異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第6章 旧首都・東京奪還前哨戦編

第3話 大勝負の作戦に第一特務連隊の面々は①

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 ・・3・・
 11月26日
 午後3時15分
 東京都立川市・立川基地・日本軍東京西部方面軍前線司令部


 伊丹で今後の日本の命運が分かれる作戦について話され最終確認が行われた翌日。その前線に立つこととなる東部方面攻略軍と東京西部方面攻略軍の指揮官クラスは、ドラゴンによる奇襲以降敵の攻撃が低調化しているとはいえ最前線で戦闘が繰り広げられる中で早速午前中から作戦会議が行われた。当然この場には第一特務連隊の長た
る璃佳と副官の熊川は呼ばれていた。

 二人が参加した会議が終わったのは昼過ぎ。彼女はそのまま第一特務連隊の大隊長クラスと戦術分析官の佐渡、そして孝弘達四人を呼集し作戦の概要を伝える事とした。熊川は璃佳の代理として各方面の部隊との調整に回ることとなり、不参加であるが。

 時刻は午後三時過ぎ。孝弘達にせよ、大隊長達にせよ、璃佳が入室した際に感じた雰囲気から「いよいよ大きな動きがあるんだろう」と察していた。今月に入った段階で璃佳がそれとなく匂わせていたからである。
 立川基地内の小会議室。彼等を集めた璃佳は到着し着席してからすぐに口を開いた。

「お前達も何となくは感じていただろうけど、いよいよ本格的な首都奪還作戦が始まるよ」

「おお、遂にか!」

「ドラゴンの奇襲もあった。年末までに東京奪還が目標なら今だろうとは思っていたが」

「やっと東京に戻ってこれるんだね。六条のお嬢様が伝えてくれた件もあるし、早く助けてあげないと」

 川崎、高富、長浜の順にそれぞれが違うことを言ったが表情は明るかった。ようやく首都を取り戻す作戦が明確になったからだ。佐渡も発言はしなかったものの、いつもに比べて表情は明るめだ。彼女が川崎出身というのもあるだろう。いくら家族が無事避難しているとはいえ、故郷を奪われた身。それがもうすぐ戻ってくるとなれば当然の心境だった。

「東京を奪還出来れば道筋も明るくなる。首都を奪い返せたという実績はなんとしても必要だからな」

「ええ。いつまでも東京が神聖帝国の手に落ちたままなんて看過できないもの。長浜少佐が言うように捕らえられた人達もいるし」

「東京都心まであと少しまで来たんだ。ここでやらなきゃいつやるってな」

「ドラゴンの奇襲があった辺り、神聖帝国も焦りがあるのかも。ドラゴンは今のところ観測出来る範囲では向こうにとって貴重な航空戦力。これを叩いた今なら、さらなる追撃で一気に首都奪還に動くのは適切だもんね」

 孝弘、水帆、大輝、知花の順に言う。出身が東海地方で直接の関わりはあまりないものの、旅行等で何度か訪れた機会のある孝弘達も似たような反応をしていた。
 璃佳は彼等の反応を見ながら少し間を置いて、話を続けた。

「この場にいる全員が知っての通り、東京都心はもう目の前にあるといっていい段階まできた。そこで統合司令本部は年末までの首都奪還を達成する為、戦力を集中投入する手段に打って出ることとした。ただし、南の神奈川方面と私達東京西部方面だけじゃない。兼ねてよりあえて温存しておいた戦力をここで投入する。その数は四〇〇〇〇。場所は千葉九十九里南部。白子・上総一宮方面。つまり、戦線をもう一つ作る上陸作戦も同時に行われるってわけ」

 璃佳の発言内容には佐渡を除く全員が驚いた。元々上陸作戦が出来るだけの戦力があるのは知っていたし、西の方の師団が上陸作戦の訓練をしているのも知っていた。海軍が未だ健在であるから手段として残っているのも知っていた。ただし、ここで投入するにしてもまさか四万もとは思わなかったのだ。

 対して、戦術分析官として各情報を集めていた佐渡はあまり驚かなかった。物資や兵力の移動に特異的な兆候が見られていたからだ。具体的には海軍の上陸に必要な資材や艦艇の動向。陸軍や魔法軍の移動などだ。
 だから佐渡は今の話を聞いて心中でこう思っていた。

(東京周辺にいる神聖帝国兵力が不明ではあるものの相当数いるのは間違いなく、私がいる東京西部や神奈川方面に進出している正面兵力に負担が大きくかかるのは想定の範囲内。とはいえ、出来るだけ損害は減らしたい。となると、ノルマンディーよろしくどこかに上陸してもう一つ戦線を作れば敵の兵力は分散する。白子・上総一宮の九十九里南部は比較的敵の兵力が少ない地域。こっちに比べて銚子にはずっと近いから神聖帝国がすぐに察知したら厳しい展開になりかねないけど、こっちの負担はずっと少なくなる。なるほど。上は愚の骨頂とされる戦力の逐次投入はせず勝負に出たわけか。)

 佐渡の読みはほぼ的中していた。それは璃佳が述べる作戦内容に現れていた。

「総員ホログラム画面で資料を開いて。本作戦の作戦名は『反撃の剣』。私達のいる東京西部方面攻略軍と神奈川方面の東部方面攻略軍、そして房総半島上陸軍。さらには海軍や空軍も参戦する総出の作戦だよ」
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