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第三部 仲良し姉妹
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フレンチの前菜といえばパテドカンパーニュ、テリーヌ、コンフィ、エスカルゴなど。
夏休みの間、文化祭で出す前菜の料理をたくさん考えて作った。
旬の野菜でテリーヌ、チキンのコンフィ、豚や鶏レバーでパテドカンパーニュ。
「どれも美味しいけど、みんな思いついてそうなんだよねえ」
「それぞれが作った個性が味に出るんだから、被っていいと思うけどな」
「できれば、あたし一人しか作ってない物がいいんだよねえ」
「どうして?」
「同じ物が続いたら、またかってなるでしょ。一番に食べた物が味の基準になるから、それ以上に印象が残る物を作らないと、負ける可能性高くなる。どれも美味しいと思うから」
「勝ちに行こうとしてるね」
「そりゃ、やるからには選ばれたいもん。自分が作った物を、お金を払って食べてもらえるなんて、嬉しいでしょ」
「そうだね。お金が動くのは、責任も発生するけど、やりがいもあるもんね」
「もっと考えてみるよ。妥協はしたくない」
「うん。麻帆、頑張って」
お姉ちゃんの声援を受けながら、あたしは試行錯誤を繰り返し――
そして、試食&投票の日を迎えた。
6人の前菜担当者の料理が、クラス全員の前に並べられた。
誰がどれを作ったのかは秘密にし、食べている様子まで見てから、あたしたちは実習室を出た。準備室で投票の結果が出るのを待つ。
選考はコースどおりじゃなく、初めにメインを決めてから、前菜、スープ&パン、デザートの順になった。
あたしたちはメインを食べて、投票にも参加していた。
牛肉のパイ包み焼きと、魚はヒラメのデュグレレ風に決まった。
そして、あたしたち前菜班の番になった。誰が何を作ったのか当然わかっているし、試食もしたので、選ばれそうな物の予想はついている。そして自分が作った物が選ばれる事を願っている。
テリーヌは三人が作り、パテドカンパーニュを一人が作り、もう一人はサーモンのカクテルサラダ。みんなきれいな盛り付けで、華やか。そして美味しかった。
あたしが作ったのは三種のカナッペ。前菜(オードブル)というよりは先附(アミューズ)に近い。
クラッカーの上にじゃがいものピューレを広げて、その上に黒コショウがぴりりと効いたカマンベールチーズとうずらたまご、彩りに酢漬けにしたきゅうりとパプリカを小さく切って散らすようにのせた。
見た目は地味だけど、一口でぱくりといけて食べやすく、黒コショウと酢、クラッカーのほどよい塩味が食欲を刺激して、前菜に向いているかなと思った。
サーモンのカクテルを見たお姉ちゃんは、あれくらい派手なのが良かったんじゃないかなと、食べたそうにしていた。
サーモン、アボカド、トマト、クリームチーズがカクテルグラスに入れられ、味付けはワインビネガーとオリーブオイルと塩を混ぜた物。
美味しかったし、見た目は派手で映える。けど、前菜にしては量が多いかなと感じた。もちろん選ばれる可能性はある。量は減らせば対応可能だし。
誰も話をせずに、呼ばれるのを待っている。心臓がどきどきしすぎて、気分が悪くなってきた頃。
「お待たせ」と声がかかった。
一目散に走って行く子、あたしと一緒で、立ち上がれない子。それぞれのペースで結果を見に行く。
少し怖かった。一票もなかったらどうしようと、悪い方に気持ちがいきかける。
「麻帆、深呼吸して」
お姉ちゃんの声に従って、息を大きく吸い込み、ゆっくりと吐いた。
「落ち着いた? じゃ、行こっか」
どんな結果でも、受け止めよう。ダメだったら、感想を聞いて次に活かせばいい。
前向きに捉えて、準備室を出た。
