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 驚きと共に納得する。
 タガリス王国の第二王女、イゾルテ・タガリス様。
 彼女が持つもう一つの名、役割は――

「聖女様!?」
「ふふっ、そう呼んでくれても構わないわ」
 
 そう、彼女は聖女と呼ばれている。
 神の代弁者。
 祈りによって奇跡を起こす人。
 世界でただ一人の存在で、タガリス王国の宝と呼ばれている。
 そんな人が……。

「どうしてこちらにいらっしゃるのですか?」
「あら? 二人から来ていないかしら」
「二人……! 殿下と、トリスタン様?」
「ええ、幼馴染三人よ」

 以前の二人の会話を思い出す。
 あと一人、仲の良い幼馴染がいるという。
 忙しい方で、いずれ顔を出すだろうと……。
 そう言う意味か。
 お忙しいはずだ。
 なぜなら三人目の幼馴染は、世界で唯一の聖女様なのだから。

「その様子は聞いてなかったのね。ちゃんと伝えるように言ってあったのに、困った人たちね」
「あの……」
「そう畏まらないで。女の子同士、仲良くしましょう?」
「は、はい!」

 はい、で合っているのかな?
 性別は同じでも、立場がまったく違い過ぎる。
 仲良くできるだろうか……。
 そもそも言葉をそのまま受け取ってよかったのだろうか。
 頭の中がぐるぐる回る。

「ところで、さっきトリスタン様の名前が聞こえたのだけど」
「え、あ、はい」
「会いたそうだったわね」
「は、はい」

 何だろう?
 徐々に距離をつめられている。
 笑顔が少し、怖い。
 後ずさろうにも、後ろは壁だから無理だ。

「せ、聖女様?」
「気になるわー。あなた、もしかしてトリスタン様に気があるのかしら?」
「え、ええ!? ち、違います!」

 予想外の質問に動揺してしまった。
 私は慌てて否定したけど、聖女様は詰め寄ってくる。

「本当かしら?」
「ほ、本当です! お世話になっているので感謝しています! それ以上のことなんて、恐れ多くて思えません!」

 本当にそう思っている。
 やましい気持ちなんて一ミリもない。
 抱けるはずもない。
 そもそもなぜ、聖女様がこんなにも質問してくるの!?

「怪しいわぁ、そういって実は言い寄っていたりして」
「してません!」
「そこまでだ」
「――!」
「あら、来ていたのね? エルムス」
「殿下ぁ!」

 まるで救世主でも来たような安心感。
 私は若干涙目になっていた。
 今は嬉しさで泣きそうだ。

「あまり彼女をいじめるな」
「いじめてないわ。楽しくガールズトークをしていただけよ」
「どこがだ? 怯えてるじゃないか」

 ガクガクブルブル。
 早く離れてくれないだろうか。

「だって気になるじゃない。トリスタン様の周りに新しい女性がきたのよ? 私が放っておくわけないでしょう?」
「だから心配するな。あいつのことを信じてやれ」
「信じているわ。だからこそよ」

 聖女様は私に視線を戻す。
 そしてハッキリと宣言する。

「トリスタン様は私のものよ? 誰にも渡さないわ」
「……はい?」

 もう何なのこの人……。
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