異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第3章 中央高地戦線編

第7話 甲府盆地奪還作戦第一特務連隊作戦方針

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 ・・7・・
「君達の作戦行動の説明前に、まずは全体の作戦確認からしよっか」

 数日前に話した内容と概ね同じではあるが、確認の為にとまずは友軍全体の動きが表示されたホロマップがテーブルの前に広がる。

「奪還作戦に参加する兵力と動きはこの前話した通り。ここにほぼ変更は無いよ。奪還地域が広がったとこくらいかな。あくまで理想で必達目標じゃないけどね」

「身延線より東で荒川の手前、笛吹川の手前までの区域ですね。ここも取るとなると、拠点化するのは山梨大学付属病院あたりでしょうか」

「そうだね、米原少佐。でも、ここはあくまで身延線より西区域が確実に取れればの話だけどね。さて、全体確認は既にほとんどしてあるから私達の連隊の担当区域の話をしようか」

 話題を変えた璃佳はマップの表示を変える。第一特務連隊と、協同で動く部隊のみの表示となり、地図も竜王から甲府にかけてをやや拡大したものになった。
 璃佳が説明した第一特務連隊の作戦の動きは以下のようなものだった。

【甲府盆地奪還作戦における第一特務連隊の任務内容】

1,第一特務連隊は作戦開始後、まずは対岸の塩崎を確保し、竜王方面へと向かう。続けて竜王方面を確保した後、本作戦最大の戦闘区域になると予想されている甲府市街地方面へ向かう。よって、第一特務連隊の作戦区域は竜王から甲府市街地にかけてのエリアとする。

2,第一特務連隊の任務は敵戦力の撃滅及び各拠点の確保以外は自由度の高い行動を可とする。高練度の陸上・魔法航空戦力を持って、敵戦力を各個撃破する。

3,魔法陸上戦闘に長ける第一大隊は一部を除き連隊本部中隊と共に最終作戦目的地を甲府駅周辺とし、これの確保を行う。航空魔法に長ける第二大隊は飛行魔法による戦闘飛行を行い、地上戦力の支援及び敵戦力の撃滅を行う。なお、第二大隊は二個中隊ずつ二手に分かれ、およそ中央線を境目とした南北に分けられたエリアを各位担当する。第三大隊は連隊作戦エリア南部を担当。第一大隊の一部は第三大隊と行動を共にする。

4,飛行魔法による上空支援は第二大隊が主に担うが、各大隊員は状況に応じて低高度飛行を用いての戦闘も良しとする。

5,塩崎、竜王方面については問題ないと思われるが甲府市街地方面での戦闘は戦況に対して柔軟に対応すること。CTに対する戦闘が中心になるが、甲府方面に弱いながらもマジックジャミングが確認された為、『理性のある敵』との戦闘も想定しておくこと。

6,万が一『理性のある敵』とエンゲージした場合は無理な戦闘は避けること。敵戦力が我の戦力で撃破可能であれば良いが、難しいのであれば支援要請を送るか支援要請が難しい場合は後退すること。なお、情報収集は必ず行うこと。

7,作戦地域の占領を完了後は、甲府盆地東部より敵戦力が襲来可能性が高いので迎撃体制を整えること。現有戦力にて撃破するよう。

8,命懸けで戦うが、安易に命を捨てる事は厳禁とする。必ず生き残れ。


「以上が私達の連隊の作戦中の動きになるね。詳細の資料はまた共有しておくから、目を通しておいて」

 孝弘達は連隊の作戦方針を聞いて、なぜ璃佳が部下達に慕われているかの一端を垣間見た。最後の八番にそれが現れていたからだ。

 作戦方針を見るからに一部無理を言っているような気がしないでもないが、上の方針に従いつつも特務連隊の隊員達ならこなせる任務内容にしている。
 何より命を捨てる事は厳禁とする。という文面だ。当たり前の事かもしれないが、それを連隊長命令として明記するなど中々出来るものではない。軍では追い込まれるとしばしば命を捨ててこいなんて命令が出るからである。アルストルムでも孝弘達の国ではないが、そのような命令があったのを知っている。それを踏まえて、孝弘達はなるほど。慕われるのはこういうことか。と思ったのである。

「了解しました。地図を見ながら話を聞いておりましたが、これは最初から最後まで激戦区ですね」

「私達は精鋭部隊だからね、米原少佐。魔法軍の特殊部隊は、今も北海道を支え続ける要になっている『北方特務戦闘団』、首都陥落の前に多くの市民を避難させる為に活躍し、壊滅判定を受けて大阪で再編成中の『中央即応作戦団』、編成は一個大隊と少ないけれど西の要たる『西方特殊作戦大隊』とウチの四つ。新潟の戦闘でも比較的消耗が少なかったとなればそれだけ期待されるわけ」

「国内初の大規模反攻作戦でもありますからね」

「そゆこと。で、さ。こっからは君達の作戦中の動きね」

 マップがさらに変わる。璃佳がいる連隊本部中隊の動きだ。三つ目の説明の通りの動きを示していた。

「君達の動きは基本的にはシンプル。私と共に竜王、甲府市街地方面で敵戦線の穴を開ける。その後に各大隊や他部隊が傷口を広げる。そんだけ」

「そ、それだけっすか。Sランクがオレ達含めて七条大佐もいるんで分からんでもないですけど、意外ですね」

「まあこれだけ単純だとそう思うよね、川島少佐。でもさ、Sランクが私含めて五人もいるんだよ?    火力なら国内最大どころか世界でも指折りの集中具合い。シンプルにぶん殴った方が楽だし、何より全体の損耗もかなり減らせるはず。上が君達を私んとこに置いてもいいと首を縦に振った理由の一つがこれ」

「北海道は間もなく撤退。東北もどうなるか分かんないすけど、既にSランクがいますもんね。となれば戦力集中で大規模反攻作戦になるココで過剰だと思われてもいいから突っ込むと。オレ達がいる理由は色々あるんでしょうけどそんな具合すか?」

「正解。たぶんだけど、上はこの作戦の先も見据えてる。ここが成功したら、次は山梨県域の全域奪還。そして」

「東京都へ橋頭堡構築。八王子、ですね」

「さっすが関少佐。たぶんそうなるよ。地形的な問題で大規模な軍を送れないから精鋭部隊を空中から投入して取るんじゃないかな。あくまで私の予測だけど。――だから、この作戦は超重要。南の富士方面もそうだけど、甲府盆地奪還作戦次第で今後が決まるわけ。だから、心して掛かるように。君達の働きに期待しているよ」

 璃佳は最初は朗らかに、だが最後には上官らしく真面目な口調で言う。孝弘達は改めて身が引き締まる思いになった。

「ま、気負うような事言ったけど要するに君達の能力で敵を吹っ飛ばせってわけ。だから前日は睡眠をよく取っておくようにね。ほぼ間違いなく丸一日以上は戦闘になるからさ。もし『理性のある方』がいたら、なおさらね」

『了解しました』

 甲府盆地奪還作戦まであと数日。
 この話の後も飛行魔法を含めて訓練を重ねた孝弘達は、あっという間に作戦当日を迎えることとなった。
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