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episode5-2
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「いくら人間そっくりでも所詮は定められたプログラムだ。でもある程度は成長するだろ?例えば購入した時は『お疲れ様』って言うだけだったのが『お疲れ様。疲れたでしょう』まで言うようになる。そうやって少しずつ成長はするがどこかでストップする。市販は犯罪防止のため成長制御が掛けられてるからだ。だが人間の欲は尽きる事を知らない。疲れた事を配慮するなら食事の準備をしておいて欲しい、食べたら片付けて欲しい、お風呂の準備もしておいて欲しい。どんどん出てくるだろう? それがアンドロイドの能力で賄えるうちはいい。だがA-RGRYは優秀で、恋人にフられた女性にこう言ってしまった。『僕がいるじゃないか』ってね。じゃあここで小テスト」
「また!?」
長台詞を右から左に流していた美咲はびくりと震えた。
「販売から五十年も経ってようやくアンドロイド依存症が大騒ぎされてるのは何故でしょう」
「え……ええ……」
「ブー。時間切れ。ではヒント問題。アンドロイドが購入可能になる年齢は?」
「二十歳……じゃない。引き上げられて二十五歳」
アンドロイドに購入年齢制限が設けられている。これにはいくつか理由があるが、その一つが少子化である。
アンドロイドに入れ込んだ結果結婚をしない女性が多くなり、当然だが子供が生まれない。
実際、結婚出産をしない理由上位にアンドロイドが入っている。人間同士の結婚よりもお金次第で絶対に裏切らず言う事を聞くアンドロイドの方が良いのだ。
これを少しでも防ごうと年齢制限が検討されたが、メーカー側からの反発やフェミニスト団体の女性差別に関する主張など、方々から意見が飛び二十五歳で着地した。
だがどうにも中途半端で、今なお改正が検討されている。
「正解。じゃあA-RGRY発売時に即買った人は若くて何歳?」
「五十年前ですよね。七十五歳くらい?」
「そう。そして老後を一人で暮しているとより依存して症状が悪化する。それが昨今のアンドロイド依存症問題ってわけだ」
「けど学生だって多いですよ」
「ありゃ依存症じゃなくてノイローゼ。最近じゃアンドロイド関連の自殺は全部アンドロイド依存症にくくられるけど、元々はA-RGRYに起因する依存症状を指すんだよ。でも依存症は本人が良ければそれで良しってモンでもあるから回収も難しい」
「強制回収できなかったんですね」
「それ以上にシステムの不具合も多かったけどな。最大の回収理由は情報管理システムの不具合による個人情報漏洩だよ」
そんなヤバイ機体が何でうちのマンションに、と美咲はごみ捨て場で寝ていた様子を思い出す。
漆原はうーんと少しだけ考え込むと、ああ、と何かに気付いたようだった。
「お前んとこってアンドロイドOKなの?」
「はい。あ、だからか!」
「アンドロイド受け入れ体制整ってるマンションあんまないからな」
「くそ~……」
「まあでも型番分かれば購入者は分かる。そうすりゃ返却して終わりだ。はい、問題。購入情報を調べる部署は?」
「え、えっと、販売管理部?」
「正解。そこの上長は?」
「知らないです」
漆原は当然のように答えた美咲の態度を鼻で笑った。
ざまあみろとでも言いたげなその表情から後ずさって一歩逃げるが、漆原は再び美咲の頭を掴んだ。
「俺だよ。俺は三部署持ってる。開発第一とセキュリティ管理部、それと販売管理部」
「あ~……」
「というわけで、これは俺の仕事。つまりはお前の仕事」
「うげっ!!」
美咲は強制的にパソコンの前に座らされ、いつものようにつむじをぺんぺんと叩かれてしまった。
「また!?」
長台詞を右から左に流していた美咲はびくりと震えた。
「販売から五十年も経ってようやくアンドロイド依存症が大騒ぎされてるのは何故でしょう」
「え……ええ……」
「ブー。時間切れ。ではヒント問題。アンドロイドが購入可能になる年齢は?」
「二十歳……じゃない。引き上げられて二十五歳」
アンドロイドに購入年齢制限が設けられている。これにはいくつか理由があるが、その一つが少子化である。
アンドロイドに入れ込んだ結果結婚をしない女性が多くなり、当然だが子供が生まれない。
実際、結婚出産をしない理由上位にアンドロイドが入っている。人間同士の結婚よりもお金次第で絶対に裏切らず言う事を聞くアンドロイドの方が良いのだ。
これを少しでも防ごうと年齢制限が検討されたが、メーカー側からの反発やフェミニスト団体の女性差別に関する主張など、方々から意見が飛び二十五歳で着地した。
だがどうにも中途半端で、今なお改正が検討されている。
「正解。じゃあA-RGRY発売時に即買った人は若くて何歳?」
「五十年前ですよね。七十五歳くらい?」
「そう。そして老後を一人で暮しているとより依存して症状が悪化する。それが昨今のアンドロイド依存症問題ってわけだ」
「けど学生だって多いですよ」
「ありゃ依存症じゃなくてノイローゼ。最近じゃアンドロイド関連の自殺は全部アンドロイド依存症にくくられるけど、元々はA-RGRYに起因する依存症状を指すんだよ。でも依存症は本人が良ければそれで良しってモンでもあるから回収も難しい」
「強制回収できなかったんですね」
「それ以上にシステムの不具合も多かったけどな。最大の回収理由は情報管理システムの不具合による個人情報漏洩だよ」
そんなヤバイ機体が何でうちのマンションに、と美咲はごみ捨て場で寝ていた様子を思い出す。
漆原はうーんと少しだけ考え込むと、ああ、と何かに気付いたようだった。
「お前んとこってアンドロイドOKなの?」
「はい。あ、だからか!」
「アンドロイド受け入れ体制整ってるマンションあんまないからな」
「くそ~……」
「まあでも型番分かれば購入者は分かる。そうすりゃ返却して終わりだ。はい、問題。購入情報を調べる部署は?」
「え、えっと、販売管理部?」
「正解。そこの上長は?」
「知らないです」
漆原は当然のように答えた美咲の態度を鼻で笑った。
ざまあみろとでも言いたげなその表情から後ずさって一歩逃げるが、漆原は再び美咲の頭を掴んだ。
「俺だよ。俺は三部署持ってる。開発第一とセキュリティ管理部、それと販売管理部」
「あ~……」
「というわけで、これは俺の仕事。つまりはお前の仕事」
「うげっ!!」
美咲は強制的にパソコンの前に座らされ、いつものようにつむじをぺんぺんと叩かれてしまった。
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