィラ○星人か!

『ウザいです! キモいです! 矢部さんなんか大嫌いです! ウインチスタート!』

 ワイヤーが巻き上げられ二つの機体が急接近する。

『うりゃあ! ブースト!』

 矢部機の腹部にブーストパンチを叩き込む。

『芽衣ちゃん。やめてくれ。俺たち仲間じゃないか』
『仲間……?』
『そうだよ。同じ機動服中隊の仲間じゃないか』
『そうですね。矢部さんと私は仲間……』
『そうだろ』
『仲間でした』
『なんで、そこで過去形になるかな?』

 なんでもへったくれも、現に過去形だろ。

『仲間だからこそ、以前は矢部さんのセクハラに耐えていました。でも、仲間じゃなくなった今、耐える必要など何もありません』
『ちょ……芽衣ちゃん。俺は、セクハラなんてやったつもりは……』

 セクハラをやる奴はいつもそう言う。

『死んで下さい! くたばって下さい! 消滅して下さい! この宇宙から……ブースト!』

 芽衣ちゃんは容赦なく、無抵抗な矢部にブーストパンチを叩き込む。

 その様子を、僕はぼうと見ていた分けではない。

 古淵機と戦いながら、様子をチラッチラッと見ていたのだ。
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