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第49話 それぞれの目的
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エレガンさんに盛られた毒は遅効性のもののようでした。
王城警察にはお医者様は常駐していませんが、王城にはお医者様が常駐しています。
そのため、王城の医者がエレガンさんの様子を診に行ってくれたそうです。
危ない状況ではありましたが、お医者様が持っていた解毒薬が効いたそうで一命はとりとめたとのことでした。
ただ、かなり衰弱しているため、王城警察内では対処しきれないということになり、エレガンさんは王城の敷地内から出て、貴族向けの病院に移されることになりました。
そのことを教えてくれた王城警察の方が帰られたあとに、私たちは寝室に戻りました。
ですが、すぐに寝られるはずがありません。
ルーラス様も同じようでしたので、ベッドの上に座って話をすることになりました。
「今回の件はバフュー様の仕業でしょうか」
「その可能性が高いが、ジオラ伯爵はエレガンをどうするつもりだったんだ? 毒殺するつもりだったのか? それとも王城の敷地内から出したかっただけなのか?」
「わかりません。今のところはどちらの可能性も考えておかなければなりませんね」
バフュー様には見張りがついているため、彼自身が動いたわけではなさそうです。
食材を提供している業者やエレガンさんに食事を出した人間には明日の朝に確認が入ることになっていますので、聞いてみないことには判断できません。
「それにどうやって彼女の食事にだけ毒を入れられたのでしょうか」
「留置所に入れられている人間の食事は、王城警察の建物内の調理場で作られてるんだそうだ。今のところ、留置所にはエレガンしかいないから毒を入れるのは簡単かもしれない。だが、そうなると王城警察の内部にジオラ伯爵の仲間がいることになる」
「そんな……!」
驚いて声を上げてしまいましたが、故ジオラ夫人が亡くなったのも取調べ中の時でした。
内通者から故ジオラ夫人の様子を聞いたバフュー様は彼女が余計なことを話しそうだと思い、エレガンさんに命令したということでしょうか。
「とにかく今日は無理にでも寝るか。また、明日は早起きしないといけないからな」
「そうですね、おやすみなさい」
こてんとベッドに横になると、ルーラス様が慌てた様子で話しかけてきます。
「リル! あの、寝る前にさっきの続きだけ良いか!?」
「……?」
少し考えてから気付きます。
さっきの続きと言いますとキスですね!
「どうぞ!」
ドンと来てください!
そう思って目を閉じて手を伸ばしたところ、私を見下ろしていたルーラス様に指の先が当たってしまいました。
「いってっ!」
「痛いです!」
「だ、大丈夫か!?」
「大丈夫ですが痛いです。ルーラス様は大丈夫ですか!?」
「俺は大丈夫だけど……」
私は突き指をしてしまったようで、ルーラス様に回復魔法をかけてもらいました。
その後、二人で話し合いましたところ、神様が不謹慎だと思っているのではないかという話になり、その日は何もせずに眠ることになったのでした。
*****
次の日の朝は日差しが強く感じられるくらいに、空は晴れ渡っていました。
起きてからすぐに侍女にお願いして両親たちの様子を見に行ってもらいました。
何かあれば連絡が来ているとは思いますが、念のためにです。
侍女はすぐに帰ってきて、特に何もなかったと教えてくれました。
ただ、かなり疲弊しているようで「出してくれ」と侍女に訴えかけてきたようです。
両親たちの様子は、エレガンさんの件が落ち着いたら改めて見に行くことに決めました。
出してくれと言っている時点で反省していないということですし、必要であればもっと厳しい罰にしてもらわねばなりません。
朝食を終えた私とルーラス様は王城警察に出向き、事の経緯を教えてもらいました。
エレガンさんの食事に毒を盛ったのは配膳係で、王城警察の人間だと名乗る人物から透明な液体の入った小瓶を渡されたそうです。
『エレガンは病気なんだ。この薬を食事に混ぜてくれ』
配膳係は素直にその命令に従い、その液体を食事に混ぜたそうです。
配膳係にそれを頼んだと思われる人物は、昨日の内に退職して逃げているとのことでした。
「やはり、エレガンさんを王城警察内から出したい理由があるということでしょうか」
話を聞き終えた私たちは、邸に戻りながら会話を続けます。
「考えられるとしたら、あれだろうけどな」
「そうですね。不発でしたから、新たに書き直せば出来るはずです」
「だが、それをしてどうするつもりなんだ?」
「わからないことだらけですね。目的は何なのでしょうか。そして、バフュー様は何がしたいのでしょうか」
今回の件にバフュー様が絡んでいるという証拠はまだありませんが、絶対に彼が絡んでいるはずです。
