異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

文字の大きさ
上 下
218 / 250
第14章 仙台方面奪還作戦編Ⅱ

第18話 特務小隊、奮戦す

しおりを挟む
 ・・18・・
「知花、上野少尉と坂井曹長はどうだ?」

「応急処置はしたけどこのままだと危ないかな……。二人ともトリアージレッド。上野少尉は出血量が多いし、坂井曹長は意識レベルが低下してる。魔法軍医じゃない私だとこれ以上の治療は難しいし、設備も必要だね」

「分かった。それなら一秒でも早くヤツらを倒そう」

 隊員達が洗脳されたエンザリアをなるべく近づけさせないよう法撃を続けるなかで、孝弘はすぐの反撃を決心する。

「部隊を高速機動戦班と陣地防衛班に分ける。知花、大輝、ここに残ってくれ。慎吾少佐と東山少尉に緒川曹長は陣地防衛、敵迎撃を」

「了解しました」

「はっ」

「了解!」

「高速機動戦班は、前衛が俺と有都大尉。後衛が水帆と華蓮大尉。金山中尉は二人を守る役目をしつつ側面からの攻撃を対処」

「はっ!」

「分かったわ!」

「はぁい!   了解しました!」

「了解です」

「米田中尉と鏡島曹長、笹山少尉と津山曹長はツーマンセルで中衛担当。俺と有都大尉の支援をしつつ金山中尉が対処しきれない場合は後衛の防御役を頼みたい」

「はっ」

「了解っ」

「了解しました」

「了解」

「詠唱準備、弾薬装填完了後の二〇秒後に突撃する」

『サー!!   イェッサー!!』

 急造の防衛陣地のあちこちから詠唱準備の声音が聞こえ、マガジンの装填音が響く。矢をつがう者もいた。
 二〇秒後はすぐに訪れる。

「突、撃ッッ!!」

『うぉぉぉぉぉ!!』

 孝弘とアルトが身体強化魔法を最大限に付与して飛び出した直後、まずは水帆の上級火属性爆発系魔法が飛来する。広範囲に視界不良を起こした攻撃は洗脳されたエンザリアの索敵力を低下させる。
 直後にエンザリアを襲ったのはカレンが放った魔法の矢だ。三、四人のエンザリアはこの射撃で魔法障壁の半分以上が削られた。
 それを孝弘とアルトが見逃すはずがなく、二人のエンザリアを孝弘が銃撃で。もう二人のエンザリアをアルトの槍が貫いた。

 残り一九体。

『SA8よりSA1、6。二時方向、二五〇メートル先よりエンザリア三人の法撃。法撃妨害します。二、一、今』

 宏光の法撃はエンザリア三体が光線を撃つ直前に命中し、天使達は『法撃中止キャンセル』を強要される。

「ハイチャージ、ツインショット!」

「貫けぇ!!」

 孝弘とアルトは一人ずつエンザリアを始末し、残り一人は米田中尉と鏡島曹長が協同撃破した。

 残り一六人。

『SA8よりSA1、6!   七時方向の四人と三時方向からの三人挟撃来ます!   七時方向は僕の方で片付けます!』

『三時方向ね。分かったわ』

『SA8、七時方向は私もやるよー!』

『助かります!』

「SA6は七時方向を」

「分かりました!」

 ここで孝弘と有都は二手に分かれ米田・鏡島組は孝弘の、笹山・津山組はアルトのカバーに回る。

『散りなさい』

『黒き炎の塵となれ』

『ぶっとべー!!』

 水帆は水属性凍結貫通系中級魔法を、宏光は火・闇複合属性中級魔法を、カレンは多段分裂系の魔法矢射撃を発動しそれぞれがエンザリアのいる地点に命中。三時方向と七時方向のエンザリアは残り一人ずつとなる。

「疾くと散れ」

「とっとと消えやがれ!」

 孝弘とアルトは残ったエンザリアを難なく撃破した。

 残り九人。

「SA8、互いに近くにいる二人と三人を動作停止系魔法で動きを止められるか?」

『動作停止系了解!   発動まで一〇秒ください!』

「十分だ。それまでにもう一体片付ける」

『SA6、一体撃破!   カレン、俺の近くにいるやつ一人をぶっ飛ばせ!』

「はいはーい!!」

『SA1、背後から接近するやつは私がやるわ。訂正、今殺った』

「助かる!   さぁ、これで終いだ!」

『縛れよ縛れ。地獄の底より這い寄るは、呪いの腕達。沈め、沈め、沈んで離れず。動けると思うな堕天使達よ。掴まれたら最期。それが貴様等の終焉と知れ。『呪腕顕現カース・ハンズ』』

 宏光が呪文の詠唱を終えると、地面から生えてきたのは数多の黒腕。それらはエンザリアの脚を掴むと地獄へ引きずり込むが如く彼らを地に埋めていく。こうなればもうどこへも逃げられなかった。

「その命、もらったぁぁぁ!!」

 孝弘が残弾全てをハイチャージにしてエンザリア五体に叩き込む。

「エンザリア、全撃破!!」

 孝弘が宣言すると隊員達から歓声が上がった。

「見事、見事だ。操り人形を全て倒すとは。ただな、いるんだよ。操られておらぬ堕天使もな」

『超高濃度法撃反応!?!?   SA3、4、皆逃げてくださ――』

 宏光が悲鳴のような叫び声を上げた直後のことだった。
 突如として大輝達の後方に現れた、黒く爛れ汚物のような液体が滴り落ちそうなヘイローを持った男はドス黒い光線を放ったのだ。
 禍々しい法撃の先にあるのは、大輝や知花達のいる急造防衛陣地。

「き、きさまぁぁぁぁぁ!!!!」

 乱入者に孝弘の怒号は届かず、銃撃では黒の光線を逸らすには到底威力不足で。

「大輝、知花ぁぁぁ?!?!」

 水帆が展開した魔法障壁では足りるわけがなく。

「先生ぇぇぇぇ!!!!」

「いやぁぁぁ?!?!」

 アルトとカレンが魔法障壁を展開してもやはり防ぐには足らず。
 陣地は木っ端微塵に黒き光線に吹き飛ばされてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

処理中です...