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第15章 戦間期編2
第10話 ダロノワ大統領との非公式会談(前)
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・・10・・
11の月6の日
午後8時
アルネセイラ旧市街区・ダロノワ亡命政府臨時大統領官邸
アカツキとリイナが息子との休日を過ごした翌日、リイナは一足先に軍務を終えて帰宅の途に着いたが、アカツキは資料を整えた後に上級将校用の蒸気自動車に乗ってアルネセイラの旧市街区にあるとある邸宅へ向かっていた。
行先はリイナとの会話にあった元・妖魔帝国軍大佐で、現・妖魔諸種族連合共和国亡命政府大統領ダロノワ・フィロソヴァの邸宅、すなわち大統領官邸である。
亡命政府設立以来、旧市街区にあった数少ない空き地が亡命政府の拠点となった。見た目はごくごく普通の上流階級の邸宅だが、内実、立派な亡命政府拠点である。内部には正式な国家設立を果たした際の準備委員会と内閣のメンバーが日々執務を行っていた。通信設備も型落ちではあるものの連合王国から供与され、将来に備えての体制は徐々にだが整えられていた。
アカツキが乗る蒸気自動車は間もなく大統領官邸へ到着しようとしていた。
・・Φ・・
夜のアルネセイラは新市街区や旧市街区にある歓楽街ならともかく、住宅街や政府関係庁舎付近ともなればだいぶ静かになる。
僕はその中を蒸気自動車でダロノワ臨時大統領の住処でもある大統領官邸へもうすぐ到着しようとしていた。
やや広い邸宅程度の面積を持つここは、何も言わなければどこかの国の大使館と言われても違和感はない。
正門には連合王国軍の兵士である衛兵がいて、僕が乗る車を確認すると敬礼して迎えてくれた。
彼等の役目は衛兵でありながら、亡命政府の監視も兼ねている。
いくら彼女等が妖魔帝国に反旗を翻したとはいえ、元は妖魔帝国の貴族や軍人達が多数を占める集団だ。だから無警戒というわけにはいかないのでこのような形を取っている。まあ、兵士レベルでは互いに談笑するような仲なんだけどね。
正門を通過してすぐに着く正面玄関には臨時大統領たるダロノワ大統領自ら迎えに来てくれていた。隣にはダロノワ大統領が大佐だった頃の副官、チェーホフ中佐もいる。彼は今、前世日本でいう官房長官のような立場たる臨時国務長官と軍事大臣の任についていた。
僕が車から降りると、二人とも軍人時代の癖が抜けきらないのか礼ではなく敬礼をする。形式は妖魔式ではなく人類諸国式だけどね。
「お久しぶりです、アカツキ中将閣下。本日はお時間を作って頂きありがとうございます」
「久しゅうございます、アカツキ中将閣下。本日は多忙の中でお越しくださり、感謝致します」
「二人ともお久しぶりです。今は貴女方は立派な閣僚です。どうか畏まらずに」
僕は彼女等が捕虜になった時と違い、敬語で話す。今は役職上中将たる僕より二人の方が上だからだ。
「とんでもないです、アカツキ中将閣下。閣下のお陰で私は臨時大統領の立場にいられるのですから」
「大統領の仰る通りです。かつては一介の軍人でしか無かった自分が今では国務長官兼軍事大臣なのですから。それに、このような立派な官邸まで設えてもらえたわけですし」
「僕がしたわけではありません。あくまできっかけを作っただけです。礼はマーチス元帥閣下や国王陛下に。あと、この邸宅ですが後は連合共和国の大使館になる予定ですし建設費は政権安定化したら払ってもらいますから」
「でも支払いは安定化してから。ならば実質、ですよね」
「今の所は、ですね。いつかは妖魔帝国から国民を解放する事を楽しみにしてますよ」
「ふふっ、ありがとうございます。では、応接室へご案内致しますね」
流石は元妖魔帝国貴族だけあってダロノワ大統領の所作は流麗だった。騎士たるチェーホフ国務長官もだ。
送迎を担当してくれる連合王国の軍人には戻って貰うことにした。帰りは邸宅の蒸気自動車――我が家の御者は運転士に職種変更している。もちろん、運転訓練も済んでいる。――に来てもらうからだ。
