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6章
第54話 ゴブリン騒動
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冒険者ギルドにやって来ると、何だか騒がしい様子だった。
いつもの事だが、冒険者ギルドはネタが尽きない。
とは言え、それもこれもエクレアが騒動を巻き起こすからで、エクレアがいなかった3日間も何やら凄かったそうだ。そもそもあの時は、エクレアが検査入院中に勝手に病院から抜け出して、モンスターを狩りに行っていたからだ。
「また何かしたのか?」
「またってなに! 私何もしてないよ!」
「そうか。今回は違うんだな」
「今回ってなに! 私はいつも全速前進だよ!」
「そこが問題なんだよ。自重しろ、自重」
「どうして怒られないといけないの!」
エクレアはいつも通りのテンションだった。
その声が冒険者ギルドの中に響いてしまい、騒がしい中にさらに騒がしい奴が舞い込む。
「おー、エクレアじゃないか!」
「それからカイも久しぶりだな」
「おはようみんな! どうしたの? 何かあったの?」
エクレアはいつも通り人心掌握術にも似た圧倒的なコミュ力を発揮し、すぐさま冒険者に話を聞いた。
俺はその様子を後ろから見守るついでに買取をしてもらおうと思い、受付に向かう。
するとパフィが項垂れたまま溜息をついていた。
「はぁー」
「どうしたんだ、パフィさん」
俺は何気なく話しかけた。
するとパフィは俺の姿に気が付くと、いつも通りの営業スマイルを見せてくれる。
だが今回は眉根にしわが寄っていて、何だか元気がない。いや、空元気と言った具合か。
「どうしたんだ。疲れているなら休めばいいだろ」
「えっと、そうじゃないんです。実はここ最近……」
言葉が一瞬詰まった。
それからエクレアとほぼ同時に声を上げた。
「「ゴブリンによる被害が拡大している!」」
はい、ハモッタのでほぼ確定だ。どうやら今日の仮にゴブリンがやけに多かったのはそういう背景があるらしい。もちろん間違ってはいない。ゴブリンだけは多くてそれ以外は少ない。最終的なスコアはそうなってはいたが、森が異常な静けさに包まれていたのは逆にも何も恐怖心を駆り立てる材料でしかない。
「ゴブリンが増えているんだな」
「そうなんです。最近ゴブリンの被害がこんなに……」
そう言いながら指を差すと、たくさんのゴブリンの被害届けが依頼書として張り出されていた。
しかも大なり小なりゴブリンどもの動きが活発している背景は大体同じような場所らしい。大きめの巣でもあるのか、俺達が暴れに暴れた森の中心部から相当する。
「だがこの程度なら、フルードはまだしも王都だとしょっちゅうだぞ。基本は見向きもされないが、初心者が担当しているな」
「これだけでしたらね」
何か嫌な予感がした。雲行きが怪しくなると、パフィはこれでもかとうファイリングされたゴブリンの被害届けを俺の前に置いた。
ドン引きする量にたじろいでしまう。この俺ですら驚きのあまりの声も出ず、「おっ、おお」と喘いだ。
「どうですか、この量。流石に大変なんですよ!」
「そんなことを俺に言われてもな。悪い」
「いえ、私もすみません。それで本日はどのようなご用件でしょうか?」
「買取をして欲しいんだ。ちなみに相手はゴブリンな」
「ゴブリンですか!」
パフィは俺の顔を見て飛び跳ねた。
そんな表情をされると俺が悪い者みたいになるからやめて欲しい。
俺はこう見えてしっかりとゴブリンを狩って町の人たちのために頑張っている身だ。
だから注目を集めるような真似はやめて欲しいと、心の底からげんなりした。
「す、すみません。でもちょうどゴブリンでしたか」
「ああ。ちょうどゴブリンばっかりのエリアにエクレアと言ってきた帰りだからな」
「エクレアさんと! それは大変でしたね」
「ああ大変だった。エクレアの奴が何十匹も次から次へとゴブリンを倒すために、森の奥へ奥へ入って行くからな。ゴブリン共もビビって散り散りになるわ、奇襲して来るわで大変だった」
「そ、そうだったんですね。でも、ってそうじゃないです! エクレアさんは女の子ですよ!」
「そうだな。だから何だ。ゴブリンは確かに女を狙って襲う習性があるが、そんなことを言っていたら冒険者にはなっていない。それにエクレアなら大丈夫だ。ゴブリンたちから恐れられているみたいだ」
「酷い! 私はただ向かってくるゴブリンたちを熱線で焼き殺したり、剣で切り裂いたりしているだけだよ!」
「お前のやり方は惨いんだよ。今回だってゴブリンの死体の山が……悪い、ちょっと無しだ」
俺は気分が悪くなって顔を覆った。流石にあそこまで圧倒的な結果だと、ゴブリン達にも仲間意識も芽生えるだろう。
何をしても、例え人質を用意してもエクレアは突っ走って問答無用だろうから、俺は考えるだけで頭が痛くなった。
パフィも何となく理解できたのか、「あはは。大変ですね」と半ば話を広げたことを後悔している様子だ。
俺は慰めは要らないと思いつつ、ここはしっかり受け取っておく。
