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第九章

下ネタは苦手?(過去編)

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 芽衣は咄嗟に身構える。
 プールから上がってきたダイバーは、何事もなかったかのように水中眼鏡を外した。

「隊長! カメラとセンサー仕掛けてきたね」
「おお! ご苦労さん」

 プールから上がって来たのはレイホーだった。

「芽衣ちゃん。来てくれたか」

 水を滴らせながら、レイホーは芽衣の方を向く。

「レイホーさん。ごめんなさい。遅くなって」
「いいって。それより、着替えるの、手伝って」
「はい」

 芽衣は、壁際で両手を一杯に広げてブルーシートを持ち、着替えるための空間を用意した。その中で、レイホーは潜水服から戦闘服へと着替える。

 その様子を見て、隊長は兵士達に一喝した。

「おまえら! お嬢さんの着替えを覗こうなんてするなよ。覗いたら、俺が射殺する」
「おお! こええ」「死ぬ前に一度、レイホーちゃんの着替え覗きたかったな」

 そんな兵士たちの声を背後で聞きながら、芽衣は着替えているレイホーに話しかけた。

「水の中で、何をやっていたのですか?」
「水中トンネルに、カメラと赤外線センサー仕掛けてきたね」
「水中トンネル?」
「このプールから、運河に続いているトンネルね。敵が外側のハッチを爆破したら、まずトンネル内の水が抜ける。でも、プール側にもハッチがあるからプールの水は残るね。それを知らないで敵兵が、のこのことトンネルに入ってきたら、プール側のハッチを開いて一気に押し流してやるね。水洗トイレの○○○みたいに」
「ま!」
「センサーとカメラは、敵が入って来た事を確認するためね。絶妙のタイミングで、レバーを大に方に回してやるね」
「え? ええっと……」
「あれ? 芽衣ちゃん。ひょっとして、下ネタは苦手?」
「あ……あまり、得意では……」
「芽衣ちゃん、可愛い!」
「そ……そんな事……無いです」

 レイホーが着替え終わった時、レーダーが妙な飛行物体を捕えた。
 当初、爆薬を運んできた輸送用ドローンかと思っていたら、どうも違うようだ。
 都市上空を飛び回って偵察をしているらしい。

「いったい、敵はなんのつもりだ?」

 隊長が首を捻っている間に、今度こそ、爆薬を積んだ敵の輸送用ドローンが到着した。

 いよいよ来る!

 全員に緊張が走ったその時、レーダーが別の飛行物体を捕えた。

「マッハ三だと!? ジェットドローンか?」
「分かりません。それに、ドローンにしては大きすぎます」

 その時、干上がった運河で待機していた帝国軍の間で爆発が起きた。

「なんだ? 何が起きた?」
「隊長! 爆撃です。あの飛行物体が、帝国軍に向かって手榴弾を投下しています」
「なに!? では、味方か?」
「分かりません。映像を出します」

 映像に映った物体は、異様な姿をしていた。
 金色に輝く龍だったのだ。
 しかも、その姿は、出現消滅を繰り返している。

「これは、ナーモ族の分身魔法では?」
「竜に人が乗っています」

 龍には小さな女の子が乗っていた。セーラー服を着た、おかっぱ頭の少女。
 その姿に、芽衣は見覚えがあった。

未来ミクちゃん!」

 隊長が芽衣の方を振り向く。

「知っているのか?」
「隊長さん! あの女の子は味方です。きっと《イサナ》が応援を送ってくれたのですよ」
「なんだって!」

 その時、竜の上にいた女の子は、紙のような物を地表に投げ落とした。
 その紙切れは、落ちる途中でムクムクと大きくなり、巨大な鬼の姿になる。
 鬼は地上に降りると、ハッチに駆け寄り帝国軍がセットしていた爆薬を掴み取った。
 そのまま、空中高く放り投げる。
 空中で待機していた竜が、白い光弾を発射。
 光弾が爆薬にぶつかり、空中で大爆発が起きた。

未来ミクちゃんと連絡を取らないと……隊長さん。通信機はありますか?」
「あるにはあるが、受信しかできない。昨夜の戦いで、送信機能がダメになった」
「では、私が直接あの子に会いに行きます。よろしいですか?」
「頼む。あの子が爆薬を処分してくれたから、ここは暫く持ちそうだ」
「では行ってきます」

 芽衣は、ドームに向かって駆け出した。
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