大統領官邸の中に入ると、警備担当の者は敬礼を、実務担当の者は礼をしてくれる。ここにいるのは戦友を僕達に殺された者もいるけれど、今は祖国解放の為に力を貸してくれる者への態度として接してくれる。
「前から思うのですが皆さん、随分敬意を払ってくれるのですね」
「アカツキ中将閣下が仰っていた、昨日までの宿敵は今日の同志ですよ。何せ人類諸国の雄たる連合王国で、同じように生きられているのですから」
「世論形成はダロノワ大統領、貴女の悲願であり私達が妖魔帝国に勝つ為に必要だからですよ。その為なら僕はかつての敵すら使いますから」
「うふふ、そういう事にしておきますね。ね、チェーホフ国務長官」
「はい、大統領閣下。アカツキ中将閣下は本当はお優しい方ですから。祖国ならば今頃洗脳されてどうなってるか。の扱いでしょうな」
なんだかすごい勘違いをされている気がする。
同じ道を歩む以上味方として接するけれど、それ以上の感情は無いんだけどな。
まあ、いいか。事実として彼女等も僕達にとっては不可欠な存在だし。
「アカツキ中将閣下、今日の会談の場はこちらになります。チェーホフ国務長官、ここまでで結構です。若干残っている残務処理が終わったら休んで構いません」
「承知致しました、大統領閣下。ではアカツキ中将閣下、自分はこれにて」
「ええ、チェーホフ国務長官。また今度」
チェーホフ国務長官はこの場を離れ、僕はダロノワ大統領に案内されて会談の場である応接室に入る。
室内にはミルクティーとクッキーが用意されていた。
彼女に促されて座り心地の良いソファに腰掛けると、ダロノワ大統領も座る。
「アカツキ中将閣下はお煙草を座れるのでしたよね。灰皿もご用意しました」
「心遣いありがとうございます。では失礼して」
僕は軍服のポケットから煙草を取り出すと火属性魔法で火をつけて、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
「大統領。亡命政権設立から三ヶ月が経過しましたが、どうですか? ほぼ一からの政権設立ですから何かと大変でしょうけど」
「最初の一ヶ月はドタバタしっぱなしでした。私を初めとして一部は貴族もいますから政治関係のノウハウはありますけれど、やはり大変でしたね。それでもあらゆる資材の提供や、連合王国政府からの人的・物的援助には助かっていますよ」
「なら良かった。足りないものがあれば言ってくだい。可能な範囲で僕が折衝役になりますので」
「アカツキ中将閣下もお忙しいのに、感謝致します。閣下には連合共和国軍の設立にもご尽力頂いておりますのに」
「一個旅団程度ならばどうにでもなりますよ。あくまで資金は貸与、武器も型落ち品ですし。流石に政府中枢や議会の反応もあるので最新式は渡せないのはご容赦を」
「お気になさらず、中将閣下。幾ら私達が味方とはいえ、かつての妖魔帝国軍。最新のライフルを頂くのは無理なのは存じておりますので」
「ご理解頂きありがとうございます。あ、でも、現在我々連合王国軍はご存知かと思いますが新式ライフルを開発中で四年後までに全てのライフルをこれに置き換える予定です。となれば現行のライフルをお渡しできると思いますよ」
「まあ、それは嬉しい話です。楽しみにしていますね。さて、今日お越し頂いたのはアカツキ中将閣下にご相談がありましてこの場を設けたのです」
現状の確認もそこそこに、ダロノワ大統領は本題を切り出してくる。笑顔だった表情も引き締まり、貴族らしくそして将来の為政者として相応しい顔つきになった。
「ご相談とはどのような? 手紙にも書かず直接顔を合わせてという事は、重要機密に値する話ですよね?」
「ええ。以前もお話しましたが、皇帝レオニードのお抱えである諜報機関は人類諸国のどこかに今日も潜んでいます。連邦については以前の作戦で撤退したでしょうけど、法国にはまだ確実にいると思われます。問題は法国の事なのでアカツキ中将閣下の連合王国が表立って動けない事ですね。法国についてはともかくとして、恐らくですが連合王国にもいるはずです。ただ、こちらについてはほとんど動けていないもしくは撤退した可能性があります」
「その根拠は? だとしたら手紙に書いても良かったのではないですか?」