少しはエクレアも自重してほしいところだが、ゴブリンに恐怖される女はもう女じゃないと思ってしまった。絶対に口にはできないがな。
いつもの事だが、冒険者ギルドはネタが尽きない。
とは言え、それもこれもエクレアが騒動を巻き起こすからで、エクレアがいなかった3日間も何やら凄かったそうだ。そもそもあの時は、エクレアが検査入院中に勝手に病院から抜け出して、モンスターを狩りに行っていたからだ。
「また何かしたのか?」
「またってなに! 私何もしてないよ!」
「そうか。今回は違うんだな」
「今回ってなに! 私はいつも全速前進だよ!」
「そこが問題なんだよ。自重しろ、自重」
「どうして怒られないといけないの!」
エクレアはいつも通りのテンションだった。
その声が冒険者ギルドの中に響いてしまい、騒がしい中にさらに騒がしい奴が舞い込む。
「おー、エクレアじゃないか!」
「それからカイも久しぶりだな」
「おはようみんな! どうしたの? 何かあったの?」
エクレアはいつも通り人心掌握術にも似た圧倒的なコミュ力を発揮し、すぐさま冒険者に話を聞いた。
俺はその様子を後ろから見守るついでに買取をしてもらおうと思い、受付に向かう。
するとパフィが項垂れたまま溜息をついていた。
「はぁー」
「どうしたんだ、パフィさん」
俺は何気なく話しかけた。
するとパフィは俺の姿に気が付くと、いつも通りの営業スマイルを見せてくれる。
だが今回は眉根にしわが寄っていて、何だか元気がない。いや、空元気と言った具合か。
「どうしたんだ。疲れているなら休めばいいだろ」
「えっと、そうじゃないんです。実はここ最近……」
言葉が一瞬詰まった。
それからエクレアとほぼ同時に声を上げた。
「「ゴブリンによる被害が拡大している!」」
はい、ハモッタのでほぼ確定だ。どうやら今日の仮にゴブリンがやけに多かったのはそういう背景があるらしい。もちろん間違ってはいない。ゴブリンだけは多くてそれ以外は少ない。最終的なスコアはそうなってはいたが、森が異常な静けさに包まれていたのは逆にも何も恐怖心を駆り立てる材料でしかない。
「ゴブリンが増えているんだな」
「そうなんです。最近ゴブリンの被害がこんなに……」
そう言いながら指を差すと、たくさんのゴブリンの被害届けが依頼書として張り出されていた。
しかも大なり小なりゴブリンどもの動きが活発している背景は大体同じような場所らしい。大きめの巣でもあるのか、俺達が暴れに暴れた森の中心部から相当する。
「だがこの程度なら、フルードはまだしも王都だとしょっちゅうだぞ。基本は見向きもされないが、初心者が担当しているな」
「これだけでしたらね」
何か嫌な予感がした。雲行きが怪しくなると、パフィはこれでもかとうファイリングされたゴブリンの被害届けを俺の前に置いた。
ドン引きする量にたじろいでしまう。この俺ですら驚きのあまりの声も出ず、「おっ、おお」と喘いだ。
「どうですか、この量。流石に大変なんですよ!」
「そんなことを俺に言われてもな。悪い」
「いえ、私もすみません。それで本日はどのようなご用件でしょうか?」
「買取をして欲しいんだ。ちなみに相手はゴブリンな」
「ゴブリンですか!」
パフィは俺の顔を見て飛び跳ねた。
そんな表情をされると俺が悪い者みたいになるからやめて欲しい。
俺はこう見えてしっかりとゴブリンを狩って町の人たちのために頑張っている身だ。
だから注目を集めるような真似はやめて欲しいと、心の底からげんなりした。
「す、すみません。でもちょうどゴブリンでしたか」
「ああ。ちょうどゴブリンばっかりのエリアにエクレアと言ってきた帰りだからな」
「エクレアさんと! それは大変でしたね」
「ああ大変だった。エクレアの奴が何十匹も次から次へとゴブリンを倒すために、森の奥へ奥へ入って行くからな。ゴブリン共もビビって散り散りになるわ、奇襲して来るわで大変だった」
「そ、そうだったんですね。でも、ってそうじゃないです! エクレアさんは女の子ですよ!」
「そうだな。だから何だ。ゴブリンは確かに女を狙って襲う習性があるが、そんなことを言っていたら冒険者にはなっていない。それにエクレアなら大丈夫だ。ゴブリンたちから恐れられているみたいだ」
「酷い! 私はただ向かってくるゴブリンたちを熱線で焼き殺したり、剣で切り裂いたりしているだけだよ!」
「お前のやり方は惨いんだよ。今回だってゴブリンの死体の山が……悪い、ちょっと無しだ」
俺は気分が悪くなって顔を覆った。流石にあそこまで圧倒的な結果だと、ゴブリン達にも仲間意識も芽生えるだろう。
何をしても、例え人質を用意してもエクレアは突っ走って問答無用だろうから、俺は考えるだけで頭が痛くなった。
パフィも何となく理解できたのか、「あはは。大変ですね」と半ば話を広げたことを後悔している様子だ。
俺は慰めは要らないと思いつつ、ここはしっかり受け取っておく。
少しはエクレアも自重してほしいところだが、ゴブリンに恐怖される女はもう女じゃないと思ってしまった。絶対に口にはできないがな。
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