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第十三章
菊花 VS フーファイター2
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レーダーがフーファイターを捕らえた。
蛇行するように曲がりくねった飛び方をしている。重力慣性制御の機体だからこういう飛行ができるのは分かるが、なんでこんな飛び方をするのだろう?
まっすぐ飛んだ方がエネルギーの節約になるのに、まるで操縦者の性格を現すような曲がりくねった飛び方だな。
回避運動をするにしても、まだミサイルの射程距離からだいぶ離れているのに……
『おかしな飛び方ですね。なにか企んでいるのでしょうか?』
通信機から芽衣ちゃんの声。
『まるで貧乏ゆすりでもしているみたいね』
そう言ったのはレイホー。
そういえば、矢納さんは会社にいるとき、四六時中貧乏ゆすりをしていたな。一緒に車に乗ったときなんか、地震が起きたのかと思うぐらいヒドい貧乏ゆすりだった。
「まさか、あの人間離れした貧乏ゆすりをしながら操縦していたら、それがドローンの動きに反映したとか言うのじゃないだろうな?」
んな分けあるか! 内心で自分のセリフに突っ込みを入れていると、それを肯定する人がいた。
『案外、北村君の言う通りかもしれないわね』
いやいや、アーニャさん。自分でもそんな事ありえないと思って言ったのだけど……
『私達はヘッドマウントディスプレイとデータグローブでドローンを操縦しているけど、フーファイターの操縦には確かブレイン・マシン・インターフェースを使っていたはずよ。あれを使ってドローンを操縦すると、操縦者の精神状態が反映してしまう事があるのよ』
マジかよ! じゃあ、矢納課長の貧乏ゆすりをしたいという精神状態が、ドローンの飛行に反映しているというのか?
矢納さんから通信が入ったのはその時……
通信ウインドーにカマキリのような顔が映る。
『やい北村! こっちは一機なのに五機も出して来やがって! この卑怯者!』
本日の『お前が言うな』はこれですか?
「矢納さん。いつもは、あなたの方が数を多く出して来ているのですけど……」
『うるせー! 昔の事を持ち出して人の上げ足取るな! ねちっこい奴だな』
「昔の事って数日前のことでしょ。それに昔のことというなら、二百年も僕を恨み続けるあなたの方がはるかにネチっこいでしょ」
『うるせー! 俺はお前のせいで会社をクビになったんだ! 恨んで当然だろ!』
「クビになったのは、あなたの自業自得です。会社のお金を業務上横領なんかするから……」
『おまえがネットに変なこと書き込まなきゃ、ばれなかったんだよ』
「ばれなきゃいいって問題じゃないでしょ! あなたのやったことは犯罪ですよ」
『うるせー! そんな事誰だってやっているだろ!』
「やっていません。やっているのはあなただけです」
『てめえみてえなクソ真面目な奴はそう思うのだろうけどな、たいていの奴はやっているんだよ。常識だろ』
「あなたの常識は、世間の非常識です」
『世間知らずのボンボンが生意気言うな』
「どうやら、あなたとは何を話しても無駄のようですね。あなたの頭の中では、あなた中心に地球が回っているんじゃないのですか?」
おっと! ここは地球じゃなかった。
『地球? それは違うな。俺を中心に宇宙が回っているのだ』
だめだこりゃ。
『黙って聞いていれば勝手な事を……このサイコパス男! 北村君は何も悪くないわ』
アーニャが通信に割り込んできた。
『そうです。北村さんは何も悪くありません』
芽衣ちゃんまで……
『おにいさんは何も悪くないね。全部おっさんの自業自得ね』
レイホーも……
『そうよ。因果応報だわ』
馬艦長まで……
『北村あぁぁぁ……』
彼女たちの口出しが、矢納課長の恨みの炎に油を注いでしまったようだ。
『女に囲まれやがって、なんちゅううらやましい奴だ。もう許さんぞ』
「あの……『もう許さない』という事は、今までは許す気があったのですか?」
『いや、今までもなかった』
そうだろうな。
『とにかく、俺はお前を許さない。全宇宙のモテない男に代わって成敗してやる』
そんな理由で成敗されてはかなわんな。
蛇行するように曲がりくねった飛び方をしている。重力慣性制御の機体だからこういう飛行ができるのは分かるが、なんでこんな飛び方をするのだろう?
まっすぐ飛んだ方がエネルギーの節約になるのに、まるで操縦者の性格を現すような曲がりくねった飛び方だな。
回避運動をするにしても、まだミサイルの射程距離からだいぶ離れているのに……
『おかしな飛び方ですね。なにか企んでいるのでしょうか?』
通信機から芽衣ちゃんの声。
『まるで貧乏ゆすりでもしているみたいね』
そう言ったのはレイホー。
そういえば、矢納さんは会社にいるとき、四六時中貧乏ゆすりをしていたな。一緒に車に乗ったときなんか、地震が起きたのかと思うぐらいヒドい貧乏ゆすりだった。
「まさか、あの人間離れした貧乏ゆすりをしながら操縦していたら、それがドローンの動きに反映したとか言うのじゃないだろうな?」
んな分けあるか! 内心で自分のセリフに突っ込みを入れていると、それを肯定する人がいた。
『案外、北村君の言う通りかもしれないわね』
いやいや、アーニャさん。自分でもそんな事ありえないと思って言ったのだけど……
『私達はヘッドマウントディスプレイとデータグローブでドローンを操縦しているけど、フーファイターの操縦には確かブレイン・マシン・インターフェースを使っていたはずよ。あれを使ってドローンを操縦すると、操縦者の精神状態が反映してしまう事があるのよ』
マジかよ! じゃあ、矢納課長の貧乏ゆすりをしたいという精神状態が、ドローンの飛行に反映しているというのか?
矢納さんから通信が入ったのはその時……
通信ウインドーにカマキリのような顔が映る。
『やい北村! こっちは一機なのに五機も出して来やがって! この卑怯者!』
本日の『お前が言うな』はこれですか?
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『うるせー! 昔の事を持ち出して人の上げ足取るな! ねちっこい奴だな』
「昔の事って数日前のことでしょ。それに昔のことというなら、二百年も僕を恨み続けるあなたの方がはるかにネチっこいでしょ」
『うるせー! 俺はお前のせいで会社をクビになったんだ! 恨んで当然だろ!』
「クビになったのは、あなたの自業自得です。会社のお金を業務上横領なんかするから……」
『おまえがネットに変なこと書き込まなきゃ、ばれなかったんだよ』
「ばれなきゃいいって問題じゃないでしょ! あなたのやったことは犯罪ですよ」
『うるせー! そんな事誰だってやっているだろ!』
「やっていません。やっているのはあなただけです」
『てめえみてえなクソ真面目な奴はそう思うのだろうけどな、たいていの奴はやっているんだよ。常識だろ』
「あなたの常識は、世間の非常識です」
『世間知らずのボンボンが生意気言うな』
「どうやら、あなたとは何を話しても無駄のようですね。あなたの頭の中では、あなた中心に地球が回っているんじゃないのですか?」
おっと! ここは地球じゃなかった。
『地球? それは違うな。俺を中心に宇宙が回っているのだ』
だめだこりゃ。
『黙って聞いていれば勝手な事を……このサイコパス男! 北村君は何も悪くないわ』
アーニャが通信に割り込んできた。
『そうです。北村さんは何も悪くありません』
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レイホーも……
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『いや、今までもなかった』
そうだろうな。
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