「連合王国内にはいなくとも共和国と法国から入り込まれる可能性を鑑みて、です。ここに拠点が無くとも今は鉄道によって正規手段によって国境さえ越えれば容易に移動が出来るようになりましたから」
僕はダロノワ大統領の矛盾めいた発言に対して疑問を投げかける。
連合王国軍も情報機関も、法国に妖魔帝国の諜報員が潜伏しているであろう事は知っている。
ただ、ダロノワ大統領の言うように法国内については国家主権の問題もあるから連合王国は目立った対策と活動は出来ず、結果として未だに潜んでいる人物の発見にまで至っていなかった。これは法国の捜査体制が心許ないのもあるけれど、妖魔帝国諜報員が相当に優秀なのが原因だろうね。
連合王国については連邦の捜索と作戦執行に伴って王都や主要都市を中心に当然捜索活動を行っている。しかしこっちも成果はほとんど無く、結果としてダロノワ大統領のような推測が連合王国情報機関内にあった。
となると、妖魔帝国の諜報活動は法国かもしくは共和国を拠点に活動しているのだろうとひとまず結論付けられていた。
このように連合王国内には妖魔帝国諜報員の付入る隙がほとんど無い状況を構築出来たのだけれど、それでも国外諜報員に対する防諜として、ダロノワ大統領はあえて手紙にも内容は書かなかったんだろう。
「なるほど。最もな理由ですね。ちなみにお聞きしますが、協商連合にいる可能性はダロノワ大統領はどう思いますか?」
「どうでしょう……。あそこは一度政争が起きておりますから、以前よりは情報を得やすくなっているかもしれません。妄想の範囲を越えませんけど、諜報機関員のゾリャーギやブライフマンがいるか、いたか。現在系か過去形かまでは分かりませんけど、どっちかかもしれませんね」
「ご意見感謝します。確かに協商連合は政争前ほどの結束力はありませんから、注意しておきましょう」
「はい。協商連合は連合王国の最重要同盟国だけに疑いたくはありませんが、諜報関係については常に疑えが鉄則ですので。話題が少し逸れましたね。それでは相談内容をお話しましょうか」
「ええ、お願いします」
僕とダロノワ大統領は一度紅茶を口に含んで一息を入れると、ダロノワ大統領は僕の目をじっと見てこう言った。
「アカツキ中将閣下。我々にしか出来ない任務を始めたいというのが今回の相談内容です。それは私達の中から人員を選抜し、妖魔帝国に潜入させ諜報活動を行わせる事です」
11の月6の日
午後8時
アルネセイラ旧市街区・ダロノワ亡命政府臨時大統領官邸
アカツキとリイナが息子との休日を過ごした翌日、リイナは一足先に軍務を終えて帰宅の途に着いたが、アカツキは資料を整えた後に上級将校用の蒸気自動車に乗ってアルネセイラの旧市街区にあるとある邸宅へ向かっていた。
行先はリイナとの会話にあった元・妖魔帝国軍大佐で、現・妖魔諸種族連合共和国亡命政府大統領ダロノワ・フィロソヴァの邸宅、すなわち大統領官邸である。
亡命政府設立以来、旧市街区にあった数少ない空き地が亡命政府の拠点となった。見た目はごくごく普通の上流階級の邸宅だが、内実、立派な亡命政府拠点である。内部には正式な国家設立を果たした際の準備委員会と内閣のメンバーが日々執務を行っていた。通信設備も型落ちではあるものの連合王国から供与され、将来に備えての体制は徐々にだが整えられていた。
アカツキが乗る蒸気自動車は間もなく大統領官邸へ到着しようとしていた。
・・Φ・・
夜のアルネセイラは新市街区や旧市街区にある歓楽街ならともかく、住宅街や政府関係庁舎付近ともなればだいぶ静かになる。
僕はその中を蒸気自動車でダロノワ臨時大統領の住処でもある大統領官邸へもうすぐ到着しようとしていた。
やや広い邸宅程度の面積を持つここは、何も言わなければどこかの国の大使館と言われても違和感はない。
正門には連合王国軍の兵士である衛兵がいて、僕が乗る車を確認すると敬礼して迎えてくれた。
彼等の役目は衛兵でありながら、亡命政府の監視も兼ねている。
いくら彼女等が妖魔帝国に反旗を翻したとはいえ、元は妖魔帝国の貴族や軍人達が多数を占める集団だ。だから無警戒というわけにはいかないのでこのような形を取っている。まあ、兵士レベルでは互いに談笑するような仲なんだけどね。
