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第十二章

惨憺たる光景

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 爆煙が収まった後、投石機があった辺りには惨憺たる光景が広がっていた。

 バリケードを突破して突入しようと待ちかまえていた兵士たちの累々たる死体が……

 気の弱い人は見ない方がいい。見るとしばらく肉が食えなくなる。

 いや、そういう問題じゃないか……

 敵の生き残りがいる方向に集音マイクを向けてみた。

「冗談じゃねえ! 敵にこんな化け物がいるなんて話聞いてないぞ」

 また化け物って言われちゃったよ。傷つくな……

「やってられるか! 俺は逃げるぞ」
「俺も逃げる。こんなの相手に、勝てっこないだろう」

 そのまま、敵兵は雪崩を打って逃げ出した。

 レイラ・ソコロフ等ナンモ解放戦線首脳部の思惑が内部不良分子の始末であるなら、恐らく彼らはこのまま逃げられないだろう。

 督戦隊が後に待ちかまえているだろうな。

 だが、いずれ督戦隊に押し戻されてこっちへ戻ってくるにしても、しばらくは時間が稼げる。

 僕らはロータス兵が守っている橋の袂に向かった。

「君達。まだ、戦えるかい?」

 隊長らしき人物が僕に向かって敬礼した。

「大丈夫であります! 自分たちはまだまだ戦えます」

 元気よく返事するのはいいが、苦手なんだな。こういう軍隊調の空気……

 その隊長の背後で、若い兵士達が嘔吐している。

 それに気がついた隊長が、彼らのところへ歩み寄り拳を振り上げた。

「馬鹿者! 勇者様の前でみっともないまねを……」

 いかん! やめさせないと……

「君! いいんだ」

 兵士を殴ろうとしていた隊長の腕を掴んだ。

「しかし……このような、見苦しい……」
「死体を見て気分が悪くなるのは、人として当然の事だ。恥でもなんでもない」

 むしろ、平気でいる方がおかしい。 

「そんな事より、今のうちに負傷者を後方へ下がらせた方がいい」
「そうですね」

 隊長は副官を呼んで、負傷者を収容する手配を始めた。それが終わるのを待って、僕は話しかける。

「ところで、役所が攻撃を受けているのは知っているかい?」
「え? 聞いておりません。町長は無事なのですか?」

 やはり伝わっていなかったか。恐らく、役所も伝令を送る余裕もなかったのだろう。

「僕らは役所の救援に行かなければならない。その間、ここを頼めるかい?」
 
 一瞬、隊長の顔がひきつった。

「も……もちろん……大丈夫であります」

 あまり、大丈夫そうじゃないな。

「敵はさっきの爆発でかなり混乱している。しばらくはやってこない。それにもうすぐ、ドローン部隊が戻ってくる。それまでの間でいいんだ」
「分かりました。ここはお任せください」
「頼んだよ」

 僕と芽依ちゃんは再び飛び立った。役所に向かって……
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