STEOP 気になる異装のはとこさん

弧川ふき@ひのかみゆみ

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(月彦の視点) 四堂さんと変な男の子

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 ダムに行った日から数日。海と町中の中間くらいにある新ヶ木にいがきタワーを見に行った。
 個人的には、そこからの景色より、タワーそのものの方が気に入った。特にフォルム。だから激写の連続だ。

 それからまた数日後。リビングで呼夢こゆめと夏休みの課題をやっている時だった。
「ノルマ終わったの? ね、ここ教えて?」
 そう言った呼夢こゆめの隣に座り直して、どれどれ…と見やる。
「この文が表現しているのはどこなんだろう、ってまず探そう」
 少しヒントを出しても自力で解いてもらった。
「じゃ、これは?」
「考え方としては、まず、三角形を描くと分かるよ。その分母部分はここのことだから…――」
 これのヒントはこのくらいでいいか、と思ったが、
「ほら、やってみて」
 と僕が言っても、
「え、あ、ごめん、もう一回言って」
 だなんて。
「話はちゃんと聞いてよ」
「う、うん」
 ――あ、また、う、うん…だ。癖なのか? まあいいけど。
 なんか話を聴いてない時がある。
 ――最近までそんなこと無かったのに。いつ頃からかし出してて…。変な病気…じゃなきゃいいけど……。
 注意しておこうかな……と思ってすぐ、呼夢こゆめの声。
「できた!」
「よぉし、じゃあ完了だ」
 そこへ電話が掛かった。
 腕時計型からフォンボードに変形させたままリビングのテーブルの脇に置いていたので、手に取って画面を見る。そして分かった。
 サダッチだ。
「ねぇ、今、暇?」
「暇になったよ。で、何?」
 窓の方を見ながら、予想した。多分「遊ぼうぜー」これだ。
「今学校のヤツらといるんだよ。つきちゃんも来たらいいのにって話しててさ」
「ん~……じゃあ行こうかな、どこ?」
 僕が場所を聴いている傍らで、呼夢こゆめは筆記用具を片付け、宿題とともに自室に戻ったみたいだった、振り向いたらいなかった。
 場所の名を聞いてフォンで調べて、
「じゃあ友達の所に行ってきます」
 と言うと、キッチンにいたおばさんから、
「行ってらっしゃい」
 と送り出された。
「行ってきます」

 いつものカメラ「トリズン」もケースに入れてそのベルトのような紐を首に掛けている。
 ダムに行った時と同じ格好で、バスに乗って向かう。
 この姿を見た友人の反応はどうなのか、少し気になる。
 ――知ってたりして。何かの……魔女のコスだっけ。まぁそこまで変じゃないし、気付かれないかもだけど。

 スポービルという施設にやって来た。ここではテニスやバドミントン、ボウリング、ボルダリングなどができる――とサイトにあった。
 迎えのサダッチにつれられ案内された所(ボウリングエリア)にいたのは、パッセ(八瀬やせくん)と、同じクラスの女子2人と、別のクラスの5人(男3人・女2人)だった。代金を払い、近付く。
 別のクラスの女子1人をよく憶えている。転入してすぐの頃に揉めた相手。
「あ、この子、四堂しどうさん。前に、カン違いから衝突があったけど……」
 と、サダッチに言われ、僕は告げるべきだと思った。
「もう気にしてないよ」
「ほっ…よかった……」
 と言った彼女のフルネームは四堂しどう際美きわみというらしい。
 ――誰かを守る気持ちからだから悪い子じゃないって話なんだよな、突っ走りさえしなきゃ……失礼じゃなきゃイイし…。
 色んな出会いがあるなぁと思いながら、みんなに加わる。
 格好については何も言われなかった、ちょっと残念。
 カメラに関して別のクラスの男子が聞いたから、
「風景を撮るのが好きなんだ」
 と、みんなに言うつもりで答えた。
「いつも持ってるんだね」
 と、クール女子が言った。
「いつもじゃないよ。ただ、撮りたくなる瞬間を見逃したくない、かな。あと、こうしてると、安心する」
 するとクール女子が笑った。
「変な……変な…………変な男の子だね」
「そうだね」自分でも笑った。
 それから数分後、別のクラスの…さっき話したクール女子が、もう1人――女子をここに連れて来た。
「えっ」
 呼夢こゆめだった。
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