78 / 250
第6章 旧首都・東京奪還前哨戦編
第3話 大勝負の作戦に第一特務連隊の面々は①
しおりを挟む
・・3・・
11月26日
午後3時15分
東京都立川市・立川基地・日本軍東京西部方面軍前線司令部
伊丹で今後の日本の命運が分かれる作戦について話され最終確認が行われた翌日。その前線に立つこととなる東部方面攻略軍と東京西部方面攻略軍の指揮官クラスは、ドラゴンによる奇襲以降敵の攻撃が低調化しているとはいえ最前線で戦闘が繰り広げられる中で早速午前中から作戦会議が行われた。当然この場には第一特務連隊の長た
る璃佳と副官の熊川は呼ばれていた。
二人が参加した会議が終わったのは昼過ぎ。彼女はそのまま第一特務連隊の大隊長クラスと戦術分析官の佐渡、そして孝弘達四人を呼集し作戦の概要を伝える事とした。熊川は璃佳の代理として各方面の部隊との調整に回ることとなり、不参加であるが。
時刻は午後三時過ぎ。孝弘達にせよ、大隊長達にせよ、璃佳が入室した際に感じた雰囲気から「いよいよ大きな動きがあるんだろう」と察していた。今月に入った段階で璃佳がそれとなく匂わせていたからである。
立川基地内の小会議室。彼等を集めた璃佳は到着し着席してからすぐに口を開いた。
「お前達も何となくは感じていただろうけど、いよいよ本格的な首都奪還作戦が始まるよ」
「おお、遂にか!」
「ドラゴンの奇襲もあった。年末までに東京奪還が目標なら今だろうとは思っていたが」
「やっと東京に戻ってこれるんだね。六条のお嬢様が伝えてくれた件もあるし、早く助けてあげないと」
川崎、高富、長浜の順にそれぞれが違うことを言ったが表情は明るかった。ようやく首都を取り戻す作戦が明確になったからだ。佐渡も発言はしなかったものの、いつもに比べて表情は明るめだ。彼女が川崎出身というのもあるだろう。いくら家族が無事避難しているとはいえ、故郷を奪われた身。それがもうすぐ戻ってくるとなれば当然の心境だった。
「東京を奪還出来れば道筋も明るくなる。首都を奪い返せたという実績はなんとしても必要だからな」
「ええ。いつまでも東京が神聖帝国の手に落ちたままなんて看過できないもの。長浜少佐が言うように捕らえられた人達もいるし」
「東京都心まであと少しまで来たんだ。ここでやらなきゃいつやるってな」
「ドラゴンの奇襲があった辺り、神聖帝国も焦りがあるのかも。ドラゴンは今のところ観測出来る範囲では向こうにとって貴重な航空戦力。これを叩いた今なら、さらなる追撃で一気に首都奪還に動くのは適切だもんね」
孝弘、水帆、大輝、知花の順に言う。出身が東海地方で直接の関わりはあまりないものの、旅行等で何度か訪れた機会のある孝弘達も似たような反応をしていた。
璃佳は彼等の反応を見ながら少し間を置いて、話を続けた。
「この場にいる全員が知っての通り、東京都心はもう目の前にあるといっていい段階まできた。そこで統合司令本部は年末までの首都奪還を達成する為、戦力を集中投入する手段に打って出ることとした。ただし、南の神奈川方面と私達東京西部方面だけじゃない。兼ねてよりあえて温存しておいた戦力をここで投入する。その数は四〇〇〇〇。場所は千葉九十九里南部。白子・上総一宮方面。つまり、戦線をもう一つ作る上陸作戦も同時に行われるってわけ」
璃佳の発言内容には佐渡を除く全員が驚いた。元々上陸作戦が出来るだけの戦力があるのは知っていたし、西の方の師団が上陸作戦の訓練をしているのも知っていた。海軍が未だ健在であるから手段として残っているのも知っていた。ただし、ここで投入するにしてもまさか四万もとは思わなかったのだ。
対して、戦術分析官として各情報を集めていた佐渡はあまり驚かなかった。物資や兵力の移動に特異的な兆候が見られていたからだ。具体的には海軍の上陸に必要な資材や艦艇の動向。陸軍や魔法軍の移動などだ。
だから佐渡は今の話を聞いて心中でこう思っていた。
(東京周辺にいる神聖帝国兵力が不明ではあるものの相当数いるのは間違いなく、私がいる東京西部や神奈川方面に進出している正面兵力に負担が大きくかかるのは想定の範囲内。とはいえ、出来るだけ損害は減らしたい。となると、ノルマンディーよろしくどこかに上陸してもう一つ戦線を作れば敵の兵力は分散する。白子・上総一宮の九十九里南部は比較的敵の兵力が少ない地域。こっちに比べて銚子にはずっと近いから神聖帝国がすぐに察知したら厳しい展開になりかねないけど、こっちの負担はずっと少なくなる。なるほど。上は愚の骨頂とされる戦力の逐次投入はせず勝負に出たわけか。)
佐渡の読みはほぼ的中していた。それは璃佳が述べる作戦内容に現れていた。
「総員ホログラム画面で資料を開いて。本作戦の作戦名は『反撃の剣』。私達のいる東京西部方面攻略軍と神奈川方面の東部方面攻略軍、そして房総半島上陸軍。さらには海軍や空軍も参戦する総出の作戦だよ」