正門を通過してすぐに着く正面玄関には臨時大統領たるダロノワ大統領自ら迎えに来てくれていた。隣にはダロノワ大統領が大佐だった頃の副官、チェーホフ中佐もいる。彼は今、前世日本でいう官房長官のような立場たる臨時国務長官と軍事大臣の任についていた。
僕が車から降りると、二人とも軍人時代の癖が抜けきらないのか礼ではなく敬礼をする。形式は妖魔式ではなく人類諸国式だけどね。
「お久しぶりです、アカツキ中将閣下。本日はお時間を作って頂きありがとうございます」
「久しゅうございます、アカツキ中将閣下。本日は多忙の中でお越しくださり、感謝致します」
「二人ともお久しぶりです。今は貴女方は立派な閣僚です。どうか畏まらずに」
僕は彼女等が捕虜になった時と違い、敬語で話す。今は役職上中将たる僕より二人の方が上だからだ。
「とんでもないです、アカツキ中将閣下。閣下のお陰で私は臨時大統領の立場にいられるのですから」
「大統領の仰る通りです。かつては一介の軍人でしか無かった自分が今では国務長官兼軍事大臣なのですから。それに、このような立派な官邸まで設えてもらえたわけですし」
「僕がしたわけではありません。あくまできっかけを作っただけです。礼はマーチス元帥閣下や国王陛下に。あと、この邸宅ですが後は連合共和国の大使館になる予定ですし建設費は政権安定化したら払ってもらいますから」
「でも支払いは安定化してから。ならば実質、ですよね」
「今の所は、ですね。いつかは妖魔帝国から国民を解放する事を楽しみにしてますよ」
「ふふっ、ありがとうございます。では、応接室へご案内致しますね」
流石は元妖魔帝国貴族だけあってダロノワ大統領の所作は流麗だった。騎士たるチェーホフ国務長官もだ。
送迎を担当してくれる連合王国の軍人には戻って貰うことにした。帰りは邸宅の蒸気自動車――我が家の御者は運転士に職種変更している。もちろん、運転訓練も済んでいる。――に来てもらうからだ。
大統領官邸の中に入ると、警備担当の者は敬礼を、実務担当の者は礼をしてくれる。ここにいるのは戦友を僕達に殺された者もいるけれど、今は祖国解放の為に力を貸してくれる者への態度として接してくれる。
「前から思うのですが皆さん、随分敬意を払ってくれるのですね」
「アカツキ中将閣下が仰っていた、昨日までの宿敵は今日の同志ですよ。何せ人類諸国の雄たる連合王国で、同じように生きられているのですから」
「世論形成はダロノワ大統領、貴女の悲願であり私達が妖魔帝国に勝つ為に必要だからですよ。その為なら僕はかつての敵すら使いますから」
「うふふ、そういう事にしておきますね。ね、チェーホフ国務長官」
「はい、大統領閣下。アカツキ中将閣下は本当はお優しい方ですから。祖国ならば今頃洗脳されてどうなってるか。の扱いでしょうな」
なんだかすごい勘違いをされている気がする。
同じ道を歩む以上味方として接するけれど、それ以上の感情は無いんだけどな。
まあ、いいか。事実として彼女等も僕達にとっては不可欠な存在だし。
「アカツキ中将閣下、今日の会談の場はこちらになります。チェーホフ国務長官、ここまでで結構です。若干残っている残務処理が終わったら休んで構いません」
「承知致しました、大統領閣下。ではアカツキ中将閣下、自分はこれにて」
「ええ、チェーホフ国務長官。また今度」
チェーホフ国務長官はこの場を離れ、僕はダロノワ大統領に案内されて会談の場である応接室に入る。
室内にはミルクティーとクッキーが用意されていた。
彼女に促されて座り心地の良いソファに腰掛けると、ダロノワ大統領も座る。
「アカツキ中将閣下はお煙草を座れるのでしたよね。灰皿もご用意しました」
「心遣いありがとうございます。では失礼して」
僕は軍服のポケットから煙草を取り出すと火属性魔法で火をつけて、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
「大統領。亡命政権設立から三ヶ月が経過しましたが、どうですか? ほぼ一からの政権設立ですから何かと大変でしょうけど」
「最初の一ヶ月はドタバタしっぱなしでした。私を初めとして一部は貴族もいますから政治関係のノウハウはありますけれど、やはり大変でしたね。それでもあらゆる資材の提供や、連合王国政府からの人的・物的援助には助かっていますよ」