期待と緊張で胸が高鳴る。
震える手を握りながらホワイトボードを見ると、どれも僅差だった。
その中で、わずかに正の本数が多いのは、花型を使った野菜のテリーヌと、あたしのカナッペだった。
「やった‥‥‥あった」
「やった! やったじゃない、麻帆!」
はしゃぐお姉ちゃんとは反対に、あたしは気が抜けてぼんやりと立ちつくした。
♢
すべての料理の投票が終わり、メニューが決まった。
オードブル(前菜) 夏野菜のテリーヌとカナッペ
スープ&パン オニオンスープ
ポワソン(魚料理) ヒラメのデュグレレ風
ソルベ(口直し) 梨のソルベ
アントレ(肉料理) 牛肉のパイ包み焼き
デセール(デザート)桃のパフェ・マカロンケーキ
メニュー作りはデザインセンスがある、フロア担当の女子が担当することになり、会場になる食堂の飾り付けも、彼女が中心になって進めることになった。
文化祭当日まで、あたしたちは各担当に分かれて、決まった料理を見た目も含めてもっと美味しくするために試行を重ねた。
「航くんに知らせないの?」
文化祭までと一週間となった日、姉が言った。
「航に? 航も忙しいんじゃない? 大学生なんだから、あたしたちに付き合わないでしょ」
「来るかどうかは航くんが決めるんだから、メッセージだけでも送っておいたら? 麻帆の料理食べたいんじゃないかな」
「食べたかったら自分で連絡してくるでしょ。近くにいるんだからさ」
航は地元から通える大学に進学した。合格の連絡をもらい、高校を卒業して実家に戻ったタイミングで一度会った。航はすぐに実家を出て一人暮らしを始めたから、あれ以来会っていない。
「遠慮してるのかもよ。麻帆も大変かもって」
「気を使うような奴じゃないよ、航は」
航も勉強とアルバイトと忙しいのだろう。
幼馴染とはいえ、環境が変われば付き合いも変わる。距離が開いてしまっても仕方がない。
それに中学高校の頃と違って、今は物理的な距離が縮まったから、会いたくなれば連絡が来るだろう。
今は航のことより、文化祭や進路のことで、頭がいっぱいだった。
夏休みの間、文化祭で出す前菜の料理をたくさん考えて作った。
旬の野菜でテリーヌ、チキンのコンフィ、豚や鶏レバーでパテドカンパーニュ。
「どれも美味しいけど、みんな思いついてそうなんだよねえ」
「それぞれが作った個性が味に出るんだから、被っていいと思うけどな」
「できれば、あたし一人しか作ってない物がいいんだよねえ」
「どうして?」
「同じ物が続いたら、またかってなるでしょ。一番に食べた物が味の基準になるから、それ以上に印象が残る物を作らないと、負ける可能性高くなる。どれも美味しいと思うから」
「勝ちに行こうとしてるね」
「そりゃ、やるからには選ばれたいもん。自分が作った物を、お金を払って食べてもらえるなんて、嬉しいでしょ」
「そうだね。お金が動くのは、責任も発生するけど、やりがいもあるもんね」
「もっと考えてみるよ。妥協はしたくない」
「うん。麻帆、頑張って」
お姉ちゃんの声援を受けながら、あたしは試行錯誤を繰り返し――
そして、試食&投票の日を迎えた。
6人の前菜担当者の料理が、クラス全員の前に並べられた。
誰がどれを作ったのかは秘密にし、食べている様子まで見てから、あたしたちは実習室を出た。準備室で投票の結果が出るのを待つ。
選考はコースどおりじゃなく、初めにメインを決めてから、前菜、スープ&パン、デザートの順になった。
あたしたちはメインを食べて、投票にも参加していた。
牛肉のパイ包み焼きと、魚はヒラメのデュグレレ風に決まった。
そして、あたしたち前菜班の番になった。誰が何を作ったのか当然わかっているし、試食もしたので、選ばれそうな物の予想はついている。そして自分が作った物が選ばれる事を願っている。