11月26日
午後3時15分
東京都立川市・立川基地・日本軍東京西部方面軍前線司令部
伊丹で今後の日本の命運が分かれる作戦について話され最終確認が行われた翌日。その前線に立つこととなる東部方面攻略軍と東京西部方面攻略軍の指揮官クラスは、ドラゴンによる奇襲以降敵の攻撃が低調化しているとはいえ最前線で戦闘が繰り広げられる中で早速午前中から作戦会議が行われた。当然この場には第一特務連隊の長た
る璃佳と副官の熊川は呼ばれていた。
二人が参加した会議が終わったのは昼過ぎ。彼女はそのまま第一特務連隊の大隊長クラスと戦術分析官の佐渡、そして孝弘達四人を呼集し作戦の概要を伝える事とした。熊川は璃佳の代理として各方面の部隊との調整に回ることとなり、不参加であるが。
時刻は午後三時過ぎ。孝弘達にせよ、大隊長達にせよ、璃佳が入室した際に感じた雰囲気から「いよいよ大きな動きがあるんだろう」と察していた。今月に入った段階で璃佳がそれとなく匂わせていたからである。
立川基地内の小会議室。彼等を集めた璃佳は到着し着席してからすぐに口を開いた。
「お前達も何となくは感じていただろうけど、いよいよ本格的な首都奪還作戦が始まるよ」
「おお、遂にか!」
「ドラゴンの奇襲もあった。年末までに東京奪還が目標なら今だろうとは思っていたが」
「やっと東京に戻ってこれるんだね。六条のお嬢様が伝えてくれた件もあるし、早く助けてあげないと」
川崎、高富、長浜の順にそれぞれが違うことを言ったが表情は明るかった。ようやく首都を取り戻す作戦が明確になったからだ。佐渡も発言はしなかったものの、いつもに比べて表情は明るめだ。彼女が川崎出身というのもあるだろう。いくら家族が無事避難しているとはいえ、故郷を奪われた身。それがもうすぐ戻ってくるとなれば当然の心境だった。
「東京を奪還出来れば道筋も明るくなる。首都を奪い返せたという実績はなんとしても必要だからな」
「ええ。いつまでも東京が神聖帝国の手に落ちたままなんて看過できないもの。長浜少佐が言うように捕らえられた人達もいるし」
「東京都心まであと少しまで来たんだ。ここでやらなきゃいつやるってな」
「ドラゴンの奇襲があった辺り、神聖帝国も焦りがあるのかも。ドラゴンは今のところ観測出来る範囲では向こうにとって貴重な航空戦力。これを叩いた今なら、さらなる追撃で一気に首都奪還に動くのは適切だもんね」
孝弘、水帆、大輝、知花の順に言う。出身が東海地方で直接の関わりはあまりないものの、旅行等で何度か訪れた機会のある孝弘達も似たような反応をしていた。
璃佳は彼等の反応を見ながら少し間を置いて、話を続けた。
「この場にいる全員が知っての通り、東京都心はもう目の前にあるといっていい段階まできた。そこで統合司令本部は年末までの首都奪還を達成する為、戦力を集中投入する手段に打って出ることとした。ただし、南の神奈川方面と私達東京西部方面だけじゃない。兼ねてよりあえて温存しておいた戦力をここで投入する。その数は四〇〇〇〇。場所は千葉九十九里南部。白子・上総一宮方面。つまり、戦線をもう一つ作る上陸作戦も同時に行われるってわけ」
璃佳の発言内容には佐渡を除く全員が驚いた。元々上陸作戦が出来るだけの戦力があるのは知っていたし、西の方の師団が上陸作戦の訓練をしているのも知っていた。海軍が未だ健在であるから手段として残っているのも知っていた。ただし、ここで投入するにしてもまさか四万もとは思わなかったのだ。
対して、戦術分析官として各情報を集めていた佐渡はあまり驚かなかった。物資や兵力の移動に特異的な兆候が見られていたからだ。具体的には海軍の上陸に必要な資材や艦艇の動向。陸軍や魔法軍の移動などだ。
だから佐渡は今の話を聞いて心中でこう思っていた。
(東京周辺にいる神聖帝国兵力が不明ではあるものの相当数いるのは間違いなく、私がいる東京西部や神奈川方面に進出している正面兵力に負担が大きくかかるのは想定の範囲内。とはいえ、出来るだけ損害は減らしたい。となると、ノルマンディーよろしくどこかに上陸してもう一つ戦線を作れば敵の兵力は分散する。白子・上総一宮の九十九里南部は比較的敵の兵力が少ない地域。こっちに比べて銚子にはずっと近いから神聖帝国がすぐに察知したら厳しい展開になりかねないけど、こっちの負担はずっと少なくなる。なるほど。上は愚の骨頂とされる戦力の逐次投入はせず勝負に出たわけか。)
佐渡の読みはほぼ的中していた。それは璃佳が述べる作戦内容に現れていた。
「総員ホログラム画面で資料を開いて。本作戦の作戦名は『反撃の剣』。私達のいる東京西部方面攻略軍と神奈川方面の東部方面攻略軍、そして房総半島上陸軍。さらには海軍や空軍も参戦する総出の作戦だよ」
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる