STEOP 気になる異装のはとこさん

弧川ふき@ひのかみゆみ

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(月彦の視点) なぜか目立つ呼夢とそれを見る人

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 呼夢こゆめだ。友人数人で遊ぶことになったスポービルという名の施設に、あとから呼夢こゆめもきた。
 僕との関係について、周りはあまり触れない。
 兄弟みたいなものと思っているのかも。もしそうだったら、どっちが年上扱いなんだろう。
 でもまぁ、そんなことより、呼夢こゆめの格好だ。
 僕がこの格好で家を出たのを見たからか、あの「なんたら魔女がどうたらのメイド」の緑を基調とした格好をしている。
 ――これならコスチュームとして気付く人もいるんじゃ?
 呼夢こゆめの格好を見て生じた「おいマジか」という思いと、周囲への「何か反応ないの?」の思いが、心で暴れる。
 男子達はまったくの無反応だ。考えもしないのかも。
 四堂しどうさんは何かに悩んでいるように見える。――何だ?
 ほかの女子も無言だ。
 僕と呼夢こゆめが並んだ時、クール女子が言った。
「ふたりのさ、その…服装ってさ、もしかして……もしかして『お嬢様は魔女で初心うぶ』の魔女とメイド?」
 ――やっと言われた! しかもその通り!
 と思ってからこそ呼夢こゆめの顔を見てみた。
 それまでも明るかった呼夢こゆめの顔が、より一層明るくなった。
 また胸がうずいた。
呼夢こゆめが作ったんだよ」と僕が言うと、クール女子がうなずいた。
「道理で」
「道理で?」とはパッセが訊ねた。
呼夢こゆめ、服飾部だもんね」クール女子がそう言って、
「服飾・手芸部ね」と呼夢こゆめも。
 ふたりはそれを合言葉にしたみたいに、笑い合った。
「そうそれ」とクール女子がまた笑う。
 かなり仲が良さそうだ。
 ある時、別のクラスの男子のひとりが立ち上がって――
「ジュース買ってくるよ。何飲む?」
 みんな各々頼む。
 それに対する呼夢こゆめの声はなぜか目立った。
「レモン系とか。すっきり系で」
 その前に、質問をした男子が、「洲中すなかは何にするの?」と聞いていた。
 ――三組の男子なのかな……。
 思っていると、こっちにも。
「えっと、つきちゃん、だっけ」
 ――月ちゃん……まあ、サダッチにもそれでいいよって答えてたし…。
「何がいい?」と最終的に問われて。
 思いがこんがらがる。
「え、あ、えっと…呼夢こゆめと同じのでいいよ。……あ、洲中すなかさんね……と、同じやつで」
「――ああ、分かった」
 別のことも分かってないかと、急にドキドキした。
 なんでこんなに胸が鳴るんだろう。
 楽しい時間だった。いつもより体を動かしている。熱がこもる。自分のガーターを悔しがるのも楽しい、誰かにエールを送るのも。残念がるのさえも。
 でも別に、写真に撮りたいとは思わなかった。
 ――なんでだろ。未来が分からないから? うーん……。
 自分でも不確かだった。
 ――まあとにかく、こういうのは…憶えていればいい。どうせ撮るなら――
 呼夢こゆめを見た。
 ――いや、どうせならってだけだし。みんなのことをまだよく知らない。知っていって、みんなをもし撮りたくなるなら、これは特別でもなんでもない。
 僕はまだ、呼夢こゆめのことでさえ、そんなに撮らない。
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