テリーヌは三人が作り、パテドカンパーニュを一人が作り、もう一人はサーモンのカクテルサラダ。みんなきれいな盛り付けで、華やか。そして美味しかった。
あたしが作ったのは三種のカナッペ。前菜(オードブル)というよりは先附(アミューズ)に近い。
クラッカーの上にじゃがいものピューレを広げて、その上に黒コショウがぴりりと効いたカマンベールチーズとうずらたまご、彩りに酢漬けにしたきゅうりとパプリカを小さく切って散らすようにのせた。
見た目は地味だけど、一口でぱくりといけて食べやすく、黒コショウと酢、クラッカーのほどよい塩味が食欲を刺激して、前菜に向いているかなと思った。
サーモンのカクテルを見たお姉ちゃんは、あれくらい派手なのが良かったんじゃないかなと、食べたそうにしていた。
サーモン、アボカド、トマト、クリームチーズがカクテルグラスに入れられ、味付けはワインビネガーとオリーブオイルと塩を混ぜた物。
美味しかったし、見た目は派手で映える。けど、前菜にしては量が多いかなと感じた。もちろん選ばれる可能性はある。量は減らせば対応可能だし。
誰も話をせずに、呼ばれるのを待っている。心臓がどきどきしすぎて、気分が悪くなってきた頃。
「お待たせ」と声がかかった。
一目散に走って行く子、あたしと一緒で、立ち上がれない子。それぞれのペースで結果を見に行く。
少し怖かった。一票もなかったらどうしようと、悪い方に気持ちがいきかける。
「麻帆、深呼吸して」
お姉ちゃんの声に従って、息を大きく吸い込み、ゆっくりと吐いた。
「落ち着いた? じゃ、行こっか」
どんな結果でも、受け止めよう。ダメだったら、感想を聞いて次に活かせばいい。
前向きに捉えて、準備室を出た。
期待と緊張で胸が高鳴る。
震える手を握りながらホワイトボードを見ると、どれも僅差だった。
その中で、わずかに正の本数が多いのは、花型を使った野菜のテリーヌと、あたしのカナッペだった。
「やった‥‥‥あった」
「やった! やったじゃない、麻帆!」
はしゃぐお姉ちゃんとは反対に、あたしは気が抜けてぼんやりと立ちつくした。
♢
すべての料理の投票が終わり、メニューが決まった。
オードブル(前菜) 夏野菜のテリーヌとカナッペ
スープ&パン オニオンスープ
ポワソン(魚料理) ヒラメのデュグレレ風
ソルベ(口直し) 梨のソルベ
アントレ(肉料理) 牛肉のパイ包み焼き
デセール(デザート)桃のパフェ・マカロンケーキ
メニュー作りはデザインセンスがある、フロア担当の女子が担当することになり、会場になる食堂の飾り付けも、彼女が中心になって進めることになった。
文化祭当日まで、あたしたちは各担当に分かれて、決まった料理を見た目も含めてもっと美味しくするために試行を重ねた。
「航くんに知らせないの?」
文化祭までと一週間となった日、姉が言った。
「航に? 航も忙しいんじゃない? 大学生なんだから、あたしたちに付き合わないでしょ」
「来るかどうかは航くんが決めるんだから、メッセージだけでも送っておいたら? 麻帆の料理食べたいんじゃないかな」
「食べたかったら自分で連絡してくるでしょ。近くにいるんだからさ」
航は地元から通える大学に進学した。合格の連絡をもらい、高校を卒業して実家に戻ったタイミングで一度会った。航はすぐに実家を出て一人暮らしを始めたから、あれ以来会っていない。
「遠慮してるのかもよ。麻帆も大変かもって」
「気を使うような奴じゃないよ、航は」
航も勉強とアルバイトと忙しいのだろう。
幼馴染とはいえ、環境が変われば付き合いも変わる。距離が開いてしまっても仕方がない。
それに中学高校の頃と違って、今は物理的な距離が縮まったから、会いたくなれば連絡が来るだろう。
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