答えが出ぬまま屋敷に着くと、執事から1枚の手紙を渡されました。
私宛の手紙で、差出人はバフュー様からでした。
王城警察にはお医者様は常駐していませんが、王城にはお医者様が常駐しています。
そのため、王城の医者がエレガンさんの様子を診に行ってくれたそうです。
危ない状況ではありましたが、お医者様が持っていた解毒薬が効いたそうで一命はとりとめたとのことでした。
ただ、かなり衰弱しているため、王城警察内では対処しきれないということになり、エレガンさんは王城の敷地内から出て、貴族向けの病院に移されることになりました。
そのことを教えてくれた王城警察の方が帰られたあとに、私たちは寝室に戻りました。
ですが、すぐに寝られるはずがありません。
ルーラス様も同じようでしたので、ベッドの上に座って話をすることになりました。
「今回の件はバフュー様の仕業でしょうか」
「その可能性が高いが、ジオラ伯爵はエレガンをどうするつもりだったんだ? 毒殺するつもりだったのか? それとも王城の敷地内から出したかっただけなのか?」
「わかりません。今のところはどちらの可能性も考えておかなければなりませんね」
バフュー様には見張りがついているため、彼自身が動いたわけではなさそうです。
食材を提供している業者やエレガンさんに食事を出した人間には明日の朝に確認が入ることになっていますので、聞いてみないことには判断できません。
「それにどうやって彼女の食事にだけ毒を入れられたのでしょうか」
「留置所に入れられている人間の食事は、王城警察の建物内の調理場で作られてるんだそうだ。今のところ、留置所にはエレガンしかいないから毒を入れるのは簡単かもしれない。だが、そうなると王城警察の内部にジオラ伯爵の仲間がいることになる」
「そんな……!」
驚いて声を上げてしまいましたが、故ジオラ夫人が亡くなったのも取調べ中の時でした。
内通者から故ジオラ夫人の様子を聞いたバフュー様は彼女が余計なことを話しそうだと思い、エレガンさんに命令したということでしょうか。
「とにかく今日は無理にでも寝るか。また、明日は早起きしないといけないからな」
「そうですね、おやすみなさい」
こてんとベッドに横になると、ルーラス様が慌てた様子で話しかけてきます。
「リル! あの、寝る前にさっきの続きだけ良いか!?」
「……?」
少し考えてから気付きます。
さっきの続きと言いますとキスですね!
「どうぞ!」
ドンと来てください!
そう思って目を閉じて手を伸ばしたところ、私を見下ろしていたルーラス様に指の先が当たってしまいました。
「いってっ!」
「痛いです!」
「だ、大丈夫か!?」
「大丈夫ですが痛いです。ルーラス様は大丈夫ですか!?」
「俺は大丈夫だけど……」
私は突き指をしてしまったようで、ルーラス様に回復魔法をかけてもらいました。
その後、二人で話し合いましたところ、神様が不謹慎だと思っているのではないかという話になり、その日は何もせずに眠ることになったのでした。
*****
次の日の朝は日差しが強く感じられるくらいに、空は晴れ渡っていました。
起きてからすぐに侍女にお願いして両親たちの様子を見に行ってもらいました。
何かあれば連絡が来ているとは思いますが、念のためにです。
侍女はすぐに帰ってきて、特に何もなかったと教えてくれました。
ただ、かなり疲弊しているようで「出してくれ」と侍女に訴えかけてきたようです。
両親たちの様子は、エレガンさんの件が落ち着いたら改めて見に行くことに決めました。
出してくれと言っている時点で反省していないということですし、必要であればもっと厳しい罰にしてもらわねばなりません。
朝食を終えた私とルーラス様は王城警察に出向き、事の経緯を教えてもらいました。
エレガンさんの食事に毒を盛ったのは配膳係で、王城警察の人間だと名乗る人物から透明な液体の入った小瓶を渡されたそうです。
『エレガンは病気なんだ。この薬を食事に混ぜてくれ』
配膳係は素直にその命令に従い、その液体を食事に混ぜたそうです。
配膳係にそれを頼んだと思われる人物は、昨日の内に退職して逃げているとのことでした。
「やはり、エレガンさんを王城警察内から出したい理由があるということでしょうか」
話を聞き終えた私たちは、邸に戻りながら会話を続けます。
「考えられるとしたら、あれだろうけどな」
「そうですね。不発でしたから、新たに書き直せば出来るはずです」
「だが、それをしてどうするつもりなんだ?」
「わからないことだらけですね。目的は何なのでしょうか。そして、バフュー様は何がしたいのでしょうか」
今回の件にバフュー様が絡んでいるという証拠はまだありませんが、絶対に彼が絡んでいるはずです。
答えが出ぬまま屋敷に着くと、執事から1枚の手紙を渡されました。
私宛の手紙で、差出人はバフュー様からでした。
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