455 / 893
第十二章

誰だっけ?

しおりを挟む
 古淵こぶちと言ったら……

「古淵?」
「そう。古淵こぶち あきらよ」
「相模原さん。一つ聞いていいかい?」
「なに?」
「古淵って……誰だっけ?」

 あ! 相模原月菜が盛大に転けた。忘れると恥ずかしいことだったのかな? しかし、古淵って……そうか! 裏切り四天王の一人だったか。なんか一人だけ印象が薄いので忘れていた。

「北村君……今言った事を古淵が聞いたら泣くわよ」
「なんで?」
「今は裏切り者だけど、それ以前は彼の事を作戦参謀として重宝していたのよ。君は」

 いや、それは一人目の僕だろう。今のは僕は面識すらないのに……

「古淵って普段は物静かだけど、頭は切れる人なのよね」
「そうだったのか? 四人の中で一番陰が薄そうだったけど」
「ところで北村君。もう、誤解も解けたことだし、ヘルメットを外してもいいのじゃないかしら?」

 ん? 確かにそうだな。スーツ内のエアコン機能もかなり能力が落ちてきたのか暑苦しくなってきたし……

 ヘルメットを外すと、ヒンヤリとした外気が僕の顔を撫でた。気持ちいい!

「カイトさん。汗をお拭きしますね」

 ミールがタオルで汗を拭ってくれた。

「ああ、ありがとう」
「髪も整えましょうね。こんなグシャグシャでは、いい男が台無しですよ」

 ミールがヘアブラシで髪を整えてくれたのはいいが、相模原月菜の視線がコワい。

 いや、コワがる必要があるのか? 体感時間で六年前に別れたのだし、別れようと言ったのは彼女の方だし……

 不意に相模原月菜は背後を振り返った。

「マイスキーさん。ちょっと、こっちへ来てくれない」

 エラと何かを話していた紫髪の薬師がこっちに来る。

 彼女は僕の顔見て驚いていた。

「あなた! 昨日、ミールさんと一緒に宿にいた人じゃない!」
「や! 昨日はどうも」

 相模原月菜の視線がさらに険しくなる。

「ふうん。マイスキーさんが昨日ロータスのホテルでミールさんと会ったと言っていたけど、その時ミールさんと一緒にいた男って、北村君のことだったのね」
「そ……そうだよ……悪いか?」
「私と付き合っていた時は、一度もラブホなんて入った事ないのに、ミールさんとは入ったんだ」
「無茶言うな! あの時は、お互い高校生だったし……」
 
 高校生は清い交際をすべき……ごめんなさい。お金がなかっただけです。

「高校時代でも、私の友達は彼とホテルに入ったって自慢していたのになあ」

 友達に自慢するためだけに入りたかったんかい!

 不意にミールが僕の腕にしがみついて相模原月菜を睨みつける。

「あなたが昔、カイトさんと付き合っていた事は聞いています。でも、返しませんからね」
「大丈夫よ。返せなんて言わないから」

 ミールは芽依ちゃんの方を振り返った。

「今の言葉、信用できますか?」
「信用なんてできるわけないじゃないですか。相模原さんは『返せなんて言わない』と言ったけど、取り返さないとは一言も言っていません。宴席でさりげなく北村さんの横に座って、太股をなで回して誘惑するぐらいの事はやりますから」
「やはり、そうでしたか」

 ミールはますます僕に強くしがみつく。

「そんな警戒しなくてもいいでしょ。それより、北村君もミールさんも昨日は作戦中だったのじゃないの? よくホテルなんかに入っている余裕あったわね」
「いや……あれは作戦の一環で……」
「ラブホに入る事が作戦?」
「いや、帝国軍将校に仕掛けた盗聴器の電波を、怪しまれないで受信するために都合のいい場所としてホテルを選んだんだよ」
「盗聴していたの?」
「ああ」
「その時の音声データは残っている?」

 僕はPちゃんの方を振り向いた。

「Pちゃん。残っているかい?」
「はい。私のメモリに保存してあります」
「ちょっと聞かせてくれない」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...