「なら良かった。足りないものがあれば言ってくだい。可能な範囲で僕が折衝役になりますので」
「アカツキ中将閣下もお忙しいのに、感謝致します。閣下には連合共和国軍の設立にもご尽力頂いておりますのに」
「一個旅団程度ならばどうにでもなりますよ。あくまで資金は貸与、武器も型落ち品ですし。流石に政府中枢や議会の反応もあるので最新式は渡せないのはご容赦を」
「お気になさらず、中将閣下。幾ら私達が味方とはいえ、かつての妖魔帝国軍。最新のライフルを頂くのは無理なのは存じておりますので」
「ご理解頂きありがとうございます。あ、でも、現在我々連合王国軍はご存知かと思いますが新式ライフルを開発中で四年後までに全てのライフルをこれに置き換える予定です。となれば現行のライフルをお渡しできると思いますよ」
「まあ、それは嬉しい話です。楽しみにしていますね。さて、今日お越し頂いたのはアカツキ中将閣下にご相談がありましてこの場を設けたのです」
現状の確認もそこそこに、ダロノワ大統領は本題を切り出してくる。笑顔だった表情も引き締まり、貴族らしくそして将来の為政者として相応しい顔つきになった。
「ご相談とはどのような? 手紙にも書かず直接顔を合わせてという事は、重要機密に値する話ですよね?」
「ええ。以前もお話しましたが、皇帝レオニードのお抱えである諜報機関は人類諸国のどこかに今日も潜んでいます。連邦については以前の作戦で撤退したでしょうけど、法国にはまだ確実にいると思われます。問題は法国の事なのでアカツキ中将閣下の連合王国が表立って動けない事ですね。法国についてはともかくとして、恐らくですが連合王国にもいるはずです。ただ、こちらについてはほとんど動けていないもしくは撤退した可能性があります」
「その根拠は? だとしたら手紙に書いても良かったのではないですか?」
「連合王国内にはいなくとも共和国と法国から入り込まれる可能性を鑑みて、です。ここに拠点が無くとも今は鉄道によって正規手段によって国境さえ越えれば容易に移動が出来るようになりましたから」
僕はダロノワ大統領の矛盾めいた発言に対して疑問を投げかける。
連合王国軍も情報機関も、法国に妖魔帝国の諜報員が潜伏しているであろう事は知っている。
ただ、ダロノワ大統領の言うように法国内については国家主権の問題もあるから連合王国は目立った対策と活動は出来ず、結果として未だに潜んでいる人物の発見にまで至っていなかった。これは法国の捜査体制が心許ないのもあるけれど、妖魔帝国諜報員が相当に優秀なのが原因だろうね。
連合王国については連邦の捜索と作戦執行に伴って王都や主要都市を中心に当然捜索活動を行っている。しかしこっちも成果はほとんど無く、結果としてダロノワ大統領のような推測が連合王国情報機関内にあった。
となると、妖魔帝国の諜報活動は法国かもしくは共和国を拠点に活動しているのだろうとひとまず結論付けられていた。
このように連合王国内には妖魔帝国諜報員の付入る隙がほとんど無い状況を構築出来たのだけれど、それでも国外諜報員に対する防諜として、ダロノワ大統領はあえて手紙にも内容は書かなかったんだろう。
「なるほど。最もな理由ですね。ちなみにお聞きしますが、協商連合にいる可能性はダロノワ大統領はどう思いますか?」
「どうでしょう……。あそこは一度政争が起きておりますから、以前よりは情報を得やすくなっているかもしれません。妄想の範囲を越えませんけど、諜報機関員のゾリャーギやブライフマンがいるか、いたか。現在系か過去形かまでは分かりませんけど、どっちかかもしれませんね」
「ご意見感謝します。確かに協商連合は政争前ほどの結束力はありませんから、注意しておきましょう」
「はい。協商連合は連合王国の最重要同盟国だけに疑いたくはありませんが、諜報関係については常に疑えが鉄則ですので。話題が少し逸れましたね。それでは相談内容をお話しましょうか」
「ええ、お願いします」
僕とダロノワ大統領は一度紅茶を口に含んで一息を入れると、ダロノワ大統領は僕の目をじっと見てこう言った。
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