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第十二章

誰だっけ?

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 古淵こぶちと言ったら……

「古淵?」
「そう。古淵こぶち あきらよ」
「相模原さん。一つ聞いていいかい?」
「なに?」
「古淵って……誰だっけ?」

 あ! 相模原月菜が盛大に転けた。忘れると恥ずかしいことだったのかな? しかし、古淵って……そうか! 裏切り四天王の一人だったか。なんか一人だけ印象が薄いので忘れていた。

「北村君……今言った事を古淵が聞いたら泣くわよ」
「なんで?」
「今は裏切り者だけど、それ以前は彼の事を作戦参謀として重宝していたのよ。君は」

 いや、それは一人目の僕だろう。今のは僕は面識すらないのに……

「古淵って普段は物静かだけど、頭は切れる人なのよね」
「そうだったのか? 四人の中で一番陰が薄そうだったけど」
「ところで北村君。もう、誤解も解けたことだし、ヘルメットを外してもいいのじゃないかしら?」

 ん? 確かにそうだな。スーツ内のエアコン機能もかなり能力が落ちてきたのか暑苦しくなってきたし……

 ヘルメットを外すと、ヒンヤリとした外気が僕の顔を撫でた。気持ちいい!

「カイトさん。汗をお拭きしますね」

 ミールがタオルで汗を拭ってくれた。

「ああ、ありがとう」
「髪も整えましょうね。こんなグシャグシャでは、いい男が台無しですよ」

 ミールがヘアブラシで髪を整えてくれたのはいいが、相模原月菜の視線がコワい。

 いや、コワがる必要があるのか? 体感時間で六年前に別れたのだし、別れようと言ったのは彼女の方だし……

 不意に相模原月菜は背後を振り返った。

「マイスキーさん。ちょっと、こっちへ来てくれない」

 エラと何かを話していた紫髪の薬師がこっちに来る。

 彼女は僕の顔見て驚いていた。

「あなた! 昨日、ミールさんと一緒に宿にいた人じゃない!」
「や! 昨日はどうも」

 相模原月菜の視線がさらに険しくなる。

「ふうん。マイスキーさんが昨日ロータスのホテルでミールさんと会ったと言っていたけど、その時ミールさんと一緒にいた男って、北村君のことだったのね」
「そ……そうだよ……悪いか?」
「私と付き合っていた時は、一度もラブホなんて入った事ないのに、ミールさんとは入ったんだ」
「無茶言うな! あの時は、お互い高校生だったし……」
 
 高校生は清い交際をすべき……ごめんなさい。お金がなかっただけです。

「高校時代でも、私の友達は彼とホテルに入ったって自慢していたのになあ」

 友達に自慢するためだけに入りたかったんかい!

 不意にミールが僕の腕にしがみついて相模原月菜を睨みつける。

「あなたが昔、カイトさんと付き合っていた事は聞いています。でも、返しませんからね」
「大丈夫よ。返せなんて言わないから」

 ミールは芽依ちゃんの方を振り返った。

「今の言葉、信用できますか?」
「信用なんてできるわけないじゃないですか。相模原さんは『返せなんて言わない』と言ったけど、取り返さないとは一言も言っていません。宴席でさりげなく北村さんの横に座って、太股をなで回して誘惑するぐらいの事はやりますから」
「やはり、そうでしたか」

 ミールはますます僕に強くしがみつく。

「そんな警戒しなくてもいいでしょ。それより、北村君もミールさんも昨日は作戦中だったのじゃないの? よくホテルなんかに入っている余裕あったわね」
「いや……あれは作戦の一環で……」
「ラブホに入る事が作戦?」
「いや、帝国軍将校に仕掛けた盗聴器の電波を、怪しまれないで受信するために都合のいい場所としてホテルを選んだんだよ」
「盗聴していたの?」
「ああ」
「その時の音声データは残っている?」

 僕はPちゃんの方を振り向いた。

「Pちゃん。残っているかい?」
「はい。私のメモリに保存してあります」
「ちょっと聞かせてくれない」
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