神様に愛されている α×α(→Ω) 

尾高志咲/しさ

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幕間 2

大輝の独り言 ①

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 目の前には見事な日本庭園が広がっている。手入れの行き届いた植栽に見事な枝ぶりの松、奥には丹塗りの橋や池もあり、青空との調和が見事だ。実家うちの庭も悪くないけど、やっぱり本家は違うなと思ってしまう。

「……き。大輝っ!」
「へ?」

 はっとして隣を見れば、視線だけで殺されそうな父の顔。マジで怖いから近づかないでほしい。

「お前はよそ見ばかりしてないで、ちゃんと話を聞け!」
「……そんなことを言われても」

 父の怒声に体を縮めていると、周りから和やかな笑い声が上がる。革張りのソファには父を含め4人の大人と俺。従兄弟いとこたちも来るからと言われて久々に本家に来たのに、見事にめられた。従兄弟なんて一人も来てないじゃないか。俺は幼馴染の顔を思い浮かべたが、あいつも何も言ってなかった。おそらく従兄弟たちに話なんかいってないんだろう。

「まあまあ、そう怒らないでやれ。こんな大人ばかりの中ではつまらないだろう」
「こちらは久しぶりに大輝の顔が見られて嬉しいよ。最近は、息子たちともなかなか顔を会わせることがないからな」
「そうよ、ぜひ話を聞きたいわ。学園生活はどうかしら?」

 目の前でにこやかに微笑む伯父や伯母を見て、俺の頭の中に浮かんだのはあれだ。そう、蛇に睨まれた蛙。とぐろを巻いてこちらを狙ってる奴。しかも大蛇級クラスのそれが三匹もいる。
 最近は正月ぐらいしか会わない伯父たちが勢揃いしているなんて、恐ろしいったらない。彼らは皆アルファだ。ちなみに俺の父もアルファで久世本家の出だが、父は兄二人にも姉にも全く頭が上がらない。甘やかされてきた末子だからな。この場では全く頼りにならない。

「別に……何も変わったことはないけど」

 恐る恐る答えれば、六つの瞳が俺に集中する。父は膝の上で組んだ自分の指先だけを見つめていた。

「あら、じゃあ単刀直入に聞いた方が早いかしら」

 伯母がにっこり笑った。ルビーレッドのルージュと同色のネイルがいかにも捕食者って感じで怖い。

「そうだな、時間を取らせるのも何だからな」

 二番目の伯父が相槌を打ち、俺の正面にいた一番上の伯父と目が合った。幼馴染でもある従兄弟、伊織にそっくりな瞳。本家の惣領が口元を僅かに緩めた。

「大輝たちのクラスの氷室志乃……となる、彼の話を聞きたい」

 その場の雰囲気が、まるで真冬の朝のようなキンと張りつめたものに変わる。俺はごくりと唾を飲み込んだ。


 ◇◇◇


 本家から遅くに帰宅した俺は、疲れたままに月曜の朝を迎えた。教室の椅子に座り机に頭を乗せた途端、体から力が抜ける。昨夜は大蛇に丸飲みされる夢を見てうなされた。俺の楽しい休日を返してほしい。

「大輝! おはよう」

 弾むような声に顔を上げれば、満面の笑顔を浮かべた志乃がいた。

「……はよ、志乃」
「大丈夫? 疲れてる?」
「ああ、平気平気」

 志乃の顔を見ると疲れが吹き飛ぶ。これは本当だ。志乃は心配そうに俺を見ながら、小さな袋を差し出した。

「あのね、昨日水族館に行ったんだ。これ、大輝が好きだって聞いたから」
「サンキュ! 見ていい?」

 にっこり笑って頷く志乃は可愛い。にやけそうになるのを堪えて袋を開けると、白イルカが魚をばくっと咥えているストラップと、同じイルカの絵の激辛柿の種が出てきた。……この微妙な組み合わせは絶対、あいつだろう。だが、目の前には子どものように純粋なきらきらした瞳がある。喜んでくれるかなとドキドキしている気持ちがダイレクトに伝わる。下手なことは言えない。

「か、かわいいな。ありがと、大事にする」
「よかった! どれにしようか迷ったんだけど、伊織がこれがいいって」

 やっぱりと舌打ちしそうなところを抑えて、志乃に微笑みかける。

「そうかー。昨日は伊織とデートだったのかー」
「えっ! た、ただ一緒に行っただけだよ」

 ぱっと頬を染める志乃が可愛い。最近の志乃は何て言うんだろう。まるで内側から光輝くっていうのかな。そこにいるだけで人の目を惹く。本人は気が付いてないけど、伊織の威嚇が無かったら大変なことになってるよ。

 艶やかな黒髪に白磁の肌。くっきりと大きな二重の瞳に桜色の唇。初めて会った日にはあまりの可愛さに仰天し、氷室の名前もあって思わずオメガかと尋ねてしまった。見事にやり返されたが、頭を下げれば優しい志乃は許してくれた。だが、一族にまんまと告げ口した男のおかげで俺は父に説教をくらい、三か月間小遣いをもらえなかった。伊織め、一生忘れないからな。

「いいなー、志乃と水族館! 俺も行きたいなー」
「うん! 今度は一緒に行こう!! すごく楽しかったから、大輝も気に入ると思う」
「……やば。ここに天使がいる」

 思わず抱きしめたくなって両手を広げると、周囲が一瞬で氷点下になった。教室の空気がざわっと揺れて、アルファたちが騒然となる。全く、無暗むやみに威嚇するのはやめろっての。普段鷹揚おうような王子様のくせに、志乃のことになると途端に狭量になるから面倒くさい。俺は腕を下ろして志乃の後方を見た。能面のようになった男がこちらを睨みつけている。アルファの圧を感じた志乃が後ろを振り返った。
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